バハラーム5世

バハラーム5世（バハラーム・グール）

バハラーム5世（Bahram V, 在位：420年 - 438年）は、サーサーン朝ペルシアのシャーハーンシャー（君主）です。彼は、ヤズデギルド1世の息子として生まれましたが、国外のラフム朝の都ヒーラで育ちました。その生涯は、戦いと文化、そして数々の伝説に彩られています。

生い立ちと即位

バハラーム5世は、400年頃にヤズデギルド1世とショーシャンドゥフトの間に生まれました。幼少期はヒーラのラフム朝宮廷で過ごし、ヌゥマーン1世の庇護のもと、法律、弓術、馬術などを学びました。

420年、ヤズデギルド1世が暗殺されると、バハラームはラフム朝の軍を率いてクテシフォンへ向かいました。伝えられる伝説によると、彼は二頭のライオンに対する試練を乗り越え、貴族と神官団の支持を得て王位を確立したとされています。この逸話は、彼の勇気と統治者としての資質を示すものとして語り継がれています。

治世

バハラーム5世の治世は、概ね平和でしたが、東ローマ帝国やエフタルとの間で短期間の戦争も経験しました。

東ローマ帝国との戦争

ゾロアスター教の神官団の要請に応じ、キリスト教徒への迫害を行ったことが、東ローマ帝国との戦争のきっかけとなりました。迫害から逃れたキリスト教徒が東ローマ帝国に保護を求め、テオドシウス2世がサーサーン朝への宣戦を布告しました。戦争は421年に始まりましたが、422年には和平条約が締結され、両国は信仰の自由を保証することで合意しました。

エフタルとの戦争

東ローマ帝国との戦争中に、エフタルがメルヴを占領。バハラーム5世はエフタルに歳幣を送ることを余儀なくされましたが、東ローマ帝国との和平後、エフタルに反撃し、メルヴを奪還しました。アムダリヤ川に記念碑を建立し、サーサーン朝の東部国境を確定しました。この勝利により、バハラーム5世は中央アジアにおけるサーサーン朝の支配を確固たるものとしました。

アルメニアとの関係

バハラーム5世は、アルメニアの王位にアルサケス朝のアルタクシアス4世を据えましたが、彼の不評により、貴族たちはアルメニアをサーサーン朝の直接統治下に置くよう請願しました。アルメニア教会総主教の反対にもかかわらず、428年にアルメニアはサーサーン朝に併合され、太守による統治が始まりました。

文化と伝説

バハラーム5世は、ペルシア文学において重要な人物として描かれています。フェルドウスィーの『シャー・ナーメ』や、ニザーミー・ギャンジャヴィーのロマンス叙事詩『ハフト・パイカル』に登場し、勇敢で統治者に相応しい存在として描かれています。また、狩猟への愛着や音楽家への激励など、数々の逸話が語り継がれています。

死と遺産

438年、バハラーム5世はメディアでの狩猟中に死去したと伝えられています。彼の死後、王位は息子のヤズデギルド2世に引き継がれました。バハラーム5世は、数多くの伝説や物語とともに、イランの歴史上最も有名な王の一人として記憶されています。彼の名は、セレンディピティの語源となった物語や、パンジャーブ地方の伝説にも残っています。

バハラーム5世は、その勇敢さ、美しさ、そして数々の冒険によって、イランの伝承の中で特別な地位を占めています。彼はまた、オナガー（野生のロバ）の狩人であったことから、「バハラーム・グール」とも呼ばれています。

『ハフト・パイカル』

ニザーミー・ギャンジャヴィーの『ハフト・パイカル』は、バハラーム5世の生涯を題材としたロマンス叙事詩です。物語では、バハラームが七つの地方から来た七人の王女と結婚し、それぞれの王女が住む宮殿で物語を語り合う様子が描かれています。この物語は、バハラームの冒険と愛、そして正義の追求を描いた作品として、広く親しまれています。

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