カバルド人

カバルド人：北コーカサスの歴史と文化を彩る人々

カバルド人は、北コーカサス地方に古くから居住する民族集団であり、12の主要なチェルケス氏族の一つに数えられます。アディゲ共和国国旗に描かれた12の星は、これらの主要氏族を表しており、カバルド人もその一つです。彼らは独自の言語であるカバルド語を話し、独自の文化と伝統を育んできました。

歴史的に、カバルド人はカバルディアと呼ばれる北コーカサス地方の地域に居住していました。現在では、主にロシア連邦のカバルダ・バルカル共和国に多く居住しており、同共和国の人口の大部分を占めています。ソ連時代の行政区画変更により、チェルケス人は4つの民族集団に分断されましたが、カバルダ・バルカル共和国のカバルド人、アディゲ共和国のアディゲ人、カラチャイ・チェルケス共和国のチェルケス人、クラスノダール地方のシャプスグ人は、いずれもアディゲ人という共通のルーツを持ちます。チェルケス人の主要な構成要素として、カバルド人とベスレネイ人が挙げられます。

世界に広がるカバルド人コミュニティ

カバルド人は、世界中のチェルケス人コミュニティの中で最も人口が多いとされており、ロシア、トルコ、エジプトをはじめ、多くの国や地域に大きなコミュニティを形成しています。2002年のデータによると、ロシア国内ではカバルダ・バルカル共和国に約52万人、カラチャイ・チェルケス共和国に約5万人のカバルド人が居住していました。トルコには100万人以上のカバルド人が居住しており、特にカイセリ県のウズニヤイラ高原とその周辺地域に多く集中しています。その他、バルケスィル県、デュズジェ県、エスキシェヒル県、チョルム県、サムスン県、トカット県にもカバルド人の村落が存在します。ヨルダンやアメリカ合衆国にもカバルド人のコミュニティが存在しますが、イスラエルやヨルダンではシャプスグ人やアブザク人が最も多いコミュニティとなっています。

宗教：多様な信仰の共存

カバルド人の歴史においては、ハブゼ（土着信仰）、キリスト教、イスラム教など、多様な宗教が共存してきました。19世紀初頭までに、多くのカバルド人がイスラム教に改宗し、現在ではイスラム教スンニ派ハナフィー学派が主流となっています。しかし、伝統的なハブゼ信仰を保持する人々も存在します。

興味深いことに、カバルド人はヨーロッパ最古のキリスト教コミュニティの一つを形成していたともされており、2世紀後半から3世紀初頭にキリスト教に改宗したとされています。現在でも、ローマカトリック教会に属するカバルド人や、北オセチア＝アラニア共和国のモズドクスキー地区、スタヴロポリ地方のクルスキー地区近郊に住む正教会信徒のカバルド人が存在します。

歴史に名を刻んだカバルド人

カバルド人は歴史の舞台においても重要な役割を果たしてきました。以下に、著名なカバルド人の例をいくつか紹介します。

アレクセイ・チェルカスキー: エリザヴェータ女帝治世下のロシア帝国外務大臣
アレクサンドル・ベコビッチ＝チェルカスキー: カバルディアの君主
アスランベク・フシュトフ: 2008年北京オリンピックレスリング金メダリスト
ビダール・カドゥン: オスマン帝国のアブデュルハミト2世の妻
ドアムナ・エカテリーナ・セルチェザ: モルダビア公国の正妃
イナル大王: カバルディアの君主
イヴァン・B・チェルカスキー: ミハイル・ロマノフのいとこ
レイラ・アゴンドコフ: シャネルのモデル
リュドミラ・チェリーナ: フランスのバレエダンサー、女優
マヒデヴラン: オスマン帝国のスレイマン1世の妃
マリア・テムリュコヴナ: イヴァン4世の妻
ルスダン (チェルケス人): カルトリ王国の王妃
セルベチェーザ・カドゥン: オスマン帝国のアブデュルメジト1世の妻
テムユク: カバルディアの君主
ウラジミール・チェルカスキー: モスクワ市長
ユーリ・テミルカーノフ: サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団の音楽監督

これらの人物は、政治、スポーツ、芸術など、様々な分野で活躍し、カバルド人の歴史と文化に大きく貢献してきました。

カバルド人の歴史、文化、そして世界に広がるコミュニティを知ることは、北コーカサス地方の豊かな多様性と複雑な歴史を理解する上で不可欠です。彼らの歴史と文化は、未来の世代に受け継がれ、発展していくでしょう。

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