ウトウ

ウトウ（善知鳥）

ウトウ Cerorhinca monocerata は、チドリ目ウミスズメ科に属する海鳥の一種であり、分類上は単独でウトウ属 Cerorhinca を構成します。名前の由来はアイヌ語で「突起」を意味する言葉から来ており、鵜とは全く関係なく「ウトー」と発音します。

分布

ウトウは、北日本沿岸からカリフォルニア州にかけての北太平洋沿岸に広く分布しています。日本国内では、北海道の天売島、大黒島、渡島小島、岩手県の椿島、宮城県の足島などで繁殖が確認されています。特に天売島は世界最大の繁殖地として知られ、約100万羽ものウトウが繁殖すると言われています。足島は日本における繁殖地の南限であり、「陸前江ノ島のウミネコおよびウトウ繁殖地」として、天売島とともに国の天然記念物に指定されています。

形態

体長は約38cmで、ハトよりやや大きいです。体の上面は灰黒色の羽毛で覆われていますが、腹部は白いのが特徴です。くちばしは橙色でやや大きく、夏羽では上のくちばしの付け根に突起が現れ、目の後ろにも白い飾り羽が生えて独特の風貌となります。しかし、冬羽になるとこれらの突起や飾り羽は消失します。体の大きさはツノメドリやエトピリカと同程度で、体色はエトロフウミスズメに似ています。

生態

非繁殖期には、沿岸の海上で小さな群れを形成して生活します。一部の個体は南下し、本州沿岸などでも観察されることがあります。他のウミスズメ科の鳥類と同様に、潜水してイカナゴなどの小魚やオキアミ、イカなどを捕食します。潜水能力に優れており、翼を使って水中を自由に泳ぎ回ります。深度計を装着した研究によると、水深60mまで潜水し、2分間の潜水も可能であることが確認されています。

繁殖期には、断崖の上にコロニーを形成し、深さ1mから5mほどの穴を斜めに掘って巣を作ります。メスは通常1個の卵を産み、両親が交代で約45日間抱卵します。ヒナが孵化すると、巣立ちまでの約50日間、親鳥は餌を運び続けます。この時期には、毎朝夜明け前に親鳥が一斉に巣穴から飛び立ち、夕暮れ時にはイワシやイカナゴを大量にくちばしに咥えて、鳴き声を上げながら帰巣する様子が見られます。暗い時間帯に巣を出入りするのは、餌を横取りするカモメ類や捕食者から身を守るための適応と考えられています。

伝承

ウトウは、子が奪われると悲しげに鳴くという言い伝えがあります（善知鳥峠参照）。また、親鳥が「ウトウ」と鳴くと、雛鳥が「ヤスカタ」と答えるという伝説上の鳥「善知鳥安方（うとうやすかた）」の略称としても「善知鳥」という名前が用いられます。

保全状況評価

ウトウは、IUCN（国際自然保護連合）のレッドリストにおいて、軽度懸念（LEAST CONCERN）に分類されています。

関連項目

善知鳥峠（長野県塩尻市）
善知鳥神社（青森県青森市）
* 善知鳥

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