グアディアナ川

グアディアナ川

グアディアナ川は、イベリア半島に存在する主要な河川の一つで、その流路はスペイン中央部から始まり、ポルトガル南東部へと及びます。この川はスペインとポルトガルの両国にまたがる国際河川としての性格を持ち、特にスペインのアンダルシア州やエストレマドゥーラ州と、ポルトガルのアレンテージョ地方やアルガルヴェ地方との境界線の一部を形成しています。地形的には、東側が高く西側が低いメセタ台地に沿って当初は西へ流れますが、エストレマドゥーラ州のバダホス付近で南へと向きを変え、最終的に大西洋のカディス湾に注ぎ込みます。

流路の長さは829キロメートルに達し、イベリア半島では4番目に長い川として知られています。流域面積は広大で67,733平方キロメートルにも及びますが、その大部分、実に82%がスペイン領内に含まれています。グアディアナ川の本流の正確な水源については、古くから様々な議論が存在します。歴史を遡ると、ローマ時代には属州ヒスパニア・バエティカとルシタニアの間の境界としての役割も担っていました。

名称の由来

グアディアナ川の名称は、その歴史の中で変化を遂げてきました。ローマ時代には「アヒルの川」を意味する「Flumen Anas」と呼ばれていました。その後、この流域にムーア人が定住するようになると、アラビア語の影響を受け「アヒルのワジ」という意味の「Uádi Ana」へと変化しました。キリスト教徒による再征服後は、「Ouadiana」を経て、やがて短縮されて単に「Odiana」となりました。16世紀以降、カスティーリャ王国（後のスペイン）の影響下で、ムーア人が河川名によく用いる接頭辞「guad」が付加される形で、現在の「Guadiana」という綴りに発展しました。この「guad」で始まる名称は、イベリア半島南部に見られるムーア人文化の影響を示す数多くの地名、例えばグアダルキビール川やグアダラハラなどにも確認できます。

地理と気候

グアディアナ川流域は、地中海性の水文特性を示しており、季節によって水量の変動が非常に大きいことが特徴です。時には大規模な洪水を引き起こす一方で、深刻な干ばつに苦しむこともあります。流域全体の年間降水量は400ミリメートルから600ミリメートル程度であり、気候は半乾燥性気候に分類されます。年間の平均気温は摂氏14度から16度の範囲です。

河口部と下流域

グアディアナ川は、スペインのアンダルシア州の海岸部とポルトガルのアルガルヴェ地方という、観光地としても知られる地域に挟まれた形で大西洋に流れ込みます。具体的には、スペインのアジャモンテとポルトガルのヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオという双子都市の間でカディス湾に注ぎます。河口部には広大な塩水湿地が形成されており、その最大幅は約550メートルです。水深は5メートルから17メートルと変化し、潮位の差は0.8メートルから3.5メートルです。

グアディアナ川の下流部は船舶の航行が可能ですが、遡上できるのは河口からおよそ76キロメートル内陸にあるモイーニョ・ドス・カナイスの滝までとなります。この下流部の広範囲、約2,089ヘクタールには自然保護区が設定されています。スペイン側にはクリスティーナ島湿地自然保護区が、ポルトガル側にはカストロ・マリム・エ・ビラ・レアル・デ・サント・アントニオ湿地自然保護区が広がっており、多様な塩生植物や水鳥、フラミンゴなどの貴重な生息・飛来地として、ラムサール条約登録地にも指定されています。

ダムと利水

グアディアナ川の流域には、30を超える多数のダムが建設されています。中でも、ポルトガルのアレンテージョ地方にあるアルケヴァ・ダムは、グアディアナ川水系最大のダムであり、貯水池であるアルケヴァ貯水池は西ヨーロッパ有数の規模を誇ります。表面積は約250平方キロメートル、貯水量は4,150億立方メートルに達します。これらのダムは、水力発電や農業用水の灌漑といった目的で広く利用されています。しかし、イベリア半島の他の主要河川と比較すると、グアディアナ川は流量が少なく、また比較的人口密度の低い地域を流れるため、経済的な利用度はやや低い傾向にあります。アルケヴァ・ダムの他にも、ガルシーア・ソラ貯水池、シハラ貯水池、エル・ビカリオ貯水池、オレリャーナ貯水池などが主要なダムとして挙げられます。

流域の詳細

グアディアナ川の全長818キロメートルの内訳を見ると、スペイン領内を流れる区間が578キロメートル、スペインとポルトガルの国境をなす区間が約100キロメートル、そしてポルトガル領内を流れる区間が140キロメートルです。流域面積67,733平方キロメートルのうち、約82%にあたる55,444平方キロメートルがスペイン側、約17%にあたる11,560平方キロメートルがポルトガル側に属します。

スペイン側では、カスティーリャ＝ラ・マンチャ州（シウダ・レアル県、アルバセテ県）、エストレマドゥーラ州（バダホス県）、アンダルシア州（ウエルバ県）の3つの自治州を流域としています。一方、ポルトガル側ではアレンテージョ県、アルガルヴェ県、ポルタレグレ県、エヴォラ県、ベージャ県、ファーロ県の6つの県にわたって流域が広がっています。

上流部と水源

グアディアナ川の伝統的な本流とされるグアディアナ・ビエホ川は、アルバセテ県からシウダ・レアル県へと流れますが、途中で水流が途絶える箇所があり、水文地質学的には主流ではない可能性が指摘されています。水源についても諸説ありますが、一般的にはカスティーリャ＝ラ・マンチャ州シウダ・レアル県のオホス・デル・グアディアナ、標高608メートルの地点が本流の水源とされています。この水源地は水系全体としては中流域に位置し、ラムサール条約登録地であるラグーナス・デ・ルイデーラ自然公園内にあります。この一帯はシャジクモ類や特定の貝類、イベリアミズハタネズミなどの貴重な生息地となっています。

イベリコ山系に源を発するシグエラ川は、225キロメートルを流れた後、グアディアナ川の水源地のすぐ西側で合流し、ここから川幅を増したグアディアナ川として西方へ流れます。この合流地点周辺は、オカヨシガモやアカハシハジロなどの重要な越冬地であり、タブラス・デ・ダイミエル国立公園として保護され、ラムサール条約にも登録されています。

中流部と都市

シグエラ川との合流後、グアディアナ川はシウダ・レアルの北側を通過し、複数の支流を集めながら西進します。シウダ・レアル県西部の山地では、巨大なシハラ貯水池、ガルシーア・デ・ソラ貯水池、オレリャーナ貯水池が連続して現れます。オレリャーナ貯水池の島々はハシブトアジサシの重要な営巣地であり、ここもラムサール条約登録地です。

その後、エストレマドゥーラ州に入り、州都メリダを通過します。メリダは古代ローマ都市として多くの貴重な遺跡が残されており、中でも紀元1世紀に建設されたローマ橋は、全長721メートル、60のアーチを持つ壮麗な橋です。イスラーム時代に防御施設であるアルカサバが築かれるなど、歴史を通じて重要な交通路であり続けました。現在も歩行者専用として活用されており、ユネスコ世界遺産「メリダの考古遺産群」の構成資産となっています。

さらに下流へ進むと、エストレマドゥーラ州最大の都市バダホスに到達します。バダホス市内には4つの橋が架けられており、最も歴史が古いのは1460年に建設されたパルマス橋です。度重なる洪水で破壊・再建を繰り返し、現在も利用されています。他にもウニベルシダ橋、アウトノミア・エストレメーニャ橋、そして現代的な斜張橋であるレアル橋があります。

ポルトガル国境区間と下流

バダホスを過ぎると、グアディアナ川は南へ向きを変え、スペインとポルトガルの国境に沿って流れます。この国境区間には、16世紀初頭に建設された歴史的なアジュダ橋がありますが、スペイン継承戦争中に破壊されたままとなっています。その後、川は一時的に完全にポルトガル領内に入り、先述したアルケヴァ・ダムとその巨大な貯水池が現れます。2002年に完成したアルケヴァ・ダムは、高さ96メートル、幅458メートルのアーチ式コンクリートダムで、水力発電も行っています。ダムを越えると、再びポルトガルとスペインの国境沿いを流れ、チャンサ川との合流地点には国境をまたぐバホ・グアディアナ国際橋が架かっています。

さらに南下し、大西洋への河口へと向かいます。河口部は再び国境となっており、スペイン側にはアジャモンテ、ポルトガル側にはヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオの町があります。この河口部の湿地帯は、カストロ・マリムおよびヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオ沼地自然保護区としてラムサール条約に登録されており、多様な動植物、特に水鳥やフラミンゴの生息地として重要です。なお、オリベンサ周辺の国境については、現在も両国間で係争が続いています。

河口からおよそ68キロメートル遡ったポルトガルのメルトラまでは、現在も船舶の航行が可能です。メルトラの北方には、ポルトガル南部で最も落差が大きいとされるプーロ・ド・ロボの滝があります。

グアディアナ国際橋

スペインとポルトガル両国間の主要な連絡路として、グアディアナ川の河口部に架けられたのがグアディアナ国際橋です。1963年に計画が始まり、1985年の合意を経て、1991年に完成しました。スペインのアジャモンテとポルトガルのヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオを結ぶこの橋は、全長666メートル、中央径間324メートルの規模を持ち、ポルトガルで3番目、スペインでも有数の長さを誇る橋です。桁下高は20メートルあり、船舶が通過できるよう設計されています。主塔はスペイン側が95メートル、ポルトガル側が96メートルで、スペイン側の塔は河川内の人工島に、ポルトガル側の塔は陸上に建てられています。この橋は、ポルトガル国道A-22号線とスペインのアンダルシア州道A-49号線を結び、欧州自動車道路E01号線の一部となっています。

主要沿岸都市

アルカサル・デ・サン・フアン
シウダ・レアル
メリダ
バダホス
アジャモンテ
ヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオ

主要支流

左岸:

グアディアナ・ビエホ川
アスエール川
ハバロン川
スハル川
アルディーラ川
チャンサ川

右岸:

シグエラ川
サンカラ川
エステーナ川
デジェベ川
* ヴァスカン川

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