エジプトのジュリアス・シーザー

オペラ『エジプトのジュリアス・シーザー』について

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルが1723年から1724年にかけて作曲したオペラ『エジプトのジュリアス・シーザー』（Giulio Cesare in Egitto）HWV 17は、単に『ジュリアス・シーザー』（あるいは『ジューリオ・チェーザレ』）とも呼ばれ、ヘンデルの代表作の一つとして知られています。

あらすじ

物語の舞台は紀元前47年のエジプト。ローマの将軍ジュリアス・シーザーが政敵ポンペイウスを追ってエジプトにやってきたところから始まります。エジプトでは、女王クレオパトラと弟のプトレマイオス13世が共同統治を行っていましたが、その間には権力争いの火種がくすぶっていました。

第1幕

ナイル川の橋で、シーザーはポンペイウスの妻コルネーリアと息子セストから和平を申し出られます。しかし、エジプトの将軍アキッラがポンペイウスの首を貢物として差し出したことで、事態は急展開を迎えます。シーザーはアキッラの行為を嫌悪し、コルネーリアとセストは悲嘆に暮れます。セストは父の仇であるトロメーオへの復讐を誓います。
クレオパトラは、シーザーを魅了し、自らの権力を確立しようと企みます。一方、トロメーオはクレオパトラを牽制しますが、逆に嘲弄されます。アキッラはトロメーオにシーザー暗殺を提案し、成功の報酬としてコルネーリアとの結婚を求めます。
シーザーはポンペイウスの死を悼みますが、クレオパトラが侍女リディアと偽って現れ、シーザーの助力を得ようとします。クレオパトラの美貌に魅了されたシーザーは、彼女への協力を約束します。コルネーリアは自害しようとしますが、セストに止められます。クレオパトラは2人にトロメーオを倒す協力を求めます。
トロメーオはシーザーを招きますが、シーザーは暗にポンペイウス殺害を非難します。アキッラはコルネーリアとセストを連れてきて、トロメーオはコルネーリアの美しさに惹かれます。アキッラはコルネーリアに妻になるよう迫りますが、拒否されます。

第2幕

シーザーがリディア（クレオパトラ）との逢い引きにやって来ると、クレオパトラは徳の女神に扮して甘く美しい歌を歌い、シーザーの愛をいっそう募らせます。
アキッラはコルネーリアに愛を語りますが、拒絶されます。トロメーオもコルネーリアを口説こうとしますが、撥ね付けられます。コルネーリアは自害を試みますが、ニレーノの導きで後宮に入ってきたセストに止められます。ニレーノはセストにトロメーオを殺すように勧めます。
シーザーはクレオパトラと愛を語らいますが、エジプト人たちの襲撃を受けます。クレオパトラは自分の正体を明かし、襲撃者を鎮めようとしますが、暴動は収まりません。シーザーは戦いに赴き、残されたクレオパトラはシーザーを案じて祈ります。
トロメーオはコルネーリアに夜の白衣を与えようとしますが、セストに襲われます。アキッラが現れてセストの剣を奪い、シーザーが海に逃げ、クレオパトラもローマ軍の元へ逃げたと報告します。トロメーオはアキッラとの約束を破り、ローマ軍との戦いに向かいます。セストは自殺を試みますが、コルネーリアに止められ、ローマ軍に加わって戦うように諭されます。

第3幕

トロメーオの態度に怒ったアキッラはクレオパトラに寝返りますが、クレオパトラ軍は敗れ、クレオパトラは捕らえられます。シーザーは海を泳いで現れ、瀕死のアキッラから将軍の印を受け取ります。シーザーは再度戦いに赴きます。
クレオパトラは死を覚悟しますが、シーザーが救いに現れます。
セストはトロメーオを殺して復讐を果たします。シーザーはクレオパトラと共に人々の前に姿を現し、クレオパトラこそがエジプトの女王であると宣言します。

音楽的特徴

このオペラは、華やかで勇壮な音楽が特徴で、特にアリアの美しさは際立っています。ヘンデルの音楽は、登場人物の感情を豊かに表現し、ドラマティックな展開を盛り上げます。現在でも欧米での上演頻度はヘンデルのオペラの中で最も高く、世界中で愛されています。

配役

ジューリオ・チェーザレ（アルトカストラート）：ローマの将軍、ジュリアス・シーザー
クーリオ（バス）：シーザーの副官
クレオパトラ（ソプラノ）：エジプト女王
コルネーリア（コントラルト）：ポンペイウスの妻
セスト（ソプラノ）：ポンペイウスの息子
トロメーオ（アルトカストラート）：エジプト王、クレオパトラの弟
アキッラ（バリトン）：エジプトの将軍
ニレーノ（アルトカストラート）：クレオパトラの従者

楽器編成

リコーダー、オーボエ2、ホルン4、弦5部、ヴィオラ・ダ・ガンバ、テオルボ、ハープ、通奏低音（チェンバロ、ファゴット）

演奏時間

カット無しで約3時間半（各幕80分、70分、60分）

録音

フェルディナント・ライトナー指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団（1965年）
マルチェッロ・パンニ指揮プロ・アルテ・バッサーノ管弦楽団（1989年）
ルネ・ヤーコプス指揮コンチェルト・ケルン（1991年）
ウィリアム・クリスティ指揮エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団（2005年）

参考文献

名曲解説全集
カーマス社のスコア

外部リンク

エジプトのジュリアス・シーザーの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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