エデッサ伯国とは？意味をやさしく解説

エデッサ伯国とは

エデッサ伯国は、12世紀に十字軍によって建国された国家の一つです。現在のトルコ南東部、シャンルウルファ周辺に位置し、内陸に位置している点が他の十字軍国家とは異なっていました。また、宗主国であるエルサレム王国からは遠く離れており、隣接するアンティオキア公国とは必ずしも良好な関係ではありませんでした。首都エデッサはユーフラテス川の東側に位置し、国土も東西に広がっていました。ユーフラテス川西岸には重要な拠点都市テル・バシールがあり、ここがセルジューク朝に対する前哨基地となっていました。

建国

1098年、第1回十字軍の遠征中に、ブローニュのボードゥアン（後のエルサレム王ボードゥアン1世）がエデッサに到着したことが建国のきっかけとなります。当時のエデッサは、トルスというアルメニア系の領主が支配していましたが、彼はギリシャ正教徒であり、アルメニア使徒教会の信徒である住民からの支持を得られていませんでした。ボードゥアンは、トルスを共同統治者とする形でエデッサに入りましたが、市民の反乱によってトルスが殺害された後、単独の支配者となり、エデッサ伯を名乗りました。これがエデッサ伯国の始まりです。

ボードゥアンは後にエルサレム王となり、エデッサ伯位は彼の親族であるボードゥアン・ド・プール（後のエルサレム王ボードゥアン2世）、さらにその後のジョスラン1世へと引き継がれていきます。エデッサ伯国では、初期の伯爵たちは現地のアルメニア人女性と結婚することで、アルメニア人との関係を強固にしました。

近隣のイスラム勢力との抗争

エデッサ伯国は、周辺のイスラム勢力との間で絶えず争いを繰り広げました。1104年には、アンティオキア公国と協力してハッラーンを制圧しましたが、モースルやマルディンのイスラム勢力との戦いで大敗し、ボードゥアン2世とジョスラン1世が捕虜となる事態にも陥りました。その後、ボードゥアン2世は身代金を支払って解放されましたが、エデッサは一時的にアンティオキア公国の摂政タンクレードによって統治されることになります。また、1110年にはユーフラテス川東側の領土がモースルの領主に奪われるなど、苦戦を強いられました。

エデッサ伯国の陥落

1144年、エデッサ伯国はザンギー率いるイスラム勢力によって陥落します。当時のエデッサ伯ジョスラン2世は、他の地域に遠征しており、エデッサの防衛は手薄でした。ザンギー軍はエデッサの城壁を破壊し、市内へ侵入、多くの住民を虐殺しました。この事件はヨーロッパに大きな衝撃を与え、第2回十字軍の遠因となりました。ジョスラン2世は、テル・バシールを拠点にエデッサの奪還を試みましたが、1150年に捕らえられ、その後のエデッサ伯領は完全に失われることになります。

エデッサ伯国は、十字軍国家の中で最初に建国され、また最初に失われた国となりました。

人口と社会

エデッサ伯国は、領土は比較的広かったものの、人口は少なかった国でした。首都エデッサの人口は約1万人程度で、それ以外は農村や要塞が点在する程度でした。住民は、ギリシャ正教、シリア正教、アルメニア使徒教会のキリスト教徒とイスラム教徒が混在しており、東方キリスト教徒とイスラム教徒の割合はほぼ同程度でした。建国当初は西洋人の数は少なかったものの、徐々に増加していきました。また、カトリックの教会も複数存在していました。

エデッサ伯爵一覧

ボードゥアン1世（1098年 - 1100年）
ボードゥアン2世（1100年 - 1119年）
タンクレード（摂政）（1104年 - 1108年）
ジョスラン1世（1119年 - 1131年）
ジョスラン2世（1131年 - 1150年（1159年没））
ジョスラン3世（1159年 -　名義だけの伯爵）

参考文献

* Steven Runciman, A History of the Crusades Vol.II, Cambridge University Press, 1954.

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