カワヒラ

カワヒラ（川平）

カワヒラ（学名: Chanodichthys erythropterus）は、コイ目コイ科クセノキプリス亜科に属する大型の淡水魚です。英語ではSkygazerとも呼ばれ、カワヒラ属 Chanodichthys に分類されます。

名称の由来

その体形と大きさが、海水魚のヒラを連想させることから「カワヒラ」と名付けられました。また、台湾に分布する個体には、かつて「セッパリ」という名が与えられていたこともあります。

分布

カワヒラは、東アジアの広範囲に分布しています。具体的には、アムール川から南は台湾、紅河、そしてモンゴルのブイル湖からも記録されています。朝鮮半島の黄海に注ぐ河川にも生息しています。

形態

カワヒラの最大体長は1mに達し、体色は銀白色で、大型個体は黒みが強くなります。背部は青みがかった灰色で、体は側偏しています。背面の輪郭は直線的で、背鰭は小さいです。腹面の輪郭は緩い弧を描き、腹部外縁は腹鰭基部から肛門にかけて竜骨状を呈します。尻びれは長く、わずかに湾入しており、尾鰭は深く二叉します。胸鰭は尖ってやや長いです。成魚の各鰭は淡黄色を帯びています。

頭部上面は平らで、口はほぼ直角に上を向いています。口ひげはなく、目は比較的小さく、頭部の上方に付いています。繁殖期には追星が現れます。

生態

カワヒラは大河川や湖沼などの広い水域を好み、遊泳力が強く、水中の小動物を活発に捕食します。幼魚は魚類のほか、甲殻類や昆虫類などの無脊椎動物も積極的に捕食しますが、成長するにつれて魚食性が強まります。

オスは2年、メスは3年で成熟し、6月から8月にかけて河川や湖の浅瀬で産卵します。生まれた稚魚は岸辺や小川などの小さな水域に入り、そこで成長します。

カワヒラは、条虫の一種 Ligula intestinalis の中間宿主となることが報告されています。2016年には、韓国の洛東江でこの条虫の寄生による大量死が発生し、多くの死骸が河岸に打ち上げられました。

外来種問題

韓国の洛東江には元々分布していませんでしたが、2004年に確認されて以来、個体数が急増し、既存の生態系に悪影響を及ぼしています。胃の内容物からは、コイ、フナ、コウライギギなど、流域で食用とされている淡水魚が多く見つかっており、漁業への被害も懸念されています。遺伝子解析の結果、韓国国内の自然分布域である漢江や錦江の個体との間に有意な差が見られなかったことから、国内移植が原因であると考えられています。

人間との関係

中国ではカワヒラは河川や湖沼に多く生息し、養殖も盛んに行われ、重要な食用魚となっています。ケツギョ、コイと並んで、その味の良さから中国三名魚に数えられています。また、春から夏にかけて獲れたものは薬膳の材料としても用いられ、食欲増進、利尿、脾臓の活性化、浮腫の軽減などの効果があるとされています。

台湾の日月潭では、かつて蒋介石が視察の際にその味を絶賛したことから「総統魚」の愛称で親しまれ、湖中に張られた生け簀で育ったものが名物となっています。

日本では、カワヒラは元々分布しておらず、国外から移植された例もないため、馴染みの薄い魚です。しかし、観賞魚として輸入されたことがあります。

近似種との混同

カワヒラとツマリカワヒラの2種間では、種類と種小名の対応関係に深刻な混乱が生じており、解決に至っていません。

戦前、森為三や内田恵太郎は、カワヒラに Culter erythropterus を、ツマリカワヒラに Culter brevicauda（C. alburnus のシノニム）を充てていました。韓国では現在でもこの対応関係が用いられています。

一方、2021年現在、中国と台湾ではカワヒラに Culter alburnus を、ツマリカワヒラに Chanodichthys erythropterus を充てています。

参考文献

『朝鮮魚類誌』(1939年、朝鮮総督府水産試験場)
『原色満洲有用淡水魚類圖説』(1939年、南満州鉄道)
* 『台灣淡水及河口魚蝦圖鑑』(2020年、晨星出版社)

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