カスタモヌ県

カスタモヌ県：黒海沿岸の歴史と自然が織りなす魅力

カスタモヌ県は、トルコ北部の黒海地方に位置し、豊かな自然と歴史的な背景を持つ地域です。西から時計回りにスィノプ、チョルム、チャンクル、カラビュック、バルトゥンの各県と隣接しており、県都はカスタモヌ市です。面積は約13,000平方km、人口は約32万人（2000年）で、人口密度は1km²あたり約24.6人です。県都には約6万4千人が暮らしています。

歴史

カスタモヌの起源は正確には不明ですが、中世に遡ると考えられています。また、人類の居住は10万年前からとする研究もあります。この地名は、コムネノス王朝時代に建設されたビザンチンの砦「カストラコムネーノス」に由来するとされています。

古代にはマケドニア王国の衰退後、ポントス王国に併合され、その後ローマ帝国に編入されました。この際、パフラゴニアとビテュニアの一部となり、ポンペイオポリスが地域中心となりました。その遺跡は県の東部に見られます。

11世紀頃からはセルジューク朝を始め、ダニシュメンド朝、ビザンチン帝国、チョバンオール家、ジャンダル侯国と支配者が次々と変わりました。1392年にオスマン帝国に征服されましたが、1402年のアンカラの戦いでバヤズィト1世が敗北し、一時的にジャンダル侯国の支配に戻りました。最終的に1461年にオスマン帝国によって再征服され安定を得ました。

オスマン帝国時代には、イスタンブールまで境界が延び、皇位継承者が統治を学ぶ場所としても利用されました。第一次世界大戦後、トルコ独立戦争では、兵力と弾薬の重要な供給拠点となり、イネボル港が重要な役割を果たしました。また、トルコ共和国の父、アタテュルクは1925年にカスタモヌで「服飾習慣改正」を宣言し、トルコ帽の廃止を決定しました。

2021年8月には、集中豪雨による洪水が発生し、多くの住民が避難を余儀なくされ、15人が犠牲となりました。

観光

カスタモヌ県は、黒海気候の影響で豊かな森林に覆われています。ウルガズ国立公園は山岳地帯にあり、ハイキングや急流下りが楽しめます。近隣にはスキー施設も整備されています。その他、ウルガリニ洞窟、アリンサ地下洞窟、国際乗馬センターなど、観光に適したスポットが数多く存在します。

カスタモヌ市には、12世紀のビザンチン様式の城、13世紀のアタベイモスク、イブニネジャールモスクなどの歴史的建造物が残っています。また、マフムトベイモスクは木製の彫刻で有名です。ギデロス湾沿いには、宿泊施設や魚料理店が建ち並び、休暇を楽しむ観光客で賑わいます。

東部には、ローマ都市ポンペイオポリスの遺跡が残っており、カスタモヌ市内には、伝統的な建築様式の大邸宅が数多く見られます。これらの大邸宅は、2000年の歴史建築保護宣言により修復が進められています。

手織りの織物など、伝統的な手芸品も豊富で、特に田舎でよく見られます。また、県内では多くのお祭りが開催されています。

経済

カスタモヌ県では、2000年時点で労働人口の77.5%が農業に従事しており、農業が主要産業です。次いでサービス業が盛んです。耕地は固定農園がほとんどで、トルコ全体の生産量の0.01%を占めます。穀物生産が最も多く、豊かな森林を背景に林業も重要な産業です。地下資源も豊富で、銅、水銀、鉄、クロム、マンガン、石綿、ボーキサイト、グラファイト、リン酸塩、カオリナイト、粘土、石灰、水晶、大理石、菱苦土鉱、耐火粘土、石炭、ニッケルなどが採掘されます。また、温泉や天然泉も存在します。

県のGDPはトルコ全体の0.4%を占め、内訳は農業が32.8%、通信・運輸業が20%、サービス業が16.8%、産業が9.5%となっています。

交通手段は主に高速道路ですが、未舗装区間も存在します。鉄道は、チャンクル、カスタモヌ、イネボルを結ぶ路線が建設中です。海岸線は135kmと長く、黒海に面していますが、大きな港はイネボルのみです。

通信インフラとしては、固定電話が112,000回線、携帯電話が20万契約、インターネット利用者が1万5千人です。

サッカークラブのカスタモヌSKは、かつてTFF1.リガ（トルコ2部リーグ）に所属していました。

下位自治体

カスタモヌ県には以下の下位自治体があります。

カスタモヌ（Kastamonu）
アバナ（Abana）
アール（Ağlı）
アラチュ（Araç）
アズダヴァイ（Azdavay）
ボズクルト（Bozkurt）
ジデ（Cide）
チャタルゼイティン（Çatalzeytin）
ダダイ（Daday）
デヴレカニ（Devrekani）
ドアンユルト（Doğanyurt）
ハネニュ（Hanönü）
イフサンガズィ（İhsangazi）
イネボル（İnebolu）
キュレ（Küre）
プナルバシュ（Pınarbaşı）
セイディレル（Seydiler）
シェンパザール（Şenpazar）
タシュキョプリュ（Taşköprü）
トスィヤ（Tosya）

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