コンチネンタル・レスリング・アソシエーション

コンチネンタル・レスリング・アソシエーション（CWA）とは

コンチネンタル・レスリング・アソシエーション（Continental Wrestling Association、略称CWA）は、1977年から1989年までアメリカ合衆国に存在したプロレス団体です。ジェリー・ジャレットが主宰し、ジェリー・ローラーをエースとして、テネシー州メンフィスを拠点に活動しました。本項では、その前身であるNWAミッドアメリカ（NWA Mid-America）についても記述します。

概要

CWAは、NWAやAWAと同様の「統括組織」としての側面を持ちながら、団体としては『ミッド・サザン・レスリング』という呼称が一般的でした。元々はNWAの主要なテリトリーの一つとして、主にテネシー州とケンタッキー州で運営されていました。1986年まではNWA加盟団体、1989年まではAWAの提携団体として活動していました。

1989年、CWAはテキサス州ダラスのWCCW（ワールド・クラス・チャンピオンシップ・レスリング）と合併し、USWA（ユナイテッド・ステーツ・レスリング・アソシエーション）を結成しましたが、翌1990年には分裂し、解消されました。

CWAは、1970年代末から1980年代前半にかけて、スチュ・ハートが主宰するカナダ・カルガリーのスタンピード・レスリングと提携していました。この提携により、ビッグ・ダディ・リッター、デビッド・シュルツ、ホンキー・トンク・ウェインらがテネシーを経由してカルガリーのマットに登場し、その後のWWF（現WWE）などのメジャー団体進出の足がかりとなりました。

また、カルガリーと提携関係にあった日本の国際プロレスとも繋がりがあり、1960年代のNWAミッドアメリカ時代からテネシー地区を主戦場としていたジプシー・ジョーの仲介により、モンゴリアン・ストンパー、ロン・バス、ジョー・ルダック、ポール・エラリングなどがCWAから国際プロレスに参戦しました。

日本においてテネシー地区は、その試合スタイルの荒々しさや、メジャー団体に与しない独立団体的なイメージから、「無法地帯」と呼ばれることもありました。アリーナを飛び出してのストリートファイトや、観客を入れずに試合を行うエンプティ・アリーナ・マッチなど、メンフィス・スタイルと呼ばれるハードコア・レスリングに通じる試合形式をいち早く取り入れたことでも知られています。

ウォーリー山口は、大仁田厚がFMWで表現したことは、「アイディアの宝庫」であるテネシーをサーキットした経験がヒントになったと語っています。大仁田厚は海外武者修行中の1981年に、渕正信と共にCWAのリングに上がっていました。

歴史

「メンフィス地区」と呼ばれるプロレスのテリトリーは、1940年代に創設されました。テネシー州メンフィスおよびナッシュビルを中心に、周辺の中小都市で複数のプロモーターが興行を行っていました。ジャッキー・ファーゴをエースに擁した「NWAミッドアメリカ」のテリトリーは、初期にはタッグマッチが中心で、メインイベントのほとんどがタッグマッチでした。

1960年代には、アメリカ武者修行時代のアントニオ猪木がヒロ・マツダ、上田馬之助がトージョー・ヤマモトと組んで、それぞれ同地区認定のNWA世界タッグ王座を獲得しています。星野勘太郎&山本小鉄のヤマハ・ブラザーズや、大熊元司&グレート小鹿の極道コンビも、アメリカ修行時代はテネシーで活躍しました。

1970年代半ばにジェリー・ローラーが"キング"としてその名を高めると同時に、タッグマッチからシングルマッチ中心へと移行し始めました。NWA傘下のテリトリーとして、ハーリー・レイス、テリー・ファンク、ジャック・ブリスコ、ダスティ・ローデスといったNWAのスターたちが登場し、ジェリー・ローラーと対戦しました。ローラーはホームでありながらもヒールとして迎え撃ち、反則攻撃に地元の観客は熱狂しました。

1970年代後半、このテリトリーは、NWAミッドアメリカのプロモーターだったニック・グラスと、その番頭格だったジェリー・ジャレットの二派に分裂しました。ニック・グラスは金払いの悪さや、息子のジョージ・グラスを勝たせるブックを連発したため、多くのレスラーが不満を抱いていました。最終的にジェリー・ジャレットはグラス派と袂を分かち、1977年にジェリー・ローラーと共にCWAを設立。3年後にはグラスのテリトリーは消滅し、CWAに吸収されました。

1978年、CWAはAWAとの提携を開始し、グラス派から受け継いだNWA認定のミッドアメリカ版南部王座はAWAの認定タイトルとなりました。CWAはメンフィスのミッドサウス・コロシアムで毎週月曜に興行を行い、同様にルイビルとナッシュビルでも毎週土曜に興行を行いました。これらの興行のほか、テネシー、ケンタッキー、アーカンソー、ミズーリ、アラバマ北部でも追加の興行を行いました。

1980年代に入ると、ジェリー・ローラーと、ヒール時代の彼のマネージャーだったジミー・ハートの抗争で観客を沸かせました。ジミー・ハートは「ファースト・ファミリー」というユニットを組み、ハルク・ホーガン、ビル・アーウィン、アイアン・シークなど、数多くの選手がメンバーとなりました。この抗争は、ハートがWWFと契約してテリトリーを去るまで続きました。

1981年には、ジェリー・ローラーとテリー・ファンクがミッドサウス・コロシアムにて、観客を入れないエンプティ・アリーナ・マッチを行いました。ローラーは1970年代後半から1990年代前半にかけて、様々なレスラーたちとパートナーになったり、抗争を繰り広げました。中でもビル・ダンディーとの抗争は特に有名で、そのカリスマ性は今でも語り草となっています。

アンディ・カウフマンとの抗争

CWAを全国的に知らしめたのは、コメディアンのアンディ・カウフマンとジェリー・ローラーの抗争でした。カウフマンは自身のショーで、女性が自分に勝利したら賞金を与えるという形式のレスリングを行なっていました。彼は自分の試合は「本物」であり、プロレスは「本物」ではないと主張していました。

カウフマンはミッドサウス・コロシアムの興行にも現れ、女性とのレスリングを行い、負けたら結婚すると宣言しました。この行為に怒ったジェリー・ローラーとの抗争は、ファンの大きな反感を買いました。ローラーはカウフマンに危険な技であるパイルドライバーを二度も与え、カウフマンは首を負傷し、担架で運ばれました。

1982年7月27日、カウフマンとローラーは、全国放送のデイヴィッド・レターマンの番組に出演しました。二人が口論になると、ローラーはカウフマンに平手打ちをし、カウフマンは椅子から転げ落ちました。カウフマンはローラーにコーヒーを投げつけ、罵詈雑言を浴びせてスタジオから去りました。この騒動で、NBCの幹部は二人の抗争が本物だと信じました。

この有名な抗争は、後に演出されたものであり、二人が友人であることが判明しました。この真実は、カウフマンの死後10年以上経った1995年まで伏せられていました。ローラーの自伝によると、レターマンの番組での騒動は、カウフマン自身のアイデアでした。

カウフマンとの抗争は1983年前半に終了し、その後ローラーは再びジミー・ハートと抗争しました。

終焉

1986年、ジェリー・ジャレットはNWAから脱退し、すべてのタイトルからNWAの文字を削除しました。AWA世界ヘビー級王座のみを唯一の承認世界タイトルとしました。1987年後半よりCWAは「チャンピオンシップ・レスリング・アソシエーション」と改名し、全シングル王座は「CWAヘビー級王座」として統一されました。

1988年、WWFに対抗するために、AWAとCWAの合併が計画されました。同年5月9日、ジェリー・ローラーはAWA王者カート・ヘニングを破り、AWA世界ヘビー級王座を獲得しました。この年にはAWAとCWAに加え、WCCWも含む合併の話が持ち上がり、王座統一戦がAWAのPPV興行で行われました。ローラーはケリー・フォン・エリックを下し、「統一世界王者」となりましたが、その後AWAとの関係は断絶し、ローラーのAWA世界タイトルは剥奪されました。

AWAとの合併に失敗した後、ジェリー・ジャレットはWCCWを買収し、二つの団体を統一して1989年にUSWAを創設。こうしてCWAの時代は幕を閉じました。

タイトル

NWAテネシー・ヘビー級王座
NWAテネシー・タッグ王座

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