ケプラー5

ケプラー5星系

ケプラー5は、夜空ではくちょう座の領域に存在する恒星であり、NASAが運用した宇宙望遠鏡「ケプラー」の主要な観測対象の一つでした。この恒星系が特筆されるのは、その周囲を公転する巨大な太陽系外惑星、ケプラー5bの存在が確認されたためです。ケプラー5bは、ケプラー計画によって初めてその存在が明らかになった5つの惑星の中に数えられています。

発見の経緯と命名

この星系が「ケプラー5」と名付けられたのは、ケプラー宇宙望遠鏡による観測で、恒星の手前を惑星が通過する現象（トランジット）が5番目に確認されたことに由来します。惑星ケプラー5bの発見は、ケプラー計画がその運用初期に捉えた他の4つの太陽系外惑星（ケプラー4b、ケプラー6b、ケプラー7b、ケプラー8b）に加え、事前に試験観測として調べられていた3つの惑星（TrES-2、HAT-P-7b、HAT-P-11b）の観測データと共に、2010年1月4日にワシントンD.C.で開催されたアメリカ天文学会第215回会合で公式に発表されました。この発表は、ケプラー望遠鏡が太陽系外惑星探査において大きな成果を挙げ始めていることを世界に知らしめる重要な機会となりました。

ケプラーによるケプラー5bの発見報告は、その信憑性を確固たるものとするために、地上にある複数の著名な天文台による追跡観測が行われました。具体的には、ハワイのマウナケアにあるW・M・ケック天文台をはじめ、テキサス州のマクドナルド天文台、カリフォルニア州のパロマー天文台とリック天文台、そしてアリゾナ州のMMT天文台、WIYN天文台、ホイップル天文台、さらにスペイン・カナリア諸島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台などが観測に参加し、ケプラー5bの存在と性質が再確認されました。

恒星ケプラー5の特徴

主星であるケプラー5は、太陽と比較してやや大きく重い恒星です。詳細な観測によれば、その質量は太陽の約1.37倍（不確定性±0.056倍）、半径は約1.79倍（±0.053倍）と測定されています。恒星の組成を示す金属量（水素やヘリウムよりも重い元素の割合）は[Fe/H]=+0.04（±0.06）であり、これは太陽が持つ金属量とほぼ同程度であることを示唆しています。恒星に十分な重元素が存在することは、惑星が形成される材料が豊富であることを意味するため、ケプラー5の周囲に惑星が存在する可能性は比較的高いと考えられていました。

また、ケプラー5の表面温度を示す有効温度は6297 K（±60 K）と推定されており、これは太陽の表面温度（約5778 K）よりも高い値です。恒星の色は、その温度に応じて変化しますが、ケプラー5は太陽よりやや青みがかった光を放っていると考えられます。地球から見た際の明るさ、すなわち視等級は13.9等と非常に暗いため、肉眼はもちろん、一般的な小型の望遠鏡で観測することも困難です。

惑星系：ケプラー5b

ケプラー5の周囲には、ただ一つの惑星、ケプラー5bが発見されています。この惑星は、その質量と半径から、木星のような巨大ガス惑星に分類されます。具体的には、質量は木星の約2.11倍、半径は木星の約1.41倍と測定されています。つまり、質量は木星の2倍を超えますが、半径は木星より3分の1ほど大きいことになります。

ケプラー5bの最も顕著な特徴は、その軌道です。主星であるケプラー5からわずか約0.05064天文単位（au）という非常に近い距離を公転しています。これは、太陽から水星までの平均距離（約0.387 au）と比較しても格段に近く、太陽系で最も内側を回る水星の軌道よりもはるかに内側に位置することを意味します。このような主星への近さから、ケプラー5bは「ホット・ジュピター」と呼ばれる分類に属する太陽系外惑星の典型例です。ホット・ジュピターは、巨大なガス惑星でありながら、主星に極めて近い軌道を高速で公転しているという特徴を持ちます。ケプラー5bの公転周期は約3.5485日と非常に短く、これもホット・ジュピターの典型的な性質です。また、ケプラー5bの軌道はほぼ円形であると考えられており、その軌道離心率は推定値でほぼ0とされています。

ケプラー5星系は、ケプラー宇宙望遠鏡による初期の重要な発見として、太陽系外惑星の研究、特にホット・ジュピターの多様性や形成メカニズムを理解する上で貴重な情報を提供しています。

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