カダク

カダク：モンゴル帝国の将軍、ウルウト部出身

カダク（生年不詳 - ?）は、13世紀後半にモンゴル帝国および大元ウルスに仕えたウルウト部出身の将軍です。『元史』などの漢文史料では哈答(hādā)もしくは合丹(hédān)と記されています。

生涯

カダクは、チンギス・カンに仕えたジュルチェデイの息子ケフテイの子として生まれました。兄にはテムジン・バートルがいました。当初はテムジンがウルウト部の当主を継承し、オゴデイに仕えて郡王の地位を授けられています。

モンケの時代に南宋遠征軍の将軍に抜擢され、他の五投下当主らとともにクビライの指揮下に入りました。1260年、モンケの死後、クビライとアリク・ブケの間で帝位継承戦争が勃発すると、カダクは他の五投下当主とともにクビライを支持しました。

シムルトゥ・ノールの戦いでは、開戦前にクトクとともにクビライに対し、先祖が武功を立ててきたように、自身も力を尽くして戦いたいと述べました。戦闘では右翼軍として敵将カダアンを討ち取る功績を挙げ、オイラト軍を敗走させるなど、クビライ軍の勝利に大きく貢献しました。1262年の李璮の乱では、カビチ、ココチュらとともに鎮圧に派遣され、武功を挙げました。

1273年に襄陽城が陥落すると、南宋への全面侵攻が開始され、カダクも南宋遠征軍に所属しました。淮西等路枢密院の官職を与えられ、劉整、タチュ、董文炳らを率いて正陽に駐屯しました。1274年には淮西行中書省の左丞相に任じられました。カダクが前線で戦ったという記録は残っていません。

1277年には中書省の事務が北京で行われましたが、これは息子のトゴンがジルワダイの乱鎮圧に向かったことと関連していると考えられています。これ以降のカダクの事績は記録されていません。

子孫

カダクにはトゴン、イリンジバル、ヒントムという3人の息子がいました。

トゴン：主にシリギの乱鎮圧で活躍し、ジルワダイを討伐するなどの功績を挙げました。ナヤンの乱鎮圧戦にも従軍し、弟ヒントムとともに奮戦しました。タシュ・テムルとドレという息子がおり、タシュ・テムルにはカラ・ブカという息子がいました。
ヒントム：ナヤンの乱鎮圧戦で病をおして力戦したと伝えられています。

ウルウト氏ジュルチェデイ家

千人隊長ジュルチェデイ（J̌ürčedei ＞朮赤台/zhúchìtái）
郡王ケフテイ（Kehetei ＞怯台/qiètái,کهتی نویان/Kehtei Nūyān）
郡王テムジン（Temüǰin ＞端真/duānzhēn）
郡王カダク（Qadaq ＞哈答/hādā）
郡王トゴン（Toγon ＞脱歓/tuōhuān）
郡王タシュ・テムル（Taš temür ＞塔失帖木児/tǎshītièmùér）
郡王カラ・ブカ（Qara buqa ＞匣剌不花/xiálàbùhuā）
イリンジバル（Irinǰibar ＞亦隣只班/yìlínzhǐbān）
郡王ヒントム（Hingtom ＞慶童/qìngtóng）
郡王イェリ・ブカ（Yeli buqa ＞也里不花/yĕlǐbùhuā）
ブジル・ノヤン（Buǰir ＞不只児/bùzhīér,بوجر نویان/Būjir Nūyān）

参考文献

杉山正明『モンゴル帝国と大元ウルス』京都大学学術出版会、2004年
* 堤一昭「元朝江南行台の成立」『東洋史研究』第54巻4号、1996年

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