オーストリア福音主義教会アウクスブルク信仰告白派

オーストリア福音主義教会アウクスブルク信仰告白派

オーストリア福音主義教会アウクスブルク信仰告白派（Evangelische Kirche Augsburgischen Bekenntnisses in Österreich）は、オーストリアにおけるルター派の福音主義教会です。一般的には「Evangelische Kirche A.B. in Österreich」という略称で知られています。この教会名は、ルター派の重要な信仰告白文書であるアウクスブルク信仰告白に由来します。

歴史

16世紀から17世紀

1520年代、マルティン・ルターの文書がオーストリア地域に広まり、特にウィーンやブレスラウで盛んでした。1524年には、カスパー・タウバーがオーストリアにおける最初の福音主義殉教者として処刑されました。1555年のアウクスブルクの和議で宗教の自由が認められたものの、福音主義信仰の実践は依然として制限されました。貴族や領邦都市からの請願にもかかわらず、反宗教改革政策が強化され、1577年にはルドルフ2世がウィーンでの福音主義礼拝や学校、家庭礼拝を禁止しました。1600年以降は組織的な焚書が行われ、福音主義の教説は非合法化され、信仰は地下に潜伏しました（隠れ新教徒）。

18世紀から19世紀

1781年10月、ヨーゼフ2世の寛容令により、アウクスブルク信仰告白に基づく福音主義教会共同体の形成が可能になりました。当時は500人または100家族が福音主義信徒の下限と見なされました。しかし、教会塔を持つことは禁じられました。1781年から1785年の間にオーストリアで48の福音主義教会が設立され、特にラムサウ・アム・ダッハシュタイン、バート・ゴイーザーン、ヴェルス、ウィーンなどが重要でした。1785年末には、ツィスライタニエン地域で107,000人以上の信徒が登録されました。19世紀に入ると、教会、学校、病院などが多数設立されました。1861年には、新教徒寛容令により福音主義教会は法的同格性を得、教会組織は4段階構造となりました。19世紀後半には、ドイツ民族主義運動が盛んになり、「ローマからの分離運動」を通じて約3万人がカトリック教会から福音主義教会へ改宗しました。

20世紀

1918年にオーストリア＝ハンガリー帝国が崩壊し、教会はオーストリア共和国と共に歩むことになりました。1938年のアンシュルスにより、ナチス・ドイツに統合され、1939年から1945年までドイツ福音主義教会 (DEK)に統合されました。戦後の1949年に新教憲を制定し、約8万人のドイツ系難民を受け入れました。1961年には法的地位に関して完全な自由権を得ました。女性牧師の任職を認め、同性愛者夫婦への祝福も可能です。

信仰告白

ルター派の一致信条書にある信仰告白文書を教会の信仰告白と見なしています。これには、古代教会の3つの基本信条、ルターの大小教理問答、シュマルカルデン条項、アウクスブルク信仰告白とその弁証、和協信条が含まれます。また、「バルメン宣言」を教憲前文で言及し、信仰告白文書として扱っています。

信徒分布

ブルゲンラント州、ケルンテン州、シュタイアーマルク州に信徒が多く、特にラムサウ・アム・ダッハシュタインでは住民の過半数を占めます。ザルツカンマーグートにも多くの信徒が暮らしており、オーストリア全体では国民の約3.5%が福音主義教会信徒です。

組織

牧師管轄教会共同体

約200の教会共同体があり、6年の任期で役員が選出されます。牧師も役員会のメンバーです。教会共同体長老の選出、会計監査役の選出、予算案と決算の承認を担います。長老は教会共同体の運営全般に関与し、予算案の作成や選挙の実施を行います。牧師は教会共同体内の霊的指導を担い、長老から選出された管理人と共に外部に向けて教会共同体を代表します。

教区

オーストリア福音主義教会アウクスブルク信仰告白派は7つの教区で運営されており、各教区はオーストリアの州区分に準じています。すべての教区には霊的指導者としての教区長が存在します。

全体教会

教会会議の議決によって運営され、教会運営指導は教会総会、高等参事会、監督によって担われます。教会総会は神学的指針を決定し、予算案と決算報告を承認します。高等参事会は教会運営に関する最上級機関であり、監督は福音主義教会の精神的指導を行います。

ルター派と改革派教会

ルター派のオーストリア福音主義教会アウクスブルク信仰告白派は、改革派教会のオーストリア福音主義教会第二スイス信仰告白派と協同してオーストリア福音主義教会アウクスブルク信仰告白派＝第二スイス信仰告白派を形成しています。この組織は公法上の社団であり、共通の教憲を制定し、宗教科授業と教会税を共に運営管理しています。しかし、合同教会ではなく、ルター派教会としての独立と信仰を維持しています。

福音主義センター

ウィーン市18区にある福音主義センターは、教会の管理運営部門であり、事務局が置かれています。このセンターには教会立教育大学も含まれており、宗教科教師の養成や福音主義教会説教セミナーが開催されています。

オーストリア福音主義教会礼拝式文

礼拝は「神による奉仕」を意味し、ルター派福音主義教会の礼拝はカトリック教会のミサとは異なる強調点を持ちますが、ラテン語ミサの影響が色濃く残っています。

オーストリア福音主義教会アウクスブルク信仰告白派聖餐礼拝式文

礼拝は鐘の音と共に始まり、オルガン前奏、司式者の言葉、讃美歌、詩編朗読、グロリア唱と続きます。聖書朗読、説教、使徒信条を経て、聖餐式が行われます。聖餐式では、罪の告白、大感謝祈祷、サンクトゥス、主の祈り、平安の挨拶、神の子羊、聖餐制定の言葉が唱えられ、パンと葡萄酒が配られます。最後に、感謝祈祷、派遣の言葉、祝祷があり、オルガン後奏で締めくくられます。

参考文献

* オーストリア福音主義教会アウクスブルク信仰告白派公式サイト（ドイツ語）

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