ジェリー・グラハム

ドクター・ジェリー・グラハム：レスリング界のカリスマとその波乱万丈な生涯

ドクター・ジェリー・グラハム（1921年12月16日 - 1997年1月24日）。その名は、アメリカプロレス史に燦然と輝く、カリスマ的ヒールとして知られています。本名ジェリー・マーティン・マシューズ。アリゾナ州フェニックス出身、1925年生まれという説もある人物です。

アリゾナ州立大学では精神科医を目指し、在学中に習得した催眠術をプロレスのギミックに利用。対戦相手を眠らせるという独特のスタイルで、異名「ドクター」を手にしました。真っ赤なキャデラックを乗り回し、派手な生活を送ったことから、少年時代のビンス・マクマホンも彼に憧れていたという逸話も残っています。

1943年、ジム・ロンドスの指導の下、プロレスラーとしてデビュー。1950年代にはゴージャス・ジョージの影響を受けた金髪ヒールのレスラーとして頭角を現し、NWAジョージア地区でフレッド・ブラッシーと激しい抗争を繰り広げました。1955年にはルー・テーズのNWA世界ヘビー級王座に挑戦するなど、早くからその名を轟かせました。

1958年、WWWFの前身団体であるニューヨークのキャピトル・レスリング・コーポレーションで、エディ・グラハム（エドワード・ゴセット）と「グラハム・ブラザーズ」を結成。血縁関係はないものの、兄弟タッグチームとして、マーク・ルーイン&ドン・カーティス、レッド・バスチェン&ルー・バスチェンらとUSタッグ王座を巡り激闘を繰り広げ、1958年9月から1960年4月にかけて幾度となく戴冠しました。エディとのタッグ解消後は、アラバマ、カルガリーなど各地を転戦し、1963年に再び東部地区へ。ブルーノ・サンマルチノのWWWF世界ヘビー級王座に連続挑戦するなど、その存在感を示し続けました。

1964年には、新たなパートナーとして巨漢のルーク・グラハム（ジェームズ・グラディ・ジョンソン）をニューヨークに呼び寄せ、USタッグ王座を獲得。ボボ・ブラジル&アーニー・ラッド、ゴリラ・モンスーン&キラー・コワルスキーといった強豪チームと対戦し、1965年2月まで王座を保持しました。

1967年にWWWFを離れ、カナダのNWAオールスター・レスリングへ。アブドーラ・ザ・ブッチャーと組んでバンクーバー版NWA世界タッグ王座を獲得。ドン・レオ・ジョナサン、ロッキー・ジョンソンらと抗争を繰り広げ、ブッチャーとのコンビでNWAカナディアン・タッグ王座も獲得しました。

その後はNWAハリウッド・レスリングに進出、ボディビルダー出身のウェイン・コールマンを「ビリー・グラハム」として迎え入れ、グラハム・ファミリーとして活動。デトロイト、ジョージアなどを転戦し、1970年代中盤まで現役を続けました。

キャリア晩年は体重が増加し、140kg級の巨漢に。アルコール依存症など、精神的な問題を抱えるようになり、母親の死をきっかけに、ショットガンで病院職員を脅して遺体を盗み出すという事件を起こしたという衝撃的なエピソードも伝えられています。

1997年1月24日、脳卒中のため75歳で死去。日本マットへの参戦は叶いませんでしたが、WWE殿堂(レガシー部門)入りを果たし、その功績は今も語り継がれています。また、彼の「息子」を名乗るドクター・ジェリー・グラハム・ジュニアも存在しましたが、これはギミック上の設定でした。

ダイビング・ニー・ドロップ、ネックブリーカー、ボディ・プレスなどの得意技で観客を魅了し、数々のタイトルを獲得したドクター・ジェリー・グラハム。彼の華麗なるキャリア、そして波乱に満ちた人生は、プロレス界における不滅のレジェンドとして語り継がれ続けています。 WWE殿堂入りは、その輝かしい功績に対する最高の賛辞と言えるでしょう。

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