シェナンドー国立公園

シェナンドー国立公園は、アメリカ合衆国バージニア州に位置する国立公園で、ブルーリッジ山脈の一部を形成しています。公園は、シェナンドー川と渓谷、そしてバージニアピードモント台地との間に南北に細長く伸びており、その長さは約130km、面積は783平方kmに及びます。公園の約40%は原生地域として保護されており、国立原生自然保全制度の下で管理されています。公園内で最も高い山はホークスビル山で、標高は1235mです。

地理

公園は8つの郡にまたがっており、スカイラインドライブの西側にはウォーレン郡、ペイジ郡、ロッキンガム郡、オーガスタ郡が、東側にはラッパハノック郡、マディソン郡、グリーン郡、アルベマール郡があります。スカイラインドライブは、北東のフロントロイヤルから南西のウェインズボロ市まで、約169kmにわたって公園を縦断しています。

歴史

シェナンドー国立公園は1926年に認可され、1935年12月26日に国立公園として正式に設立されました。公園となる以前は、この地域は主に農地として利用されていましたが、公園設立に伴い、バージニア州は土地収用権を用いて土地を取得し、連邦政府に譲渡しました。

公園とスカイラインドライブの建設は、多くの家族やコミュニティに大きな影響を与えました。約500世帯が、長年生活の基盤としていたブルーリッジ山脈の一部を明け渡すことを余儀なくされ、特にマディソン郡、ページ郡、ラッパハノック郡の住民に大きな影響がありました。住民の多くは農業やリンゴ園で生計を立てていましたが、1930年の大干ばつによる被害に加え、国立公園の建設によって住む場所を失いました。しかし、一部の住民は、強制退去後も公園内に住むことを許され、その中には92歳で亡くなったアニー・リーブラッドリー・シェンクもいました。このような歴史的な背景には、失われたコミュニティと犠牲があったことを忘れてはなりません。

人種差別とその撤廃

1930年代初頭、国立公園局は公園施設を設計するにあたり、アフリカ系アメリカ人と白人を分離する構想を立てました。当時、バージニア州はジム・クロウ法下であり、人種差別が横行していました。当初、バージニア州はアフリカ系アメリカ人を公園から排除しようとしましたが、最終的には公園施設内で人種差別的な慣習を実施することになりました。公園内の施設は、当初白人専用で運営されており、アフリカ系アメリカ人はルイス山に設けられた施設のみ利用できました。しかし、第二次世界大戦後、国立公園局は公園内での人種差別を撤廃するよう命じ、1950年代初めには完全に統合されました。

生態学

シェナンドー国立公園の気候と生態系は、東中部大西洋岸地域の森林の山岳地帯の特徴を反映しています。公園内には多様な動植物が生息しており、南西斜面には松が、北東斜面にはカナダツガや苔が繁茂しています。その他、オーク、ヒッコリー、クリ、カエデ、ユリノキ、アメリカシャクナゲ、ツツジ、トウワタ、ヒナギク、シダ類などが豊富に見られます。かつて優勢だったアメリカグリは、クリ胴枯病によって絶滅の危機に瀕していますが、オークがその代わりを担っています。1990年代初頭からマイマイガの襲来により、オーク林の一部が被害を受けています。

公園に生息する哺乳類としては、オジロジカ、アメリカクロクマ、ボブキャット、アライグマ、スカンク、オポッサム、ウッドチャック、ハイイロギツネ、トウブワタオウサギなどが挙げられます。また、ピューマの目撃情報も報告されています。

200種以上の鳥類が公園内で繁殖しており、そのうち約30種は留鳥として一年を通じて生息しています。ハヤブサはかつて農薬の影響で減少しましたが、再導入により個体数が回復し、現在は絶滅危惧種リストから外れています。公園内には、カワマス、ロングノーズウグイ、ブラックノーズウグイ、ブルーヘッドチャブなど、32種類の魚類が生息しています。

見どころ

スカイラインドライブは、シェナンドー国立公園を代表する景観道路で、秋の紅葉シーズンには多くの観光客が訪れます。アパラチアントレイルも公園内を162kmにわたって通過しており、その他にも800km以上のハイキングトレイルが整備されています。特に人気のあるコースはオールドラグマウンテンで、岩場を登りながら絶景を楽しむことができます。乗馬、キャンプ、サイクリング、滝なども見どころです。

公園内には、790平方kmの広さを持つバックカントリーと原生地域のキャンプ場があり、キャンパーは「跡を残さない」という原則を守る必要があります。バックカントリーキャンプでは、クマなどの野生動物にも注意が必要です。食料や匂いのするものは、クマから遠ざけるために木に吊るす必要があります。

宿泊施設

キャンプ場は4月から10-11月までオープンしており、マシューズアームキャンプ場、ビッグメドウスキャンプ場、ルイス山キャンプ場、ロフト山キャンプ場、ダンゴグループキャンプ場などがあります。ロッジとしては、スカイランドリゾート、ビッグメドウスロッジ、ルイスマウンテン・キャビンがあります。

ラピダンキャンプは、ハーバート・フーヴァー元大統領の釣り場として作られた場所で、現在でもハイキングコースとして利用されています。シェナンドー国立公園は、犬に優しい公園としても知られており、ほぼすべての場所で犬を連れて行くことができます。また、公園内の川はカワマスが生息しているため、フライフィッシング愛好家に人気があります。

滝

公園内には多くの滝があり、その中でもダークホロー滝は特に人気があります。ダークホロー滝トレイルは、バードビジターセンターの近くから始まり、小川沿いを歩きながら滝を目指すコースです。ハイキング中に鳥、蝶、鹿、時にはアメリカクロクマやガラガラヘビを見かけることもあります。ストーニーマントレイルは、崖の先端で美しい景色が楽しめるコースで、特に日没時の眺めが素晴らしいです。

レンジャープログラム

公園のレンジャーは、歴史、動植物、レンジャー引率のハイキングなど、さまざまなプログラムを実施しています。これらのプログラムは、公園の自然や歴史をより深く理解するのに役立ちます。

シェナンドー国立公園は、美しい自然景観と豊かな生態系、そして歴史的な背景を持つ魅力的な公園です。訪れる際には、自然保護に配慮し、公園の魅力を存分に楽しんでください。

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