カリアティード

カリアティード（女像柱）とは

カリアティード（caryatid）は、建築物において柱の役割を果たす女性の立像です。複数形はカリアティデス（Karyatides）。女像柱、女人像柱とも呼ばれます。語源はギリシア語の「カリュアイの乙女たち」を意味する「カリュアティデス」に由来します。カリュアイは古代ギリシアの町で、女神アルテミスを祀る神殿がありました。

カリアティードの歴史

カリアティードの起源は古代に遡ります。紀元前6世紀のデルポイの宝物庫には初期の例が見られますが、女人像を柱として用いる形式はさらに古く、儀式用の水鉢やフェニキアからもたらされた象牙製の手鏡の持ち手などにもそのルーツを見ることができます。

最も有名なカリアティードは、アテナイのアクロポリスにあるエレクテイオンのポーチを飾る6体の像です。これらの像のうち1体は19世紀初頭にイギリスに持ち去られ、現在は大英博物館に所蔵されています。残りの5体は複製と交換され、本物はアクロポリス博物館に展示されています。

古代ローマ時代にもエレクテイオンのカリアティードを模倣したものが制作され、アウグストゥスのフォルムやパンテオン、ヴィッラ・アドリアーナなどに設置されました。また、アッピア街道沿いにはタウンリー・カリアティードと呼ばれる像も存在します。

ルネサンス以降には、カリアティードは建築物のファサード装飾や暖炉の装飾に取り入れられるようになりました。特に内装での使用は古代には見られなかった新たな試みです。ヴェネツィアのドゥカーレ宮殿には、1450年頃に作られた大きな暖炉の脇柱にヘーラクレースとイオレーの像が用いられています。16世紀には、ヤーコポ・サンソヴィーノがヴィッラ・ガルツォーニで大理石製の暖炉の棚を支える女人像を制作しました。また、パッラーディオの弟子であるヴィンチェンツォ・スカモッツィは、著書の中で暖炉のカリアティードについて記述し、自らもカリアティード付きの暖炉を制作しています。

16世紀には、セバスティアーノ・セルリオの建築に関する論文にもカリアティードが登場し、フォンテーヌブロー派やアントウェルペンの彫刻師によって、マニエリスム様式の装飾として定着しました。17世紀初頭のイギリスでは、ジャコビアン様式の室内装飾として使用され、スコットランドのマッカルズ城では大ホールの炉棚飾りとして用いられています。ドイツバロック様式でも採用され、新古典主義時代にはよりギリシア風に作り直されました。例えば、ロンドンのセント・パンクラス・ニュー・チャーチのポーチには、4体のテラコッタ製カリアティードが設置されています。

カリアティードの起源と意味

カリアティードの語源は明確ではありませんが、古代ローマの建築家ウィトルウィウスは著書の中で、エレクテイオンの女人像柱は、ペルシア戦争でアテナイを裏切ったラコニアの町カリュアイの女たちが奴隷にされたことを表していると記しています。しかし、この説はペルシア戦争以前から女人像柱が存在することから疑わしいとされています。

古代のカリュアイは、スパルタに隣接する村の一つで、スパルタ王メネラーオスの妻ヘレネーの故郷とされています。カリュアイの娘たちは美しく、背が高く、強い子を産むとされていました。

頭に籠を載せたカリアティードはカネフォロスと呼ばれ、女神アテーナーやアルテミスの祭りで神聖なものを運んだ少女を表しています。エレクテイオンは古代アテナイ王を祀った神殿であることから、カリアティードはカリュアイでアルテミスに仕えた女性神官を意味する可能性も指摘されています。

カリアティードに対応する男像柱として、テラモーンやアトラスがあります。アトラスは天を肩で支える神として知られています。アグリジェントのゼウス神殿には記念碑的な男像柱が見られます。

カリアティードは、単なる装飾的な要素としてだけでなく、その歴史や文化的な背景、そして象徴的な意味合いから、建築物や芸術作品に深みと魅力を与える存在として、今日まで愛され続けています。

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