グレート・ホワイト・ブラザーフッド

グレート・ホワイト・ブラザーフッドとは

グレート・ホワイト・ブラザーフッド（Great White Brotherhood）は、「聖白色同胞団」「大白色聖同胞団」「大いなる白色同胞団」とも呼ばれ、近代神智学やニューエイジ思想において、人類の霊的進化を導く存在とされる超自然的な人物たちの集団です。彼らは選ばれた人間を通じて霊的な教えを広める偉大な存在であり、神智学の古代の知恵のマスターや、アセンデッドマスターとして知られています。

概念の起源

この概念は、近代神智学の創始者ヘレナ・ブ・ラヴァツキーによって最初に語られました。彼女は、クートフーミやモリヤといったマハトマ（大師）と呼ばれる存在から教えを授かったと主張しました。これらのマハトマはグレート・ホワイト・ブラザーフッドに属するとされ、神智学協会やその教えを継ぐ団体によって、この概念は発展・拡大しました。

神智学協会の幹部チャールズ・ウェブスター・レッドビーターによれば、グレート・ホワイト・ブラザーフッドのリーダーはサナト・クマーラであるとされています。この集団は、地球における人間の霊的進化全体を統括していると考えられています。

霊的進化とマハトマ

近代神智学では、人類はたゆまぬ努力によって到達できる最終局面である、一種の集団的涅槃を目指しています。涅槃に達する力を持つものの、人類を導くために涅槃に入らずにいる指導者がマハトマ（マスター）であるとされました。ブラヴァツキーは、グレート・ホワイト・ブラザーフッドの使者であり、神智学協会は彼らの導きを受けていると主張しました。この思想には、仏陀になりうるが衆生救済のために成仏しないという、大乗仏教の菩薩の理想が取り入れられています。

メッセージを受け取ったとされる人物

グレート・ホワイト・ブラザーフッドからのメッセージを受け取ったと主張する人物は、ブラヴァツキーの他に、セレマ運動のアレイスター・クロウリー、アーケイン・スクールのアリス・ベイリー、IAM運動のガイ・バラード、The Bridge to Freedomのジェラルディン・イノセンテ、普遍勝利教会のエリザベス・クレア・プロフェット、ボブ・サンダース、シェア・インターナショナルのベンジャミン・クリームなどがいます。

本拠地と創設者

アセンデッドマスターの教えによれば、サナト・クマーラがこの集団を創設したとされています。また、グレート・ホワイト・ブラザーフッドの本拠地は、ゴビ砂漠上空のエーテル界に存在するシャンバラに築かれたとされています。

歴史的背景

成就（熟達）に至った神秘家の秘密組織が、人類のスピリチュアルな発展を導くという考えは、18世紀後半のカトリック神秘家カール・フォン・エッカートハウゼンによって提唱されました。彼の著書『聖所にかかる雲』には、世界を監視し進歩を導く力を持つアデプト（成就者）の会議が描かれ、真剣に求める者には、選ばれた者たちに伝わる隠された知が与えられるとされています。エッカートハウゼンは、キリスト教の聖徒の交わりや、薔薇十字団やイルミナティのような秘密結社の例を挙げ、存命の神秘家と死んだ神秘家との共同体を提唱しました。

ブラヴァツキ―は、自身の教えをアデプトから受けたと主張し、著書『ヴェールを脱いだイシス』で、彼らを「隠された同胞団のマスターたち」または「マハトマ」と呼びました。彼女は、肉体を持つ者と持たない者の両方から構成されるこのグループと、チベットで実際に接触したと主張しました。

マハトマ書簡には、高位のメンバーがテレパシーで連絡を取り合う神秘的な秘密組織の存在が示唆されています。また、アデプトたちによる秘密の会という考えは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、様々な秘教的教義で広く共有されました。

黄金の夜明け団の団員であるアーサー・エドワード・ウェイトは、「隠された教会」に言及し、若いアレイスター・クロウリーはこれに触発され、エッカートハウゼンの『聖所にかかる雲』を読むよう勧められました。クロウリーは、ここに書かれた「神秘的な同胞団」に憧れ、彼らとのコミュニケーションを熱望し、黄金の夜明け団に入団しました。

チャールズ・W・レッドビーターは、著書『マスターと道』の中でグレート・ホワイト・ブラザーフッドについて多く言及しました。また、アリス・A・ベイリーは、1920年から1949年の間にグレート・ホワイト・ブラザーフッドから多数の啓示を受けたと主張しました。グレート・ホワイト・ブラザーフッドという名前は、人類のスピリチュアルな発展に貢献するアデプトたちの共同体を指す総称として使われることがあります。

一部の西洋魔術師は、グレート・ホワイト・ブラザーフッドを「グレートホワイトロッジ」と呼び、フリーメイソンに似たイニシエーションのヒエラルキーによって構成されると考えます。ガレス・ナイトは、そのメンバーを「マスターズ」または「内部平原におけるアデプト」と表現し、彼らは「形の世界におけるスピリチュアルな進化に必要なすべての経験と知識を獲得した存在」であると述べています。

グレート・ホワイト・ブラザーフッドという用語は、ガイ・バラードの著書『ヴェールを脱いだ神秘』と、彼の提唱したIAM運動によって広まりました。バラードは、この「不滅の聖人と賢人による同胞団」を、変容・再誕・昇天のイニシエーションを潜り抜けた存在であるとしました。

ベンジャミン・クリームは、自身の著書がグレート・ホワイト・ブラザーフッドからテレパシーで得た情報に基づいていると主張しました。

一方で、フリーメイソンの公式誌では、グレート・ホワイト・ブラザーフッドをイルミナティの別名であるとする説も紹介されています。

派生的な概念

グレート・ホワイト・ブラザーフッドは、グレートブラザーフッド・オブ・ライト（光の大同胞団）、または地球のスピリチュアル・ヒエラルキーとも呼ばれます。レッドビーターは、この集団に「天国のホスト、他の惑星からのメンバー、未上昇の徒弟が含まれる」と述べています。

神智学者は、古代の知恵のマスターが、グレート・ホワイト・ブラザーフッドの名の下に地球への奉仕を共に行うと信じています。「白」という用語は、白魔法の使用を意味し、人種とは無関係です。ブラヴァツキ―は、マスターをヨーロッパ人ではなく、チベット人またはインド人であると説明しましたが、これは師のアイデンティティを隠すための記述であるという説もあります。

多くのオカルトグループは、グレート・ホワイト・ブラザーフッドを重視し、中にはアセンデッドマスターとの関わりを存在の根拠とするグループも存在します。IAM運動、ブリッジ・トゥ・フリーダム、普遍勝利教会などはその代表例です。グレート・ホワイト・ブラザーフッドを構成するアセンデッドマスターには、マスターイエス、サナト・クマラ、孔子、釈迦、イエスの母マリア、ヒラリオン、エノク、ポール・ベネチア、観音、サンジェルマン伯爵、およびクートフーミなどが含まれます。

人類の敵：ロード・オブ・ダーク・フェイス

人智学の創始者ルドルフ・シュタイナーは、人類の霊的な進化を導く存在として、キリストを支持する一方で、ルシファーやアーリマンという悪霊によって導かれる堕落の道を説きました。彼は、これらの悪霊を「ロード・オブ・ダーク・フェイス」という概念で明確化し、人類の主な敵としました。

ルシファーは傲慢の霊であり、神秘的な力を呼び起こす能力を備えた存在です。アーリマンは物質主義の霊であり、人間を唯物論に導きます。シュタイナーは、これらの悪霊が第一次世界大戦を引き起こしたと主張し、ルシファーとアーリマンの力の間で均衡を保つために、キリストの存在が必要であるとしました。

ピーター・ワシントンは、シュタイナーの論について、ゲルマン文化の優位性を説き、オカルト陰謀論を主張していると批判的に述べています。

参考文献

ロナルド・デッカー、マイケル・ダメット『オカルトタロットの歴史―1870-1970年』今野喜和人 訳、国書刊行会、2022年。
Bas J.H. Jacobs (2020-06-04). “Getting off the Wheel: A Conceptual History of the New Age Concept of Enlightenment（輪から降りる：エンライトメント（悟り）というニューエイジの概念の概念史）”. Numen (Brill) 67: 373–401.
大田俊寛『現代オカルトの根源 - 霊性進化論の光と闇』筑摩書房〈ちくま新書〉、2013年。
Alex Owen (2004). “Chapter Six Aleister Crowley in the Desert”. The Place of Enchantment: British Occultism and the Culture of the Modern. Univ of Chicago Pr.
ピーター・ワシントン『神秘主義への扉 現代オカルティズムはどこから来たのか』白幡節子・門田俊夫 訳、中央公論新社、1999年。

関連項目

秘密の首領

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