シャンタク鳥

シャンタク鳥と外世界からの漁師：クトゥルフ神話の奇怪な生物たち

クトゥルフ神話において、多くの奇怪な生物が登場しますが、その中でも特異な存在感を示すのがシャンタク鳥と外世界からの漁師です。両者には関連性があり、本稿では両者の特徴や設定、複数の作家による解釈を踏まえながら解説します。

シャンタク鳥：ドリームランドの鱗翅類

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト（以下HPL）の小説『未知なるカダスを夢に求めて』で初登場したシャンタク鳥は、ドリームランド北方のインクアノクという、薄明かりが差し込む土地に生息する飛行生物です。

巨大な縞瑪瑙の採石場の洞窟を巣とし、象よりも大きな体躯は羽毛ではなく鱗で覆われています。馬のような頭部と、霜と硝石にまみれた翼を持ち、すりガラスをひっかくような不気味な鳴き声を発します。

ナイアーラトテップなどの旧支配者たちに仕える下級存在とされ、レンの商人によって家畜として扱われることもあるとされています。宇宙空間をも飛行できると言われ、油断した騎乗者をアザトースの玉座まで連れて行ってしまう危険性もあると伝えられています。

興味深いことに、シャンタク鳥はナイトゴーントを極端に恐れており、遭遇するとすぐに逃げてしまうという弱点を抱えています。インクアノクの巣の中央には、シャンタク鳥たちの始祖がいるとされているようですが、その詳細は不明です。

リン・カーターは、ドリームランド以外にもハイパーボリアの地底にシャンタク鳥が生息すると設定を拡張しました。また、ヴーアミ族という種族はシャンタク鳥を「外世界からの漁師」と呼び、その長を「クームヤーガ」と呼称しています。クームヤーガは単眼で一本足の姿をしており、レッサー・オールド・ワンに位置づけられる強力な存在です。

クームヤーガは黒鳥神グロス＝ゴルカ（またはゴル＝ゴロス）に仕えており、儀式において鳥の仮面をつけた神官がクームヤーガの名を詠唱する様子が描かれています。カーターはクームヤーガを最古にして最大のシャンタク鳥と表現していますが、それがインクアノクの始祖と同一の存在なのかは明確にされていません。オーガスト・ダーレスの作品では、シャンタク鳥の描写が異なっており、解釈の幅が広いことが伺えます。

外世界からの漁師：正体不明の異形

「外世界からの漁師（Fishers from Outside）」は、複数の異なる解釈が存在する謎めいた存在です。

HPLがヘイゼル・ヒールドに代作した『羽のある死神』では、ウガンダの石造遺跡をクトゥルフやツァトゥグァと共に前哨基地として使用していた正体不明の存在として登場します。詳細は不明瞭で、その正体は依然として謎に包まれています。

一方、リン・カーターの作品では、シャンタク鳥の別名として、特にハイパーボリアのヴーアミ族が用いる呼称として登場します。この場合、外世界からの漁師の長はクームヤーガであり、前述の通り強力な存在です。

クトゥルフ神話のTRPGでは、「あの世からの漁夫」と訳される場合があり、一本足の鳥の姿で描かれることもありますが、この場合シャンタク鳥とは別の種族とされ、鳥の神グロス＝ゴルカに仕える存在とされています。

関連性と解釈

シャンタク鳥と外世界からの漁師の関係性は、作家によって異なって解釈されています。同一種族とする説、別種族とする説などがあり、明確な結論は出ていません。しかし、両者とも旧支配者と関連付けられる点、ドリームランドやハイパーボリアといった異次元的な場所に生息する点など、共通点も多く、クトゥルフ神話における異形存在の多様性と謎深さを象徴する存在と言えるでしょう。

ナイトゴーントはシャンタク鳥の天敵として知られており、それぞれの支配者であるノーデンスとナイアーラトテップの敵対関係も、この生物間の関係性をより複雑なものにしています。

今後も、新たな解釈や設定が加わる可能性のある、魅力的で謎めいた存在と言えるでしょう。これらの生物に関する研究は、クトゥルフ神話の世界観をより深く理解することに繋がります。

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