カタラガマ (スリランカ)

カタラガマ：多様な信仰が息づく聖地

スリランカのウバ州モナラーガラ県に位置するカタラガマは、仏教徒、ヒンドゥー教徒、そして先住民ヴェッダの人々にとって重要な巡礼地です。南インドからも巡礼者が訪れ、その多様な信仰が共存する独特の文化を形成しています。地名の由来となったヒンドゥー教の神スカンダを祀るカタラガマ神殿を中心に、この地は古くから多くの歴史と信仰を育んできました。

地名の由来

カタラガマという地名は、様々な起源を持つと考えられています。パーリ語の年代記『マハーワンサ』には「カージャラガーマ」として登場し、スリー・マハー菩提樹がスリランカにもたらされた際の祭典に、この地の貴族が参加したことが記されています。また、ヒンドゥー教の神スカンダ（カーティケヤ）に由来するという説もあり、「カーティケヤ・グラマ」がなまってカタラガマになったとも言われています。しかし、地名の由来については専門家の間でも統一された見解は存在しません。

シンハラ語の「カタラガマ」は「砂漠の中の村」を意味し、実際にこの地は乾燥地帯に位置しています。一方、タミル語の「カティルカーマム」は「光」と「愛」を意味し、スカンダの伝説に由来するとされます。先住民であるヴェッダ人はこの地を「川の猟師」を意味する「オー・ヴェッダ」または「オヤ・ヴェッダ」と呼んでいます。さらに、イスラム教の聖人ヒズルを祀る寺院もあり、スリランカ・ムーアも訪れます。

歴史

カタラガマ周辺には、少なくとも12万5千年前から人類が生活していた痕跡が残されています。また、石器時代の人類の活動を示す証拠も発見されており、この地が古くから人々の生活の場であったことが伺えます。

歴史時代に入ると、この地域周辺では小規模なため池による灌漑農業が始まりました。カタラガマが年代記に初めて登場するのは5世紀の『マハーワンサ』です。そこには、カタラガマの高僧が紀元前288年にアショーカ王から菩提樹を受け取りに来たという記述があります。ルフナ王国時代には都として栄え、セイロン島北部の王国が南インドからの侵攻を受けた際の避難先ともなりました。しかし、13世紀頃にはこの地域は放棄されたと考えられています。

考古学的な発見によると、キリ・ヴィハーラ寺院は紀元前1世紀に改築されたとされています。この地域には他にも数多くの遺跡が残されており、歴史の重層性を物語っています。カタラガマ神殿では、16世紀までにシンハラ仏教の守り神とされるスカンダが祀られるようになりました。15世紀には、インドとスリランカのヒンドゥー教徒にとって重要な巡礼地となり、その人気は16世紀にタイで書かれた年代記にも記されています。

カタラガマ神殿：聖なる場所

カタラガマは複数の宗教にとって聖地であり、多くのスリランカ人がカーストや部族を超えてカタラガマ神への崇敬を抱いています。カタラガマ神は個人的な問題の解決、ビジネスでの成功、念願成就など、様々なご利益をもたらすと信じられています。

ヒンドゥー教

スリランカや南インドのタミル系ヒンドゥー教徒は、この地を「カティルカマム」と呼び、ヒンドゥー教の神スカンダと結び付けています。スカンダは南インドのシヴァ派では「スブラフマニヤ」とも呼ばれ、「クマーラ」や「カールッティケーヤ」などの別名も持ちます。スカンダの別名に含まれる「カティール」は、ぼんやりとした光を意味します。スカンダは6つの顔と12本の腕を持つ姿、または1つの顔と4本の腕を持つ姿で表されます。

仏教

スリランカ仏教では、カタラガマ神を「仏教の守り神」として祀り、この地はスリランカ仏教の16の巡礼地の1つとなっています。『マハーワンサ』によると、インドから菩提樹がアヌラーダプラに伝えられた際、カタラガマの貴族が祝いに訪れたとされています。カタラガマ神殿の裏にある菩提樹は、そのスリー・マハー菩提樹から植えられた8本のうちの1本であり、紀元前3世紀に植えられたものです。

神殿の近くには、マハセーナ王によって建立されたとされる仏塔があります。伝説によると、釈迦が紀元前580年に3度目にスリランカを訪れた際、マハセーナ王と面会し、この仏塔の場所で説教を行ったとされています。これらの伝説により、この地はスリランカの仏教徒にとっても特別な聖地とみなされています。

カタラガマは、多様な信仰と歴史が交錯する、神秘的な場所です。その魅力は、訪れる人々の心を深く捉え続けています。

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