キアサージ (空母)

アメリカ海軍航空母艦「キアサージ」（CV/CVA/CVS-33）

「キアサージ」は、アメリカ海軍が運用したエセックス級航空母艦の一隻であり、艦名は南北戦争で活躍したスループ船「キアサージ」に由来します。「マイティ・ケイ」という愛称で広く知られていましたが、その一方で、数々の衝突事故を引き起こしたことから「クラッシュバージ（Krashbarge）」という不名誉な渾名も付けられていました。特に1962年には、客船「オリアナ」との衝突事故を起こしています。

艦歴

1940年代

1945年5月5日、「キアサージ」はニューヨーク海軍造船所にて進水し、1946年3月2日に初代艦長フランシス・J・マッケンナ大佐の指揮下で就役しました。マッケンナ大佐は、以前護衛空母「セント・ロー」の艦長を務め、その功績により海軍十字章を受章しています。

就役後、「キアサージ」は東海岸とカリブ海で訓練演習を重ね、1947年6月には海軍兵学校生の訓練航海でイギリスへ向かいました。帰国後は、10ヶ月間の演習を経て、1948年6月1日に第6艦隊に合流し、地中海での任務に従事。中東地域での緊張が高まる中、警戒態勢を維持しました。1950年1月27日まで大西洋岸とカリブ海での作戦行動を継続しました。

1950年代

1950年、「キアサージ」はジェット機運用に対応するための近代化改装（SCB-27A）を受けることになり、2月23日にピュージェット・サウンド海軍工廠に入りました。当初、この改装は未完成だった「オリスカニー」や予備役にあった「エセックス」と「ワスプ」に対して行われる予定でしたが、現役艦を改装する方がコスト効率が良いという判断から、「キアサージ」が選ばれました。しかし、改装工事開始直後の6月25日に朝鮮戦争が勃発したため、急遽現役空母の派遣が必要となり、以降の改装は予備役艦が対象となりました。「キアサージ」は、第二次世界大戦後に完成したエセックス級の中で唯一SCB-27改装を受けた艦となりました。

1952年2月15日、「キアサージ」はルイス・B・フレンチ艦長の指揮下で再就役し、整調航海後、8月11日にサンディエゴを出港してハワイで集中的な飛行訓練を実施しました。その後、朝鮮戦争の戦闘任務のため極東へ派遣され、9月8日に横須賀に到着。9月14日には第77任務部隊に加わり、北朝鮮に対して約6,000回に及ぶ出撃を行い、大きな戦果を上げました。1953年3月17日にサンディエゴに帰還。この作戦行動中に艦種が変更され、分類番号がCVA-33となりました。

1953年7月1日、「キアサージ」は再び極東へ向かい、不安定な休戦状態にある朝鮮半島周辺で第7艦隊と共に作戦行動に従事しました。また、共産主義勢力による台湾攻撃に備え、台湾海峡の監視を続けました。1954年1月18日にサンディエゴに帰還し、カリフォルニア沖での訓練作戦を再開。10月7日に再び極東へ向かい、大陳島撤退作戦で中国国民党を支援し、1955年2月6日から13日にかけて島から多数の民間人および軍人を救助しました。5月12日にサンディエゴへ帰還後、3年間は極東への配備とカリフォルニア近辺での訓練任務に従事しました。

1956年から1957年にかけて、「キアサージ」はSCB-125改修を受け、ハリケーンバウとアングルドデッキが装備され、外観が大きく変化しました。1958年夏には対潜水艦作戦支援空母へと艦種が変更され、分類番号はCVS-33となりました。新たな任務への習熟訓練後、1959年9月5日に第7艦隊の一員として極東での作戦に参加。日本寄港中に伊勢湾台風に見舞われ、被災地の救援活動で重要な役割を果たしました。艦載機による医療団や救援物資の輸送、乗員による衣服の寄付や募金活動などが行われました。

1960年代

東南アジア条約機構（SEATO）の演習や第7艦隊の作戦行動に参加した後、1960年3月3日に横須賀を出港し帰国の途に就きました。3日後、ウェーク島から1,200マイル離れた太平洋上で、ソ連海軍の曳船から漂流してきた乗員4名を艦載機が救助しました。彼らは千島列島から49日間漂流しており、ソ連は「キアサージ」に感謝の意を示しました。

1961年3月3日にサンディエゴを出港し、共産主義勢力によるラオス政府転覆の動きに対応するため東南アジア海域に展開。第7艦隊の牽制により緊張は緩和されました。極東での6ヶ月間の活動後、「キアサージ」はピュージェット・サウンドで近代化改装を受け、1962年8月1日にロングビーチを出港し、マーキュリー計画に参加。マーキュリー・アトラス8号の回収母艦として、宇宙飛行士ウォルター・シラーのカプセルを回収しました。

1963年4月29日に真珠湾に到着し、再びマーキュリー計画に参加。マーキュリー・アトラス9号の回収母艦として、宇宙飛行士ゴードン・クーパーのカプセルを回収しました。6月4日には18回目の極東航海に出発し、東南アジアの監視を含む第7艦隊の作戦行動に参加。12月3日にロングビーチに戻り、カリフォルニア近辺で訓練を行いました。

1964年6月19日、9回目の極東航海に出発。トンキン湾事件発生後、南シナ海に派遣され、米海軍機が北ベトナムの給油・補給基地を攻撃する際、第7艦隊において対潜哨戒任務に従事しました。12月16日にロングビーチへ帰港。

1965年前半にオーバーホールを受けた後、「キアサージ」は西海岸で活動し、1966年6月9日に極東へ出発。ベトナム近海での作戦活動に従事し、その後香港、日本を経由して帰国しました。

退役

1960年代末から1970年代初頭にかけての海軍力縮小の影響を受け、「キアサージ」は1970年2月13日に退役し、予備役として保管された後、1973年5月に除籍、1974年2月にスクラップとして売却されました。

受章

「キアサージ」は、朝鮮戦争での戦功により2つ、ベトナム戦争での戦功により5つの従軍星章を受章しました。その艦名は、ワスプ級強襲揚陸艦の3番艦に引き継がれています。

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