コロンビア川峡谷

コロンビア川峡谷の概要

コロンビア川峡谷は、アメリカ合衆国太平洋岸北西部を流れるコロンビア川が、カスケード山脈を横断する部分に形成された峡谷です。その深さは最大で1,200m、長さは130kmにも及び、ワシントン州とオレゴン州の州境を成しています。この峡谷は、コロンビア川とデシューツ川の合流地点から西へポートランド都市圏まで広がっており、コロンビア川台地と太平洋を結ぶ唯一の峡谷です。

この地理的特徴から、峡谷には州間高速道路84号線、アメリカ国道30号線、ワシントン州道14号線、そして鉄道が両岸を通っており、交通の要衝となっています。

また、連邦政府によってコロンビア峡谷国立風致地区として保護されており、アメリカ合衆国森林局によって管理されています。この地域は、その自然美と多様なレクリエーション機会により、人気の観光地となっています。

多様な環境と生態系

カスケード山脈を越えて太平洋へ流れ込む川は、コロンビア川の他に、北カリフォルニアのクラマス川、ピット川、カナダ・ブリティッシュコロンビア州のフレーザー川の3つしかありません。これらの川はそれぞれ山脈に峡谷を形成していますが、コロンビア川峡谷は特にオレゴン州とワシントン州の州境を形成し、標高と降水量の多様さによって、独特な環境が形成されています。

標高は海抜0mから1,200mに及び、降水量も年間250ミリから2,500ミリの地域が存在します。このため、峡谷の生態系は非常に多様であり、西部では年間1,900ミリから2,500ミリの降水によって温帯雨林が形成され、東部では年間降水量250ミリから380ミリという少なさで草原が広がっています。フッド川やザ・ダルズ近郊では、乾燥した環境に適応した森林が見られます。また、生息地の孤立から多くの固有種が存在し、花では13種の固有種が確認されています。

130kmの短い区間の中で、温帯雨林から乾燥した草原まで、多様な植生を見ることができ、州間高速道路84号線沿いからは、変化に富んだ風景を楽しむことができます。西部では、着生植物に覆われたベイマツやアメリカツガが見られ、フッド川とザ・ダルズ間では、オレゴンホワイトオーク、ポンデローサマツ、ハヒロハコヤナギなどに植生が変化します。さらに東に進むと、草原が広がり、コントルタマツが一部見られる程度になります。

レクリエーションと気象

カスケード山脈の東西で気圧が異なることによって、時速56kmの風が吹き、ウィンドサーフィンやカイトサーフィンの名所となっています。また、この気圧の差によって冬季には吹雪が頻繁に発生します。

夏にはハイキング、サイクリング、魚釣りなどのレジャーが楽しめ、冬にはウィンタースポーツが盛んです。オレゴン州側だけでも90以上の滝が存在し、その中には高さ190mのマルトノマ滝も含まれています。

峡谷は、森林局によって管理され、オレゴン州とワシントン州の州立公園にも指定されています。

地質と歴史

コロンビア川峡谷の形成は、1,700万年前から1,200万年前の中新世に始まり、200万年前から70万年前の更新世にかけて峡谷が深くなっていきました。

この峡谷には、13,000年前から人類が生活していたと考えられています。アジアからベーリング地峡を渡って北アメリカにやってきたフォルサム人の痕跡が発見されています。また、ザ・ダルズの東に位置するセライロ滝で行われた発掘調査により、1万年前からこの地で鮭漁が営まれていたことがわかっています。

峡谷は、数千年前から重要な交通路として利用されてきました。ネイティブ・アメリカンたちは、フッド山の北側にあるロロ峠を越えてセライロ滝へ交易のために移動していました。1805年には、ルイス・クラーク探検隊が太平洋へ出るためにこの峠を利用しました。

初期のヨーロッパ人やアメリカ人入植者たちは、川に蒸気船航路を開設し、川沿いに鉄道を敷設しました。現在、BNSF鉄道がワシントン側で、ライバル企業のユニオン・パシフィック鉄道がオレゴン州側で路線を運行しています。1997年までは、アムトラックの「パイオニア号」がユニオン・パシフィック鉄道の路線を利用していました。また、ポートランド支社がBNSF鉄道の路線を利用してエンパイア・ビルダー号を運行しています。

20世紀初頭には、コロンビアリバー・ハイウェイが太平洋岸北西部最初の舗装道路として建設されました。コロンビア川を利用した舟運は、ボンネビル・ダムとザ・ダルズ・ダムの建設によって大幅に衰退しました。

1986年11月、連邦議会はこの峡谷を全国2番目となる国立風致地区に指定しました。

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