シトロエン・BX

シトロエンBX：フランスが生んだ実用性と個性を兼ね備えた名車

シトロエンBXは、フランスの自動車メーカー、シトロエンが1985年から1993年まで製造販売していたハッチバックおよびステーションワゴンタイプの乗用車です。GSAとCXの車格の間に位置づけられ、1982年のパリサロンで発表されました。11年間に渡り改良が重ねられ、前期型と後期型に大別されます。

デザインと機構：イタリアンデザインとフランス技術の融合

BXのデザインは、ランボルギーニ・カウンタックやランチア・ストラトスなどを手掛けた、イタリアのカロッツェリア、ベルトーネ社のマルチェロ・ガンディーニが担当しました。これはガンディーニのシトロエンにおける最後の作品となり、内外装ともに洗練されたデザインが特徴です。特徴的なリアハーフスカート（ZXやXMと並んでシトロエン車最後）、そして1本スポークステアリングもBXの個性を際立たせています。

ボディは軽量化のため、フロントボンネットやリアハッチゲートにFRPを採用（初期型や一部の後期型はスチール製）。車重は980kgと軽量に抑えられています。サスペンションは、シトロエン伝統のハイドロニューマティックサスペンションを採用しており、フロントがストラット式、リアがトレーリングアーム式となっています。

搭載エンジンは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが用意されました。特にプジョー製のディーゼルエンジンは、ターボディーゼルモデルにおいては、ボンネット内部のエアーダクトと空冷式インタークーラーにより高性能化が図られており、イギリスでは「ディーゼル・オブ・ザ・イヤー」を受賞するほどの高性能ぶりを発揮しました。高速道路では20km/Lを超える燃費性能も魅力でした。

バリエーション：多様なニーズに対応するモデル展開

BXには、様々なバリエーションが存在します。

ブレーク: ステーションワゴンモデル。
Dyana: 1986年にコンセプトモデルとして発表された2ドアのブレーク。市販化には至りませんでした。
16V: 1987年に発売された16バルブDOHCエンジン搭載のハイスペックモデル。フランス車として初めてDOHC機構を採用、ABSも標準装備されました。1.9L直列4気筒DOHCエンジンは、プジョー405MI16と共通のエンジンで、最高出力は158PSに達しました。
4TC: [世界ラリー選手権]グループB参戦のためのホモロゲーションモデル。2.1L直列4気筒SOHCターボエンジンを搭載し、四輪駆動システムを採用していましたが、ハイドロニューマティックサスペンションの耐久性の問題から、競技での成功は収められませんでした。現在、現存する車両は非常に少ない希少車となっています。

インテリアと実用性：広々とした空間と充実の収納

インテリアは機能的で、ロングホイールベースにより広い室内空間を実現。実用的なグローブボックスや各収納スペース、広いトランクルームを備え、1980年代のスペース効率を重視したデザインが顕著です。リアシートを折りたたむことで、さらに広い積載スペースを確保できます。また、セルフレベリング機能により、荷重によるリアの沈み込みもありませんでした。

販売と日本での人気：ベストセラーモデルとしての成功

BXは、シトロエン社史上2CVに次ぐ販売台数を記録し、ヨーロッパではフォルクスワーゲン・ゴルフIIと並ぶベストセラーモデルとなりました。ハイドロニューマティックサスペンションの信頼性向上、水冷エンジンと高出力ディーゼルエンジンの採用、使いやすさと合理的な構造などが成功要因です。

日本では、西武自動車販売、その後マツダ（ユーノス店）を通じて販売され、エグザンティアへとバトンタッチするまで長く輸入されました。4速オートマチックトランスミッション、エアコン、パワーステアリングなどを装備し、日本市場にも適した仕様が人気を博しました。現在でも、日本に最も多く輸入されたシトロエン車であり続けています。

まとめ：時代を超えて愛される名車

BXは、イタリアンデザインとフランス技術が見事に融合した、実用的で個性的な一台です。ラリーカーとしての挑戦や、様々なバリエーションモデルも魅力の一つ。現在では希少車となっている4TCなど、コレクターズアイテムとしても人気があります。その歴史と魅力は、多くの自動車ファンを魅了し続けています。

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