サーサーン朝領アルメニア

サーサーン朝領アルメニア

サーサーン朝領アルメニア（Պարսկահայաստան）は、サーサーン朝がアルメニアに対する宗主権を確立、または直接統治を行った時代を指します。この時代は、アルメニアの歴史において重要な転換期であり、政治、文化、宗教など多岐にわたる分野でサーサーン朝の影響を受けました。

歴史

サーサーン朝による最初の統治 (252年〜299年)

サーサーン朝は226年にアルダシール1世によって建国され、アルサケス朝を滅ぼしました。しかし、アルメニアではアルサケス朝による統治が続いていました。ティリダテス2世は、アルダシール1世の侵攻に抵抗しましたが、252年にシャープール1世によって征服され、彼の息子ホルミズド・アルダシールがアルメニアの大王となりました。

ホルミズドは270年までアルメニア王として君臨し、その後サーサーン朝の皇帝となりました。彼の死後、ナルセがアルメニアの大王位を条件に王位を譲り受けましたが、ナルセの対ローマ戦役での敗北により、アルメニアはローマの庇護下に入り、ティリダテス3世によるアルサケス朝の支配が復活しました。ティリダテス3世はキリスト教を国教化し、世界初のキリスト教国が誕生しました。

東アルメニア王国時代

シャープール2世の時代、サーサーン朝はローマ帝国に対して攻勢をかけ、ナルセ1世時代のアルメニアを含む失地を奪還しました。しかし、テオドシウス1世によってサーサーン朝は劣勢となり、387年にアルメニア王国は東西に分割されました。

西アルメニア王国はローマ帝国の庇護下に入り、東アルメニア王国はサーサーン朝の衛星国となりました。東アルメニア王国では、ホスロー4世が即位しましたが、後に廃位され、サーサーン朝の皇子シャープールが「アルメニア大王」となりました。その後、再びアルサケス朝から国王が輩出されましたが、428年にアルタクシアス4世が廃位され、東アルメニア王国はサーサーン朝に吸収されました。

マルズバーン時代 (428年~646年)

428年、アルメニアの貴族たちはアルタクシアス4世の廃位をバハラーム5世に請願し、王国は廃止され、マルズバーン（辺境伯）による統治が始まりました。この時代、アルメニアには高度な自治権が与えられましたが、サーサーン朝によるキリスト教徒への迫害も起こりました。

ヴァルダン・マミコニアンの反乱

ヤズデギルド2世は、キリスト教を政治的な脅威とみなし、アルメニア貴族にゾロアスター教への改宗を強制しました。これに対し、ヴァルダン・マミコニアンの指揮下でアルメニア軍が反乱を起こしましたが、アヴァライルの戦いで鎮圧されました。

ヴァハン・マミコニアンの反乱

グガルク総督のヴァルスケンは親サーサーン朝路線を取り、ゾロアスター教に改宗しましたが、妻シューシャニクを殺害したため、ヴァフタング1世によって処刑されました。その後、ヴァハン・マミコニアンはサーサーン朝に対する反乱に参加し、ネルセアパテの戦いで勝利しましたが、山中に撤退しました。しかし、ペーローズ1世がエフタルとの戦争で戦死したことで情勢が変わり、ヴァハンはバラーシュと講和し、ンヴァルサク条約を結びました。この条約により、ナハラルの自治権が認められ、キリスト教徒に対する宗教の自由が保障されました。

文化

サーサーン朝はアルメニアで硬貨を鋳造し、その多くがドビンとギュムリで発見されています。また、アルメニアの貴族は2つの派閥に分裂し、マミコニアン家が率いるアルメニア民族派と、シウニア家が率いるサーサーン朝支持派がありました。

マルズバーン時代の影響

マルズバーン時代は、アルメニアの政治、社会、文化に大きな影響を与えました。サーサーン朝の統治下で、アルメニアは自治権を維持しつつも、宗教的な迫害や文化的交流を経験しました。この時代の出来事は、その後のアルメニアの歴史に深く刻まれています。

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