カール・ブラント

カール・フランツ・フリードリヒ・ブラントの生涯

カール・フランツ・フリードリヒ・ブラント（Karl Franz Friedrich Brandt, 1904年1月8日 - 1948年6月2日）は、ドイツの医師であり、ナチス親衛隊の将官です。彼はアドルフ・ヒトラーの主治医として知られ、また、ナチス政権下で実施された障害者や精神疾患患者に対する安楽死計画「T4作戦」の責任者としても深く関与しました。その結果、多数の命が失われたとされています。

前半生

ブラントは、ドイツ帝国時代のミュールハウゼン（現在のフランス・ミュルーズ）で生まれました。医学を志し、ドレスデン大学、イェーナ大学、フライブルク大学、ミュンヘン大学、ベルリン大学で学びました。特にベルリン大学では、著名な外科医であるフェルディナント・ザウアーブルッフやゲオルク・マグヌスの指導を受けました。1928年には州医師試験に合格し、1929年にはフライブルク大学から医学博士号を取得しました。1930年には医師免許を取得し、ボーフムの救急病院で医師としてのキャリアをスタートさせました。

ナチス党入党とヒトラーとの出会い

1932年、ブラントは国家社会主義ドイツ労働者党（ナチス党）に入党し、同時に国家社会主義ドイツ医師同盟の会員となりました。同年、彼は食事の席でアドルフ・ヒトラーと出会いました。1933年には全国防空団のボーフム地区指導者となり、その後、突撃隊にも入隊しました。1933年8月、ヒトラーの副官ヴィルヘルム・ブリュックナーが自動車事故で重傷を負った際、ブラントは手術と看病を担当しました。このことがヒトラーの耳に入り、彼はブラントを自身の侍医にすることを決意しました。同年11月には、ボーフムからベルリンの大学病院外科病棟へと異動しました。

総統付医師とT4作戦

1934年3月、ブラントは親衛隊に移籍すると同時に総統付医師に任命され、ヒトラーの側近となりました。また同月、水泳選手のアンニ・レーボルンと結婚し、結婚式にはヒトラーとヘルマン・ゲーリングが立会人として参加しました。1939年10月頃、ブラントはフィリップ・ボウラーと共に、障害者や精神疾患患者を安楽死させる「T4作戦」の監督責任者に任命されました。1940年5月には教授の称号を与えられ、フリードリヒ・ヴィルヘルム大学の員外教授となりました。また、同年には武装親衛隊にも所属しました。

衛生及び保健全権委任者

1942年、ブラントは国家研究顧問会の一員となり、同年7月にはヒトラーから衛生及び保健全権委任者に任命されました。これにより、彼は医療制度の軍事部門と民事部門の間で医師、病院、薬剤の調整を行う権限を与えられました。1943年には公衆衛生及び保健全権委員となり、医学研究においての特別権限を与えられ、強制収容所での人体実験を発案しました。また、同年からは戦傷者・空襲負傷者の治療を優先するため、「治療しても仕方がない精神病患者」を安楽死させる計画、通称「ブラント作戦」を実行しました。1944年には公衆衛生及び保健国家委員となり、全ドイツの医師の頂点に立ちました。

失脚と逮捕

1944年10月、ブラントはヒトラーの主治医テオドール・モレルが処方する薬に反対する報告書を提出したことが原因で、ヒトラーからの信任を失い、総統付医師を解任されました。1945年4月には、ベルリンに迫る赤軍の脅威の中で、ヒトラーの怒りを買い逮捕されました。その後、ベーテル財団やハインリヒ・ヒムラーの助命嘆願により処刑は免れ、カール・デーニッツらと共にフレンスブルクへ避難しました。

戦後の逮捕と処刑

戦後、フレンスブルク政府の解体とともにブラントはイギリス軍に逮捕され、アメリカ軍によるニュルンベルク継続裁判の医者裁判にかけられました。裁判では、冷凍実験などの人体実験についての尋問を受けましたが、ブラントは「ヒトラーの命令通りに実行した」と主張しました。最終的に、侵略戦争の計画、実行、戦争犯罪、非人道的犯罪の罪により有罪となり、1947年8月20日に死刑を宣告されました。ブラントは医学研究のために献体を申し出ましたが、却下されました。1948年6月2日、ランツベルク刑務所で、他の6人と共に絞首刑に処されました。

死刑執行前の言葉とその後

ブラントは、死刑執行前に「人体実験の最先端にある国家」という言葉を遺しましたが、その後、頭巾を被せられ、言葉は遮断され、記録班には聞き取れなかったとされています。妻のアンニ夫人は夫の死後は沈黙し、1986年に亡くなるまで公の場に姿を現しませんでした。息子カール・アドルフは外科医となりました。

キャリア

ブラントは、ナチス党と親衛隊で以下の階級を歴任しました。

1933年：突撃隊上級曹長
1934年7月29日：親衛隊志願兵
1934年8月1日：親衛隊二等兵
1934年8月1日：親衛隊曹長
1934年8月14日：親衛隊少尉
1934年8月14日：親衛隊中尉
1935年7月：伍長
1936年9月13日：親衛隊大尉
1936年11月：陸軍軍医候補生
1937年11月9日：親衛隊少佐
1939年8月5日：親衛隊中佐
1940年5月15日：武装親衛隊中佐
1940年5月27日：武装親衛隊軍医中佐
1942年8月1日：武装親衛隊大佐
1942年9月3日：予備役軍医大佐
1943年1月30日：親衛隊少将及び武装親衛隊少将
1943年3月1日：予備役陸軍軍医少将
1944年4月20日：親衛隊中将及び武装親衛隊中将

受章

ブラントは、以下のような勲章やバッジを授与されました。

黄金ナチ党員バッジ（1943年1月30日）
勤続章
ナチ党勤続章
銅章
SAスポーツバッジ
銅章（1937年12月1日）
親衛隊全国指導者名誉長剣（1938年3月1日）
親衛隊名誉リング（1936年5月11日）
親衛隊私服ピン（64,820番）
親衛隊冬至祭燭台
* アルテケンプファー章

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