キンミズヒキ

キンミズヒキ（金水引）とは

キンミズヒキ（学名: Agrimonia pilosa var. japonica）は、バラ科キンミズヒキ属に分類される多年草です。日本各地の道端や山野に自生し、夏から秋にかけて黄色い花を咲かせます。

名称の由来

和名の「キンミズヒキ」は、黄色い花穂が金色に見えることから、同じく紐状の花穂を持つタデ科のミズヒキに見立てたことに由来します。地方によっては、ヌストグサやサシグサとも呼ばれます。中国植物名では、黄龍尾（おうりゅうび）や龍牙草（りゅうげそう）と呼ばれ、特に「龍牙草」は葉の縁のギザギザが竜の牙を連想させることに由来すると言われています。

分布と生育環境

日本国内では、北海道から九州まで広く分布しており、低山や山地の道端、草地などで見られます。国外では、南千島、サハリン、朝鮮半島、中国大陸、インドシナ半島などにも分布しています。種子は発芽しやすく、丈夫で栽培も容易です。また、ヨーロッパ東部からシベリアにかけて分布するシベリアキンミズヒキが基本種とされ、日本には小型のヒメキンミズヒキも自生しています。

特徴

キンミズヒキは、秋になると衣服に果実が付着することでよく知られています。地下に肥厚した根茎を持ち、全体に粗い毛が生えています。茎は直立して30cmから150cmまで成長し、よく枝分かれします。葉は奇数羽状複葉で、3枚から9枚の大小異なる小葉から構成されます。小葉は菱状長楕円形から菱状倒卵形をしており、先端が尖り、縁には粗い鋸歯があります。葉の裏面には白色または黄色の腺点が多く見られます。花期は夏から秋で、茎先に総状花序を形成し、黄色い小さな5弁花を穂状に密に咲かせます。花は直径6mmから11mmほどで、花弁より短い雄しべが12本あります。果実は痩果で俵形をしており、萼筒に包まれたまま成熟します。萼筒の上部には鉤状の刺があり、これが衣服や動物に付着して種子の散布に役立ちます。

利用

キンミズヒキは、古くから薬草として利用されてきました。開花期の茎葉には精油とタンニンが含まれており、特にタンニンには収斂作用があります。水で煮出したエキスは胆嚢の働きを助ける利胆作用があると言われています。根にもタンニン、フェノール性配糖体、アグリモノリドなどの成分が含まれますが、根の利用は一般的ではありません。

生薬としては、開花初期に採取した茎葉を乾燥させたものが用いられ、「竜牙草」または「仙鶴草」と呼ばれます。これは、出血、下痢止め、喉の痛み、口内炎、腫れ、あせも、湿疹、倦怠疲労などに効果があるとされ、煎じて服用したり、うがいや湿布に使われます。また、春先には山菜として食用にもされ、若芽や若葉をお浸しや和え物にして楽しむことができます。

近縁種

ヒメキンミズヒキ: 小葉が3〜5枚と少なく、全体的に小型で毛が少ない種。
チョウセンミズヒキ

参考文献

大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版、2002年
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 3』平凡社、2016年
貝津好孝『日本の薬草』小学館、1995年
近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著『花と葉で見分ける野草』小学館、2010年
主婦と生活社編『野山で見つける草花ガイド』主婦と生活社、2007年
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『増補改訂 草木の 種子と果実』誠文堂新光社、2018年
田中修『雑草のはなし』中央公論新社、2007年
田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社、1995年
馬場篤『薬草500種－栽培から効用まで』誠文堂新光社、1996年
林弥栄監修、平野隆久写真『山溪ハンディ図鑑1 野に咲く花』山と溪谷社、1989年
牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』北隆館、2008年
山田隆彦・山津京子『万葉歌とめぐる 野歩き植物ガイド 夏〜初秋』太郎次郎社エディタス、2013年
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」

関連項目

ひっつき虫

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