クトニアー

クトニアーについて

クトニアー（古希：Χθωνία, Chthoniā）は、ギリシャ神話に登場する女性で、地下世界と関係の深い女神たちと結びついている存在です。特にデーメーテール、ヘカテー、ニュクス、メーリノエーなど、様々な神々の形容辞としても用いられています。「クトニア」の形式での表記も存在し、文献によってその名が登場します。クトニアーにはいくつかの異なる神話に基づく系譜があり、以下ではその主な系譜について詳述します。

アルキュオネウスの娘

クトニアーの一つの側面では、巨人アルキュオネウスの娘として位置付けられています。彼女は姉妹にアルキッペー、アンテー、アステリアー、ドリュモー、メトーネー、パレーネーといった存在を持ち、彼女たちの物語は「スーダ」に登場しています。アルキュオネウスがギガントマキアーでヘーラクレースに殺されてしまった際、彼の娘たちは心の奥深くから傷つき、海に身を投げました。すると、海の女神アムピトリーテーによって彼女たちはカワセミに変えられたとされています。しかし、ヘーゲーサンドロスの記録においてクトニアーの名前は確認されておらず、彼女の存在はほかの姉妹たちとともに描かれることが多いです。

エレクテウスの娘

次に、クトニアーはアテーナイの王エレクテウスとプラークシテアーの娘という伝説もあります。このクトニアーは兄弟にケクロプス、パンドーロス、メーティオーンを持ち、姉妹にはプロクリス、クレウーサ、オーレイテュイアがいます。また、他にオルネウス、テスピオス、エウパラモス、メロペーという兄弟もいるかもしれません。クトニアーは、ポセイドンに仕える神官の子孫、ブーテースと結婚します。

エレクテウスはエレウシースで起きた戦争の結果、トラーキアの王エウモルポスが大軍を率いて助けに来た際、神託を求めます。すると、その神託は「王の娘を犠牲にすれば勝利する」と告げました。エレクテウスはその言葉に従い、末娘のクトニアーを犠牲に捧げました。しかし、彼女の姉妹たちは、彼女が死ぬ際には共に死ぬと約束していたため、クトニアーの死を受けて同時に自ら命を絶ちました。その後、エレクテウスは犠牲を捧げたことでエウモルポスを討ち取り、勝利を収めるも、自身と家もポセイドーンの怒りを受けて滅ぼされたと言います。

コロンタースの娘

クトニアーはまた、アルゴスの神話に登場し、王ポローネウスの娘としての位置づけもあります。このクトニアーはクリュメノスという姉妹を持っているか、あるいはコロンタースの娘とも言われています。アルゴスの伝承によると、デーメーテールがアルゴスに訪れた際、家族に歓迎されなかったコロンタースは、その態度から女神の怒りを買ったとされています。その結果、彼女は自らと館が焼かれてしまいました。その後、クトニアーはデーメーテールと共にヘルミオネーに赴き、プローン山の頂に大神域を設けました。この場所はデーメーテール・クトニアーと呼ばれることとなります。

参考文献

• - アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
• - ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫（2005年）
• - プルタルコス『プルタルコス英雄伝（上）』村川堅太郎訳、ちくま文庫（1987年）

クトニアーの伝説は、彼女が関わるさまざまな神々や血族との物語を通じて、ギリシャ神話の奥深さを感じさせます。

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