ニック・ボックウィンクル

ニック・ボックウィンクル：ダーティ・チャンプのレジェンド

ニック・ボックウィンクル（1934年 12月6日 - 2015年 11月14日）は、アメリカ合衆国を代表するプロレスラーの一人です。ミズーリ州セントルイス生まれ（諸説あり）で、レスラー一家に育ちました。父親であるウォーレン・ボックウィンクルもプロレスラーとして活躍しており、幼少期からプロレスの世界に触れて育ちました。バディ・ロジャースなどの試合を間近で見ていた経験は、後のレスラー人生に大きく影響を与えたと言えるでしょう。

大学時代はアメリカンフットボールに打ち込み、奨学金を得てオクラホマ大学に入学しますが、膝の負傷により奨学金を失い、カリフォルニア大学[[ロサンゼルス校]]（UCLA）に転学します。マーケティングを専攻しながら、学費を稼ぐためプロレスラーとしてデビュー。デビュー当初は父親とタッグを組み、活躍しました。UCLA卒業後はアメリカ陸軍に入隊、除隊後、プロレスラーとして本格的に活動を開始します。

北米での活躍：ベビーフェイスからヒールへの転身

1950年代後半から1960年代にかけては、カリフォルニア州を拠点に、ハンサムなベビーフェイスとして人気を博します。NAWA（後のWWA）やNWAサンフランシスコ地区などで、数々のタイトルを獲得しました。オレゴン、ワシントンといった太平洋岸北西部、さらにはハワイでも活躍し、ロード・ブレアース、サム・スティムボートらと共闘、多くの名レスラーと対戦しました。NWAパシフィック・ノースウエスト・ヘビー級王座を2度獲得するなど、西海岸で確固たる地位を築きます。また、テキサスやジョージアなど南部テリトリーでも活躍し、NWA世界タッグ王座などを獲得しました。

1970年代に入ると、ミネアポリスを本拠地とするAWA（アメリカン・レスリング・アソシエーション）に移籍します。NWA時代とは打って変わって、バディ・ロジャースの流れを汲む、傲慢でずる賢いヒールに転身します。レイ・スティーブンスとタッグを組み、ボビー・ヒーナンをマネージャーに迎え、AWAを代表する悪役として名を馳せました。1972年にはAWA世界タッグ王座を獲得。その後、1975年11月、バーン・ガニアを破りAWA世界ヘビー級王座を獲得。

AWA世界ヘビー級王者：8年以上の長期政権

AWA世界ヘビー級王者として、ニックは「ダーティ・チャンプ」として知られるようになります。反則やセコンドの乱入など、手段を選ばないファイトスタイルで、王座防衛を繰り返しました。AWAでは、ピンフォール、ノックアウト、ギブアップ以外での敗北は王座移動には繋がらなかったため、このスタイルは非常に効果的でした。宿敵であるビル・ロビンソンや、クラッシャー、マッドドッグ・バション、ディック・ザ・ブルーザーといった強豪たちを相手に、数々の名勝負を繰り広げます。WWFヘビー級王者ボブ・バックランドとのダブルタイトルマッチを行うなど、北米プロレス界を代表する存在となりました。

1980年代には、ハルク・ホーガンや、後に日本でも活躍するジャンボ鶴田、リック・マーテルといったトップレスラーたちと激闘を繰り広げます。ホーガンとは特に長く抗争を続け、そのダーティなファイトスタイルでホーガンを苦しめました。鶴田との対戦は、日本でも大きな話題となりました。AWAルールでは反則負けでも王座移動がないため、ニックは巧みにそのルールを悪用して勝利を収め続けました。しかし、PWFルールで争われた1984年のダブルタイトル戦では、ピンフォールで敗れ、王座を失います。この試合以降、ニックの評価は大きく変わり、鶴田も彼のレスリングの実力を認めました。

日本での活躍：猪木との因縁、鶴田との激闘

日本にも度々来日し、国際プロレスや全[[日本プロレス]]などで活躍しました。1964年には日本プロレスに初来日し、ジャイアント馬場＆豊登のアジアタッグ王座に挑戦。1970年には、アントニオ猪木とNWAタッグリーグ戦で対戦、延長戦にもつれ込む72分の死闘を繰り広げました。AWA世界ヘビー級王者時代には、全[[日本プロレス]]にも参戦。馬場、ドリー・ファンク・ジュニア、テリー・ファンクらNWAのトップレスラーたちと対戦しました。

鶴田とは、AWA世界ヘビー級王座を懸けて何度も対戦。AWAルールとPWFルールの違いによって、勝敗が大きく異なる結果となりました。1984年には、鶴田のインターナショナルヘビー級王座とのダブルタイトル戦で敗れ、AWA世界ヘビー級王座から陥落します。しかし、ニックのレスリングの実力は、日本でも高く評価されました。

引退後：WWE殿堂入り、レスリング界への貢献

1987年に現役を引退した後、WWF（現WWE）でロード・エージェントや解説者として活動。WWE殿堂入りを果たし、2010年にはレッスルマニアにも登場しました。2015年、アルツハイマー病により死去。NWA殿堂入りも果たしています。

ニック・ボックウィンクルは、そのダーティなファイトスタイルで知られながらも、優れたレスリング技術と紳士的な人柄で、プロレス界に大きな足跡を残しました。ヒールレスラーの代名詞として、多くのレスラーに影響を与え続け、今もなお語り継がれる伝説のレスラーです。彼の残した言葉「相手がワルツを踊れば私もワルツを踊り、ジルバを踊れば私もジルバを踊る」は、プロレスラーとしての彼の姿勢を表す名言として知られています。

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