シャルル1世 (ブルボン公)

シャルル1世：百年戦争を生き抜いたブルボン公

シャルル1世（1401年-1456年）は、フランスを揺るがした百年戦争の真っ只中で活躍したブルボン公爵にしてオーヴェルニュ公爵です。1434年に父ジャン1世の後を継ぎ、ブルボン家の当主となりました。ジャン1世はアジャンクールの戦いで捕虜となり、ロンドンで亡くなったため、シャルル1世は事実上、父の死後すぐに所領の統治を引き継いでいました。母はベリー公ジャン1世の娘マリー・ド・ベリーという、当時の有力貴族の血筋を受け継いでいたのです。

シャルル1世の生涯は、百年戦争と深く結びついています。まず、1416年に母方の祖父ベリー公が亡くなると、オーヴェルニュとモンパンシエの相続問題が発生。当初は王家（ヴァロワ朝）の反対にあいましたが、1425年に相続が認められるものの、王家は課税権や裁判権などを握り続け、ブルボン家の断絶後は領地を王家に返すという条件付きでした。このことは、シャルル1世と王家との関係が常に微妙な均衡の上に成り立っていたことを示しています。

百年戦争において、シャルル1世はブルゴーニュ派に対抗するアルマニャック派に属し、フランス王シャルル7世に忠誠を誓いました。1428年に勃発したオルレアン包囲戦では、ジャン・ド・デュノワやラ・イルらと共にオルレアン救援に向かいます。しかし、1429年2月12日のニシンの戦いでは、イングランド軍の輜重隊を攻撃した際にジョン・ファストルフに反撃を受け敗北。この戦いで、シャルル1世はデュノワらとの意見対立から、独断でオルレアンから離脱するという行動に出ました。

オルレアン離脱という行動にもかかわらず、シャルル1世はその後もシャルル7世に仕え続けました。同年9月には、パリ包囲戦で苦戦していたジャンヌ・ダルクのもとに、シャルル7世からの攻撃中止命令を伝える使者として派遣されました。1430年にはコンピエーニュへ派遣され、フランスからブルゴーニュへの引き渡しを命じられるも、任務は成功しませんでした。

1435年には、アラスの和約締結のためフランス・ブルゴーニュ講和会議に、使者として参加。この講和は百年戦争の転換点となりました。しかし、シャルル7世とリッシュモン大元帥が進める軍制改革と貴族への増税に反発。宮廷がメーヌ伯シャルル4世を中心とする派閥に支配され、自身の勢力が排除されたことに激怒したシャルル1世は、1440年、デュノワやアランソン公ジャン2世らと共に、ルイ王太子を擁立して反乱（プラグリーの乱）を起こしました。しかし、リッシュモンによって反乱は早期に鎮圧され、シャルル1世は所領の一部を没収されることになります。

1456年、55歳で死去したシャルル1世の後を継いだのは、長男のジャン2世です。シャルル1世とブルゴーニュ公ジャン1世の娘アニェスとの間には、6人の息子と5人の娘が誕生しました。しかし、ブルボン家の嫡流の男系男子は、息子の代で断絶することになります。彼の生涯は、忠誠と反逆、勝利と敗北、そして常に権力闘争の渦中にあった中世フランス貴族の典型的な人生と言えるでしょう。シャルル1世の行動は、百年戦争という激動の時代におけるフランス貴族の生き様を鮮やかに描き出しています。彼の功績と失敗は、現代においても中世フランスの歴史を理解する上で重要な鍵となるでしょう。

子女:

ジャン2世（1426年 - 1488年）：ブルボン公
マリー（1428年 - 1448年）：ロレーヌ公ジャン2世妃
フィリップ（1430年 - 1440年）
シャルル2世（1434年 - 1488年）： リヨン大司教、ブルボン公
イザベル（1436年 - 1465年）： ブルゴーニュ公シャルルの2番目の妃
ルイ（1438年 - 1482年）：リエージュ司教
ピエール2世（1438年 - 1503年）：ブルボン公
マルグリット（1439年 - 1483年）：サヴォイア公フィリッポ2世の最初の妃
カトリーヌ（1440年 - 1469年）：ゲルデルン公アドルフ妃
ジャンヌ（1442年 - 1493年）：オランジュ公ジャン2世・ド・シャロン妃
ジャック（1445年 - 1468年）：モンパンシエ伯

参考文献:

ジャン＝ポール・エチュヴェリー 著、大谷暢順 訳『百年戦争とリッシュモン大元帥』河出書房新社、1991年
レジーヌ＝ペルヌー; マリ＝ヴェロニック・クラン 著、福本直之 訳『ジャンヌ・ダルク』東京書籍、1992年
樋口淳『フランスをつくった王 -シャルル七世年代記-』悠書館、2011年
* 上田耕造『ブルボン公とフランス国王 -中世後期フランスにおける諸侯と王権-』晃洋書房、2014年

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