カシャガン油田

カシャガン油田：世界最大級の難事業

カシャガン油田は、カザフスタン西部のカスピ海北東部に位置する巨大油田です。2000年に発見され、テンギス油田と並び、過去30年間で発見された油田の中で世界最大規模とされています。その埋蔵量は約130億バレルと推定されています。

厳しい環境と高い開発コスト

カシャガン油田の開発は、その厳しい環境条件から世界でも有数の難事業となっています。冬季にはカスピ海が凍結し、気温は年間を通して-35℃から40℃まで変動します。周辺の浅瀬は非常に浅く、原油には高濃度の硫化水素が含まれています。これらの要因に加え、過去の運用失敗や競争激化も重なり、開発計画は困難を極めています。

開発コストも膨大で、CNNマネーは1160億USドルが必要と試算しており、世界で最もコストのかかるエネルギープロジェクトの一つとなっています。他のメディアでは500億USドル以内とする見方もあります。

歴史

カスピ海への関心は、1992年にカザフスタン政府が探査プログラムを発表したことから始まりました。政府は30社以上の企業に探査への参加を呼びかけ、1993年にはカザフスタン政府、エニ、BGグループ、BP/スタトイル、モービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、トタルが出資するコンソーシアム「カザフスタンカスピシェルフ」が設立されました。

1997年に2D地震探査が完了した後、コンソーシアムは「Offshore Kazakhstan International Operating Company (OKIOC)」に名称変更。1998年にはフィリップス石油会社と国際石油開発が加わりました。そして2000年、ついにカシャガン油田が発見されたのです。

その後、共同操業から1社による操業への変更を経て、エニが2001年に新たなオペレーターとなりました。2003年にはBGグループが保有分を中国企業に売却しようとしましたが、パートナー企業の先取特権により失敗。最終的に、2004年にカザフスタン政府がBGグループの投資分の半分を購入し、残りの半分は他の企業で共有することで合意しました。カザフスタン政府の保有分は、国営企業カズムナイガスに委譲されました。

2013年9月には、中国政府が油田への投資権を取得し、習近平国家主席が約50億USドルでカザフスタンと契約を結びました。

地質

カシャガン油田の原油滞留領域は5500km2を超え、5つの独立した領域から構成されています。これらの領域は、カシャガン、カラムカスA、カシャガン南西部、アクトテ、カイランと呼ばれています。

地層は石炭紀中期からデボン紀後期の炭酸塩層で、貯油領域は深度約4500m、油柱は深度1000m以下の地点に分布しています。油田のある領域は水深3～9ｍの浅瀬です。貯油領域はペルム紀中期の頁岩とペルム紀後期の岩塩層に囲まれており、気孔率、透過率の低い石灰岩で構成されています。原油は硫化水素含有率が高く、API比重の高い軽油です。油田は極めて高圧化にあり、採掘の大きな課題となっています。

開発

油田は北部カスピ海生産共有協定のもと、国際コンソーシアムによって開発が進められています。コンソーシアムには、エニ、ロイヤル・ダッチ・シェル、トタル、エクソンモービル、カズムナイガス、コノコフィリップス、国際石油開発帝石が参加しています。

開発計画の主要部は「Island D」という構造で、12の油井が該当します。ここでは、原油からガスを分離し、分離したガスを陸上の工場へ輸送して脱硫・再注入するという工程が行われます。石油は全長92kmのパイプラインを通って陸上へ輸送されます。

初期の石油採掘量は37万バレル/日、最終的には150万バレル/日に達すると予想されています。

関連項目

カザフスタンの地下資源
カスピ海横断石油パイプライン

外部リンク

カザフスタン共和国カシャガン油田の原油生産開始について - 国際石油開発帝石
インペックス北カスピ海石油（株）のカザフスタン共和国カシャガン油田における生産開始について - JOGMEC
Silk Road Intelligencer - Kashagan
Kashagan: A look at Caspian Sea oil and natural gas production

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