オーリニャック文化

オーリニャック文化

オーリニャック文化は、旧石器時代後期、特にヨーロッパにおける更新世の最後の氷期である第4氷期に栄えた文化です。フランスのピレネー地方を中心とする地域で発展しました。

編年学的な位置づけ

20世紀初頭には、ムスティエ文化とソリュートレ文化の間に位置づけられていましたが、その後の研究で、シャテルペロン文化、オーリニャック文化、グラヴェット文化という3つの文化に区分する学説が提唱されました。また、オーリニャック文化のみを5期に区分し、シャテルペロン文化とグラヴェット文化を連続した文化（ペリゴール文化）とする説も存在します。ただし、オーリニャック文化の起源を西アジアに求める説もあり、その編年学的な問題は未だ解決されていません。

語源

オーリニャック文化という名称は、1860年にエドゥアール・ラルテが発掘・調査したフランス中部のオーリニャック洞窟に由来し、ガブリエル・ド・モルティエによって命名されました。

文化の特徴

オーリニャック文化を代表する石器には、片刃の石刃、縦型の石匕、石のみ、刻刀などがあります。これらの石器は、ブレードと呼ばれる細長く薄い石片を加工して作られており、ブレード技法という手法が用いられています。ブレード技法は、あらかじめ形を整えた石核から連続的に石片を剥ぎ取るもので、石核は円柱状または円錐状の形をしています。石器の他に、骨角製の針、錐、銛なども使用されました。

当初、同型の石器がヨーロッパのみならず、バルカン、西アジア、アフガニスタン、中国、ケニアなど広範囲で出土したため、同じ文化であると考えられていましたが、現在の研究では、ベルギーからスペイン、イタリアにかけての地域がオーリニャック文化圏と考えられています。

担い手

30000年前のチェコや35000年前のベルギーの人骨からは、ハプログループC1a2 (Y染色体)が検出されており、このタイプがヨーロッパで最古層としてオーリニャック文化を担ったと考えられています。また、ヨーロッパ第二波のハプログループI (Y染色体)もこの文化を担ったとされています。

その他の特徴

オーリニャック文化期から、洞窟絵画や彫刻が製作されるようになりました。フランスのドルドーニュ地方にあるラスコー洞窟には、牛、馬、鹿などの壁画が残されています。また、オーストリアのウィレンドルフからは、石灰岩製の女性彫刻像であるヴィレンドルフのヴィーナスが発見されています。

参考文献

埴原和郎『人類の進化史』講談社学術文庫、2004年。ISBN 978-4-06-159682-5。
旧石器文化談話会編『旧石器考古学辞典』学生社、2007年。ISBN 978-4-311-75039-7。

関連項目

ローセル洞窟（オーストリア）
ラスコー洞窟（フランス）
イスタロスキョ洞窟（ハンガリー）
シャテルペロン文化
グラヴェット文化
カプサ文化（北アフリカ）
クロマニョン人
エミレ文化

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