クライム・クラブ

クライム・クラブ：伝説の翻訳推理小説叢書

「クライム・クラブ」は、東京創元社が1958年から1959年にかけて刊行した、全29巻からなる翻訳推理小説の叢書です。函入りペーパーバック、新書版という形態で、当時のミステリーファンに新鮮な驚きを与えました。同じ東京創元社から刊行されている日本の推理小説叢書「創元クライム・クラブ」（1991年 - ）とは異なります。

植草甚一による選定

収録作品の選定は、評論家・エッセイストとして知られる植草甚一が担当しました。彼の慧眼によって、フランス、イギリス、アメリカの新進作家の作品が選ばれ、ミステリー愛好家の間で伝説的な叢書として語り継がれることとなりました。

作品選択のコンセプトは「各国における推理作家の新人発掘」であり、叙述トリックを用いた作品も多く含まれています。これにより、従来の「本格ミステリー」の範囲を広げたと評価されています。植草は全巻の巻末解説も執筆し、その内容は後に『クライム・クラブへようこそ』としてまとめられました。

当初は第一期20巻、第二期20巻の計40巻が予定されていましたが、最終的には29巻で終了しています。

収録作品一覧

以下に、「クライム・クラブ」全29巻の収録作品をリストアップします。

1. 『赤毛の男の妻』（ビル・S・バリンジャー、大久保康雄訳） 1958
2. 『警官殺し』（ジョージ・バグビイ、斎藤数衛訳） 1958
3. 『殿方パーティ』（ウイリアム・クラスナー、山西英一訳） 1958
4. 『狙った椅子』（ジュリアン・シモンズ、大西尹明訳） 1958
5. 『リトモア少年誘拐』（ヘンリー・ウェイド、中村保男訳） 1958
6. 『非常線』（ホイット・マスタスン、鷺村達也訳） 1958
7. 『ギデオンの夜』（J・J・マリック、清水千代太訳） 1958
8. 『夢を喰う女』（シャーロット・アームストロング、林房雄訳） 1958
9. 『名探偵ナポレオン』（アーサー・アップフィールド、中川龍一訳） 1958
10. 『死刑台のエレベーター』（ノエル・カレフ、宮崎嶺雄訳） 1958
11. 『遠い山彦』（ダグラス・ラザフォード、龍口直太郎訳） 1958
12. 『日時計』（クリストファー・ランドン、丸谷才一訳） 1958
13. 『十二人の少女像』（シェーン・マーティン、高城ちゑ訳） 1958
14. 『乙女の祈り』（ジョーン・フレミング、山本恭子訳） 1958
15. 『パリを見て死ね!』（マーテン・カンバランド、菅泰男訳） 1958
16. 『藁の女』（カトリーヌ・アルレー、安堂信也訳） 1958
17. 『チャーリー退場』（アレックス・アトキンスン、堀田善衛訳） 1959
18. 『暗殺計画』（マイケル・ブライアン、井上一夫訳） 1959
19. 『死の逢びき』（リー・ハワード、清水千代太訳） 1959
20. 『殺人の朝』（コリン・ロバートスン、斎藤数衛訳） 1959
21. 『彼の名は死』（フレドリック・ブラウン、高見沢潤子訳） 1959
22. 『殺人交叉点』（フレッド・カサック、岡田真吉訳） 1959
23. 『ハマースミスのうじ虫』（ウィリアム・モール、井上勇訳） 1959
24. 『のぞかれた窓』（ジャック・アイムズ、河野一郎訳） 1959
25. 『さよならの値打ちもない』（ウイリアム・モール、河野一郎訳） 1959
26. 『歯と爪』（ビル・S・バリンジャー、森本清水訳） 1959
27. 『消えた犠牲』（ベルトン・コッブ、池田健太郎訳） 1959
28. 『悪の仮面』（シャーロット・アームストロング、高城ちゑ訳） 1959
29. 『盲目の悪漢』（イヴリン・バークマン、山本恭子訳） 1959

これらの作品の中には、映画化やテレビドラマ化されたものも含まれており、時代を超えて愛されています。「クライム・クラブ」は、ミステリー史における重要な足跡として、今もなお多くの読者に影響を与え続けています。

関連事項

植草甚一
東京創元社
創元クライム・クラブ
創元推理文庫

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