カーラ型巡洋艦

カーラ型ミサイル巡洋艦

カーラ型ミサイル巡洋艦は、ソ連海軍およびロシア海軍で運用された大型対潜艦（BPK）の艦級に対して、北大西洋条約機構（NATO）が与えたコードネームです。ソ連海軍での正式名称は1134B型大型対潜艦、計画名は「ベルクート-B」（イヌワシの意）でした。

本型は、先行する1134A型（クレスタII型）をベースに、ガスタービン推進機関への変更と装備の近代化を図ったものです。他の大型対潜艦を上回る航洋性、対潜戦能力、稼働率を誇り、対潜攻撃部隊の中核として長きにわたり作戦任務に従事しました。その優れた設計は、より大型の1164型ミサイル巡洋艦（スラヴァ級）の基礎ともなっています。

来歴

1960年代初頭、NATO諸国軍が潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）を搭載した原子力潜水艦（SSBN）を配備したことを受け、ソ連海軍は対潜戦を重視する方針に転換しました。これに伴い、水上戦闘艦の整備方針も大きく見直され、まず対潜戦を主眼とした水上戦闘艦として、1等艦に相当する1134型（クレスタI型）、2等艦に相当する61型（カシン型）が建造されました。

しかし、これらの艦の能力に限界を感じたソ連政府は、1964年8月に、より強力な対潜艦の建造を指示しました。これに応じ、61型の設計を担当した第53中央設計局は、まず1134型の装備を更新した1134A型（クレスタII型）を開発しました。さらに、1964年10月には、ガスタービン主機を採用した次世代の対潜・防空艦の基本設計を提示し、1965年10月に1134B型として建造計画が承認されました。

1966年4月には、1134A型をベースにガスタービン主機を採用した対潜・防空艦の原案が承認され、第53中央設計局は技術案の作成に着手しました。主任設計官には、1134型も担当したアニケエフが任命されました。同年9月30日、第53中央設計局は造船省に技術案を提出しましたが、新型ソナーの搭載や静粛性の強化などの要望が追加されたため、最終的に技術案が承認されたのは1967年11月でした。

設計

カーラ型は、1134A型をベースにガスタービンエンジンを搭載した設計となっています。これにより船体が大型化し、全長が14m、全幅が1.7m拡大し、満載排水量は16%増加しました。

主機関にはCOGAG方式を採用しており、この点は第53中央設計局が設計した61型と同様です。ただし、61型では単機種4基による構成のため、低速時の燃費に課題がありました。このため、本型では高出力の高速機と低出力の巡航機の2機種による構成とされています。1番艦と2番艦にはM5型システムが搭載され、高速機としてDO54（単機出力18,000 hp）、巡航機として逆転機能付きのDO61（単機出力6,000 hp）が使用されました。3番艦以降は、出力が増強されたM5E型システムが搭載され、高速機としてDE59（単機出力22,500 hp）、巡航機としてDO63（単機出力9,000 hp）が用いられました。高速機の寿命は約6,000時間、巡航機の寿命は約20,000時間とされており、当時のソ連海軍の運用パターンでは約6年に相当しました。

装備

本型の主要任務は、以下の通り規定されていました。

本国から離れた海域で作戦任務に就く攻撃部隊の一員として、仮想敵のSSBNを捜索・発見・撃沈すること。
作戦小艦隊の戦術部隊の一員として行動するとともに、必要に応じて艦隊の構成艦として対潜・防空の任に就くこと。
友軍の潜水艦の展開及び帰港を掩護、回航中の艦船を護衛すること。

C4ISR

C4Iシステムについては、1番艦と2番艦ではコレン1134B戦術情報処理装置とアレヤ1134B戦術データリンク装置が搭載され、3番艦と4番艦以降はそれぞれMVU-202とMVU-203に更新されました。

レーダー装備は、おおむね1134A型を踏襲しており、対空捜索用にはMR-600「ヴォスホード」（NATO名「トップ・セイル」）、これを補完する対空・対水上レーダーとしてMR-310A「アンガラーA」（NATO名「ヘッド・ネットC」）が搭載されました。これらはいずれもCバンドを使用し、前者は高高度目標に対して600km、後者は高高度目標に対して200km、水上目標に対して40kmの探知距離を有していました。レーダー情報処理装置としては、1番艦と2番艦にはバイカルS4型、5番艦にはMRO-410A型、6番艦と7番艦にはMRO-400型が搭載されました。

ソナーについては、バウ・ソナーは1134A型と同じMG-332「チタン-2T」型ですが、新たに可変深度式のMG-325「ヴェガ」型が装備されました。

武器システム

大型対潜艦としての主兵装である対潜ミサイルシステムには、1134A型と同じURPK-3「メテル」が搭載され、同様に艦橋構造物の両脇に85R型ミサイルを収容したKT-100型4連装発射筒が設置されました。1984年以降の近代化では、発射機がKT-100U1型に、ミサイルが長射程・対艦兼用の85RUに更新され、URPK-5「ラストルブB」システムとなりました。

防空システムとしては、1134A型と同じM-11「シュトルム」が用いられました。発射機は弾庫容量が40発に拡張され、自動化も進んだB-192型が採用されました。ミサイル射撃指揮装置（GMFCS）としては4R60「グロム」が2基搭載され、「メテル」の管制にも用いられました。また、「シュトルム」を補完するために、4K33「オサーM」個艦防空ミサイルシステムが新装備されました。

砲熕兵器としては、1134型と1134A型で不評だったAK-725 57mm連装砲に代わり、58型（キンダ型）で採用されていたAK-726 76mm連装砲が搭載されました。さらに、CIWSとしてAK-630 30mm6銃身機関砲が搭載され、後に発射速度を向上させたAK-630Mに更新されました。

同型艦

1134型と1134A型は、レニングラードの第190造船所で建造されましたが、本型の建造は、61型の建造を終えつつあったムィコラーイウの第445造船所が担当することになりました。

「アゾフ」は、1977年に後部の「シュトルム」を撤去し、新型のS-300F「フォールト」を搭載する1134BF型に改修され、1985年まで同システムの試験任務に従事しました。また「ケルチ」は、1987年に対空レーダーを新型の3次元レーダーであるMR-700「ポドヴェレゾヴィク」（NATO名「フラット・スクリーン」）に改装しました。

登場作品

エースコンバットアサルト・ホライゾン
架空艦『アドミラル・ブラギンスキィ』が、クーデターを起こしたNRF（新ロシア連邦）所属艦艇として登場します。黒海に展開し、多国籍軍と交戦します。

参考文献

Polutov, Andrey V.「ソ連/ロシア巡洋艦建造史」『世界の艦船』第734号、海人社、2010年12月、NAID 40017391299。