エドワード・ウッド (初代ハリファックス伯爵)
初代ハリファックス伯爵エドワード・フレデリック・リンドリー・ウッド（1881年4月16日 - 1959年12月23日）は、イギリスの政治家、貴族であり、その生涯は激動の時代と深く結びついています。保守党政権において閣僚を歴任し、インド総督、外務大臣、駐アメリカ大使など、多岐にわたる要職を歴任しました。
エドワード・ウッドは、第2代ハリファックス子爵チャールズ・ウッドの四男として、デヴォンのパウデラム城で生まれました。イートン校を経てオックスフォード大学クライスト・チャーチを卒業後、オール・ソウルズ・カレッジのフェローとなりました。1910年から1925年まで庶民院議員を務め、第一次世界大戦では女王所有ヨークシャー竜騎兵連隊の中佐として従軍しました。戦後は植民地省政務次官、教育委員会委員長、農林水産大臣など、要職を歴任し、1925年にアーウィン男爵に叙爵されました。
1926年、エドワード・ウッドはインド総督に任命され、アーウィン卿としてインド統治に携わることになりました。当時のインドでは反英運動が高まっており、彼はその対応に苦慮しました。アーウィン卿は、弾圧と宥和を巧みに使い分ける統治を目指し、反英運動への対応を模索しました。
1927年にはサイモン委員会を設置しましたが、インド人が委員に含まれなかったため、インド各派の反発を招きました。抗議デモが各地で暴動に発展する中、アーウィン卿は1929年にインドを大英帝国自治領とする方針を発表し、円卓会議の開催を約束しました。しかし、サイモン委員会の報告書はインド・ナショナリズムを失望させ、インド国民会議は円卓会議への不参加を表明しました。ガンジーによる「塩の行進」など、抵抗運動が激化する中で、アーウィン卿は弾圧を決意し、多数の政治犯を投獄しましたが、一方でガンジーとの対話も試みました。その結果、ガンジーから不服従運動の中止などの譲歩を引き出し、円卓会議への参加を取り付けました。
アーウィン卿の統治は、保守党党首スタンリー・ボールドウィンからは評価されましたが、帝国主義者のウィンストン・チャーチルからは、ガンジーとの交渉を批判されました。1931年に任期を終えて帰国した後、円卓会議は決裂し、インドでは再び抵抗運動が激化しました。アーウィン卿は、その後のインド総督とは異なり、「最後の光彩を放った総督」と評されることもあります。
インドから帰国後、エドワード・ウッドは教育委員会委員長に再任し、その後、父の死去に伴い、第3代ハリファックス子爵を襲爵しました。陸軍大臣、王璽尚書、枢密院議長などの要職を経て、1937年にはドイツを訪問し、アドルフ・ヒトラーと会見しました。この会見で、ハリファックス卿はヒトラーの防共の役割を評価し、対独宥和政策を進める意向を示しました。その後、1938年に外務大臣に就任し、対独宥和政策を主導することになります。
外務大臣として、ハリファックス卿はドイツの勢力拡大を阻止しようと努めましたが、チェコスロバキア問題ではミュンヘン会談でズデーテン地方の割譲を容認しました。このミュンヘン協定は、「災いの中で最も軽い方」と評価されましたが、ドイツによるチェコスロバキア併合を招き、宥和政策は失敗に終わりました。
1939年9月1日、ドイツ軍のポーランド侵攻によって、第二次世界大戦が勃発すると、ハリファックス卿はチェンバレン首相にドイツへの最後通牒を出すように迫り、イギリスはドイツと交戦状態に突入しました。1940年5月にチェンバレン首相が辞任すると、後任として名前が挙がったものの、貴族院議員であることを理由に辞退しました。そして、徹底抗戦派のウィンストン・チャーチルが首相に就任しましたが、ハリファックス卿はチャーチル内閣にも外務大臣として留任したものの、チャーチルの方針に賛同できず、1940年12月に辞任しました。
外務大臣辞任後、ハリファックス卿は駐アメリカ大使に左遷されました。アメリカでの初期の評判は悪く、対独宥和政策を主導した反動主義者として非難されましたが、アメリカ国民との直接的な交流を通じて、次第に人気を得るようになりました。フランクリン・ルーズベルト大統領とも親密な関係を築き、大戦中の英米間の連携において重要な役割を果たしました。1945年のサンフランシスコ会議にはイギリス代表として出席し、1944年にはハリファックス伯爵に叙爵されました。1946年に駐米大使を退任し、その後は公職から退きました。
退任後はBBC顧問会議議長や大学学長を務め、1959年12月23日に短期間の闘病生活の末、死去しました。初代ハリファックス伯爵エドワード・フレデリック・リンドリー・ウッドは、激動の時代を生きた政治家として、その功績と政策は後世に語り継がれています。
エドワード・ウッドは、その生涯において、数々の爵位、勲章、学位を授与されています。これらは彼の功績を称え、その貢献を記念するものです。
爵位・准男爵位
1925年12月22日: 初代アーウィン男爵（連合王国貴族爵位）
1934年1月9日: 第3代ハリファックス子爵（1866年創設連合王国貴族爵位）
1934年1月9日: 第5代ウッド准男爵（1784年創設グレートブリテン准男爵位）
1944年7月11日: 初代ハリファックス伯爵（連合王国貴族爵位）
勲章
国防義勇軍章（TD）
1926年: インド帝国勲章ナイト・グランド・コマンダー（GCIE）
1926年: インドの星勲章ナイト・グランド・コマンダー（GCSI）
1931年: ガーター勲章士（KG）
1937年: 聖マイケル・聖ジョージ勲章ナイト・グランド・クロス（GCMG）
1946年: メリット勲章（OM）
学位
1923年: 法学博士号（LLD）（リーズ大学名誉学位）
1931年: 法学博士号（LLD）（ケンブリッジ大学名誉学位）
1931年: 法学博士号（LLD）（セント・アンドルーズ大学名誉学位）
1931年: 法学博士号（LLD）（シェフィールド大学名誉学位）
1931年: 法学博士号（LLD）（オックスフォード大学名誉学位）
1932年: 法学博士号（LLD）（カナダ・トロント大学名誉学位）
1934年: 法学博士号（LLD）（ダブリン大学名誉学位）
1934年: 法学博士号（LLD）（ロンドン大学名誉学位）
1934年: 法学博士号（LLD）（リヴァプール大学名誉学位）
法学博士号（LLD）（アメリカ・プリンストン大学名誉学位）
法学博士号（LLD）（アメリカ・ハーバード大学名誉学位）
法学博士号（LLD）（アメリカ・イェール大学名誉学位）
その他
1922年: 枢密顧問官（PC）
1909年に、第4代オンズロー伯爵の娘ドロシー・イヴェリン・アウグスタ・オンズローと結婚し、5人の子供をもうけました。
長女：アン・ドロシー・ウッド（1910-1995）
次女：メアリー・アグネス・ウッド（1910）
長男：チャールズ・イングラム・ウッド（1912-1980）
次男：フランシス・ヒュー・ピーター・コートネイ・ウッド（1916-1942）
三男：リチャード・フレデリック・ウッド（1920-2002）
生い立ちと初期のキャリア
エドワード・ウッドは、第2代ハリファックス子爵チャールズ・ウッドの四男として、デヴォンのパウデラム城で生まれました。イートン校を経てオックスフォード大学クライスト・チャーチを卒業後、オール・ソウルズ・カレッジのフェローとなりました。1910年から1925年まで庶民院議員を務め、第一次世界大戦では女王所有ヨークシャー竜騎兵連隊の中佐として従軍しました。戦後は植民地省政務次官、教育委員会委員長、農林水産大臣など、要職を歴任し、1925年にアーウィン男爵に叙爵されました。
インド総督としての統治
1926年、エドワード・ウッドはインド総督に任命され、アーウィン卿としてインド統治に携わることになりました。当時のインドでは反英運動が高まっており、彼はその対応に苦慮しました。アーウィン卿は、弾圧と宥和を巧みに使い分ける統治を目指し、反英運動への対応を模索しました。
1927年にはサイモン委員会を設置しましたが、インド人が委員に含まれなかったため、インド各派の反発を招きました。抗議デモが各地で暴動に発展する中、アーウィン卿は1929年にインドを大英帝国自治領とする方針を発表し、円卓会議の開催を約束しました。しかし、サイモン委員会の報告書はインド・ナショナリズムを失望させ、インド国民会議は円卓会議への不参加を表明しました。ガンジーによる「塩の行進」など、抵抗運動が激化する中で、アーウィン卿は弾圧を決意し、多数の政治犯を投獄しましたが、一方でガンジーとの対話も試みました。その結果、ガンジーから不服従運動の中止などの譲歩を引き出し、円卓会議への参加を取り付けました。
アーウィン卿の統治は、保守党党首スタンリー・ボールドウィンからは評価されましたが、帝国主義者のウィンストン・チャーチルからは、ガンジーとの交渉を批判されました。1931年に任期を終えて帰国した後、円卓会議は決裂し、インドでは再び抵抗運動が激化しました。アーウィン卿は、その後のインド総督とは異なり、「最後の光彩を放った総督」と評されることもあります。
外務大臣としての対独宥和政策
インドから帰国後、エドワード・ウッドは教育委員会委員長に再任し、その後、父の死去に伴い、第3代ハリファックス子爵を襲爵しました。陸軍大臣、王璽尚書、枢密院議長などの要職を経て、1937年にはドイツを訪問し、アドルフ・ヒトラーと会見しました。この会見で、ハリファックス卿はヒトラーの防共の役割を評価し、対独宥和政策を進める意向を示しました。その後、1938年に外務大臣に就任し、対独宥和政策を主導することになります。
外務大臣として、ハリファックス卿はドイツの勢力拡大を阻止しようと努めましたが、チェコスロバキア問題ではミュンヘン会談でズデーテン地方の割譲を容認しました。このミュンヘン協定は、「災いの中で最も軽い方」と評価されましたが、ドイツによるチェコスロバキア併合を招き、宥和政策は失敗に終わりました。
1939年9月1日、ドイツ軍のポーランド侵攻によって、第二次世界大戦が勃発すると、ハリファックス卿はチェンバレン首相にドイツへの最後通牒を出すように迫り、イギリスはドイツと交戦状態に突入しました。1940年5月にチェンバレン首相が辞任すると、後任として名前が挙がったものの、貴族院議員であることを理由に辞退しました。そして、徹底抗戦派のウィンストン・チャーチルが首相に就任しましたが、ハリファックス卿はチャーチル内閣にも外務大臣として留任したものの、チャーチルの方針に賛同できず、1940年12月に辞任しました。
駐アメリカ大使としての貢献
外務大臣辞任後、ハリファックス卿は駐アメリカ大使に左遷されました。アメリカでの初期の評判は悪く、対独宥和政策を主導した反動主義者として非難されましたが、アメリカ国民との直接的な交流を通じて、次第に人気を得るようになりました。フランクリン・ルーズベルト大統領とも親密な関係を築き、大戦中の英米間の連携において重要な役割を果たしました。1945年のサンフランシスコ会議にはイギリス代表として出席し、1944年にはハリファックス伯爵に叙爵されました。1946年に駐米大使を退任し、その後は公職から退きました。
晩年と死
退任後はBBC顧問会議議長や大学学長を務め、1959年12月23日に短期間の闘病生活の末、死去しました。初代ハリファックス伯爵エドワード・フレデリック・リンドリー・ウッドは、激動の時代を生きた政治家として、その功績と政策は後世に語り継がれています。
栄典
エドワード・ウッドは、その生涯において、数々の爵位、勲章、学位を授与されています。これらは彼の功績を称え、その貢献を記念するものです。
爵位・准男爵位
1925年12月22日: 初代アーウィン男爵（連合王国貴族爵位）
1934年1月9日: 第3代ハリファックス子爵（1866年創設連合王国貴族爵位）
1934年1月9日: 第5代ウッド准男爵（1784年創設グレートブリテン准男爵位）
1944年7月11日: 初代ハリファックス伯爵（連合王国貴族爵位）
勲章
国防義勇軍章（TD）
1926年: インド帝国勲章ナイト・グランド・コマンダー（GCIE）
1926年: インドの星勲章ナイト・グランド・コマンダー（GCSI）
1931年: ガーター勲章士（KG）
1937年: 聖マイケル・聖ジョージ勲章ナイト・グランド・クロス（GCMG）
1946年: メリット勲章（OM）
学位
1923年: 法学博士号（LLD）（リーズ大学名誉学位）
1931年: 法学博士号（LLD）（ケンブリッジ大学名誉学位）
1931年: 法学博士号（LLD）（セント・アンドルーズ大学名誉学位）
1931年: 法学博士号（LLD）（シェフィールド大学名誉学位）
1931年: 法学博士号（LLD）（オックスフォード大学名誉学位）
1932年: 法学博士号（LLD）（カナダ・トロント大学名誉学位）
1934年: 法学博士号（LLD）（ダブリン大学名誉学位）
1934年: 法学博士号（LLD）（ロンドン大学名誉学位）
1934年: 法学博士号（LLD）（リヴァプール大学名誉学位）
法学博士号（LLD）（アメリカ・プリンストン大学名誉学位）
法学博士号（LLD）（アメリカ・ハーバード大学名誉学位）
法学博士号（LLD）（アメリカ・イェール大学名誉学位）
その他
1922年: 枢密顧問官（PC）
家族
1909年に、第4代オンズロー伯爵の娘ドロシー・イヴェリン・アウグスタ・オンズローと結婚し、5人の子供をもうけました。
長女：アン・ドロシー・ウッド（1910-1995）
次女：メアリー・アグネス・ウッド（1910）
長男：チャールズ・イングラム・ウッド（1912-1980）
次男：フランシス・ヒュー・ピーター・コートネイ・ウッド（1916-1942）
三男：リチャード・フレデリック・ウッド（1920-2002）
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。