ゴージャス・ジョージ

ゴージャス・ジョージ：プロレス史に輝くカリスマヒール

ゴージャス・ジョージ(Gorgeous George)のリングネームで知られるジョージ・ワグナー(George Raymond Wagner, 1915年3月24日 - 1963年12月26日)は、アメリカ合衆国を代表するプロレスラーの一人です。ネブラスカ州出身の彼は、1940～50年代、特に西海岸において圧倒的な人気を誇り、現代で言うところの力道山のような存在感を放っていました。テレビ放送黎明期という時代背景も相まって、その人気は瞬く間に全米へと広がっていったのです。

華麗なるヒールとしてのキャリア

貧しい家庭に育ったワグナーは10代でプロレスラーとしてデビュー。当初は小柄な前座レスラーでしたが、妻や仲間からの助言を受け、貴族を思わせる尊大なキャラクターに転身します。きらびやかなスパンコールのロングガウンとブロンドヘアという、当時としては非常に斬新なコスチューム、そして巧みなマイクパフォーマンスで観客を魅了。リング上では反則を繰り返すヒール(悪役)として、観客の激しいブーイングを浴びながらも、同時に熱狂的な支持を集めました。

彼の試合は、当時のアメリカにおけるキラーコンテンツであったプロレス中継の目玉となり、全米の視聴者を釘付けにしました。会場は常に満員で、彼の試合を見るために多くの人が殺到したと言われています。ただし、ニューヨークを中心とした東海岸では、アントニオ・ロッカの方がより一般的な人気を誇っていたとされています。

1950年代後半、プロレスブームの終焉とともに、ゴージャス・ジョージの人気にも陰りが見え始めます。巨万の富を築いたものの、離婚やアルコール依存症といった私生活の問題に苦しむことになります。1962年、ザ・デストロイヤーとの「髪とマスクを賭けた試合」で敗れ、トレードマークであったブロンドヘアを剃り落とされたことで、彼のキャリアは終焉を迎えます。それからわずか1年後、心臓発作により48歳でこの世を去りました。

プロレス界への多大な影響

ゴージャス・ジョージの死後、彼を名乗るレスラーが数多く現れましたが、誰もが本物ではなく、彼の名声に近づくことはできませんでした。その一人であるゴージャス・ジョージ・ジュニアは、1969年に来日し、国際プロレスでコミカルなファイトを披露しています。

しかし、ゴージャス・ジョージのスタイルは、フレッド・ブラッシー、バディ・ロジャース、ジェリー・グラハム、エディ・グラハム、ジャッキー・ファーゴ、レイ・スティーブンス、ニック・ボックウィンクル、パット・パターソン、バディ・コルトなど、多くのレスラーに多大な影響を与えました。彼らを通して、リック・フレアーなどの後進にもその影響は受け継がれていると言えるでしょう。

さらに、モハメド・アリやジェームス・ブラウンといった、プロレス以外の分野の著名人もゴージャス・ジョージに影響を受けていると言われています。アリは、ゴージャス・ジョージの派手なパフォーマンスをボクシングに取り入れようとしたとされ、ジェームス・ブラウンもまた、彼の影響を受けたパフォーマンスを行っていました。

伝説の入場シーン

ゴージャス・ジョージの入場シーンは、プロレス史に残る名場面として知られています。赤絨毯、威風堂々たる入場曲、執事や女性マネージャーに付き添われた彼の登場は、観客を圧倒しました。リングサイドでは、香水でリングを消毒するパフォーマンスや、観客席への花束投げ入れなど、エンターテインメント性溢れる演出が施されました。

この入場スタイルは、後にランディ・サベージも参考にしているなど、その影響は計り知れません。

殿堂入りとレガシー

2010年、ゴージャス・ジョージはWWE殿堂入りを果たしました。彼の最後の対戦相手であったザ・デストロイヤーがプレゼンターを務め、彼の功績を称えました。

ゴージャス・ジョージは、単なるプロレスラーとしてだけでなく、エンターテイナー、ショーマンとしてプロレス界に革命をもたらした人物です。彼の華麗なパフォーマンスとカリスマ性は、現代のプロレスにも色濃く影響を与え続けています。彼の存在は、これからもプロレス史に語り継がれていくことでしょう。

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