シャトル・マイハマ

シャトル・マイハマは、東日本旅客鉄道（JR東日本）が1990年（平成2年）から2001年（平成13年）にかけて運用した、特別な設備を備えた列車であるジョイフルトレインの一種です。この車両は、京葉線や武蔵野線で運行された同名の快速列車にも使用されました。本稿では、主にこの特徴的な鉄道車両について掘り下げていきます。

誕生の背景

1988年（昭和63年）、京葉線の南船橋駅から新木場駅間が開通し、沿線には東京ディズニーランドへの玄関口となる舞浜駅が新設されました。これに伴い、JR東日本は東京ディズニーランドへの旅客輸送需要に応えるため、田町電車区（現在の東京総合車両センター田町センター）に配置されていた167系電車を改造し、快速「メルヘン」として特別な列車を投入しました。さらに、1990年 3月10日には京葉線が東京駅まで延伸開業することになり、この延伸を機に、快速「メルヘン」とは別に東京駅から舞浜駅を経由し西船橋駅に至る新たな東京ディズニーランド利用者向けの快速列車「シャトル・マイハマ」の運行が計画されました。この新しい列車の専用車両として、幕張電車区（現在の幕張車両センター）が保有していた波動輸送用の165系電車が選ばれ、大井工場（現在の東京総合車両センター）で改造が施されて誕生したのが、シャトル・マイハマ用の車両編成です。

車両の改造内容

この車両は、既存の165系電車をベースに改造されましたが、走行性能に関わる制御機器、台車、動力装置などには大きな変更は加えられませんでした。車体構造そのものも大規模な改造は行われず、主に利用客の直接的な印象に関わる内装や外部の塗装といった部分に重点が置かれました。種車となった165系と同様に普通車扱いとされ、改造後も車両番号は変更されませんでした。

外観の特徴

先頭車両の前面は、貫通路の窓下に列車名を表示するヘッドサインが取り付けられました。前照灯と尾灯は、車両裾部の左右に新しい角型の形状のものが設置されました。側面の窓は、開口部のサイズや形状は元のままでしたが、従来の二重構造のユニット窓から一枚ガラスの固定窓に変更されました。客用扉は、各車両とも前後にデッキを伴う片開き式の2ドア配置が維持されました。

車体塗装は、白に近いクリーム色を基本とし、前面の下部全体に青色の帯が配されました。側面のクリーム色の地色の上には、前面から続く青帯の上にさらに2本の水色の帯が重ねられています。さらに、前面から側面前方にかけては、京葉線の路線カラーである赤色がアクセントとして加えられました。前面の運転席や助士席の窓周り、そして側面の窓周りは黒色に塗装され、全体のデザインを引き締めています。特に目を引くのは、2号車の車体中央に描かれた太陽をモチーフにしたイラストで、車両に遊び心あふれる個性的な印象を与えていました。

内装の特徴

車内の座席はすべて難燃性のビニールレザー張りで、各車両ごとに異なる配置と色合いが採用されました。共通の特徴として、乗客のスムーズな乗り降りを考慮し、どの座席も座面を跳ね上げることが可能な構造となっていました。

1号車: ファンタジックな雰囲気を出すため、ピンク系の配色が用いられました。劇場をイメージした内装で、床を2段にして上下段にそれぞれ1列ずつ、線路と平行に跳ね上げ式の座席が配置され、定員は48名でした。これらの座席は京葉線の走行方向で海側に向けられています。元のトイレと洗面所は撤去され、その跡にも座席が設置されました。
2号車: 冒険的なイメージを表現するため、黄色系の配色が採用されました。車両の両端部分の座席は、通路を挟んで左右にそれぞれ2列ずつ座席が配される向かい合わせのボックスシートでした。車両中央部の座席は、窓側に向けて背中合わせに配置されていました。トイレは洋式に改装されました。
* 3号車: 未来的なイメージを演出するため、青色系の配色が使用されました。全ての座席が向かい合わせのボックスシートとなっていましたが、配置は独特でした。両端の仕切り壁に近い部分では、通路を挟んで左右ともに横2列ずつの配置でしたが、車両中央部では通路を挟んで片側が横1列、もう片側が横3列という変則的な配置でした。1号車と同様に、元のトイレと洗面所は撤去され、跡に座席が設けられました。

客室内の照明は、従来の蛍光灯に代わり、窓の上部に間接照明、天井にダウンライトが新設され、暖かみのある光で車内を照らしました。間接照明の設置に伴い、通常の荷物棚は撤去されています。カーテンは改造前の車両と同様のロールアップ式が維持されました。

東京ディズニーランドへの専用列車として設定された性格上、特別なサービスも行われました。下り列車（東京発舞浜行き）と上り列車（西船橋発舞浜行き）の舞浜駅到着前には、車内で東京ディズニーランドのテーマソングをアレンジした楽曲や『ミッキーマウスマーチ』など、ディズニー関連の音楽が流されました。

実際の運用

改造された車両は引き続き幕張電車区に所属し、主に週末や春・夏休みといった長期休暇期間中に、快速「シャトル・マイハマ」専用として運用されました。運行区間は東京駅と西船橋駅の間で、途中停車駅は舞浜駅のみでした。一時期は、内房線や外房線方面への延長運転も実施されましたが、定期列車の増発や車両の輸送力不足といった要因により、数年でこの延長運転の設定はなくなりました。

1995年（平成7年）には、JR東日本長野支社に貸し出され、信越本線の長野駅と小諸駅間、大糸線の松本駅と穂高駅間を結ぶ定期普通列車としても使用されました。また、同年7月と10月に運行された「信州循環列車」では、非電化区間である小海線にも入線しました。この際は、ディーゼル機関車DD16形2両によるプッシュプル運転となり、電源供給のためにスハフ12形客車が連結されました。

その後の変遷と終焉

快速「シャトル・マイハマ」としての定期運用が終了した後、1995年 12月20日付けで車両は新潟にある上沼垂運転区（現在の新潟車両センター）へ転属し、「アルファ」と改称されました。転属当初はシャトル・マイハマ時代の塗装が概ね維持されていましたが、1996年7月に長野総合車両所へ入場し、青色を基調としたデザインに変更されました。その後、「アルファ」は新潟支社管内でのスキー列車や、ホリデー快速「アルプ」などの臨時列車として、また首都圏の臨時列車でも運用されました。しかし、次第に活躍の機会は減少し、2001年（平成13年）5月8日付けでついに廃車となりました。車両は長野総合車両所（現在の長野総合車両センター）へ回送され、解体されています。

シャトル・マイハマ