ジェプツンダンバ・ホトクト

ジャブザンダムバ・ホタクト（モンゴル語: Жавзандамба хутагт, チベット語: རྗེ་བཙུན་དམ་པ་）は、モンゴル仏教における重要な活仏（転生者）の称号であり、その歴史は17世紀にまで遡ります。尊称として「ボグド・ゲゲーン」（「お聖人さま」の意）があり、1911年から1924年までモンゴルでは国家元首の称号である「ボグド・ハーン」（「聖なる王さま」の意）としても用いられました。この称号は、清朝、そして1919年には中華民国からも承認を受けるなど、その権威は国際的にも認められていました。

歴代ジャブザンダムバの事績

初代：テンペーギェンツェン

17世紀初頭、チョナン派の高僧ターラナータがモンゴルで布教活動を行いました。モンゴル人から絶大な信頼を得たターラナータは「ジェプツンダンパ」と呼ばれていました。1634年にターラナータが亡くなると、翌年、ハルハ部の有力者トゥシェート・ハーンの息子ザナバザルがその転生者とされ、法名を「ロサン・テンペーギェンツェン」と名乗りました。これがモンゴルにおける独自の法王の始まりです。

1649年、ザナバザルはチベットへ渡り、修行に励みました。当時チベットでは、グシ・ハーンの勢力下でチョナン派がゲルク派に取って代わられようとしていました。1650年、ザナバザルはパンチェン・ラマ4世から受戒し、正式に僧侶となります。その後、ダライ・ラマ5世と謁見し、ゲルク派に改宗することを条件に活仏として認められ、翌年、ゲルク派に改宗し、「ジェブツンダンパ・ホトクト1世」となりました。1657年にモンゴルへ帰還したザナバザルは、エルデネ・ゾーでチベット式の仏教を広めました。1688年、ジュンガル部のガルダン・ハーンの侵攻に際しては、清朝に救援を求め、以降、清朝との間に冊封関係を結ぶことになります。

1691年、ザナバザルは康熙帝から「ホトクト大ラマ」の称号を授与され、ハルハ地方における宗教的、政治的指導者としての地位を確立しました。以降、ジャブザンダムバの名跡は、清朝による冊封とダライ・ラマの追認という形で継承されることになりました。

第8世

20世紀初頭、ジャブザンダムバ・ホトクト8世（ボグド・ハーン）を君主とするボグド・ハーン政権が成立しました。1920年にモンゴル人民党が政権を掌握した後も、8世は1924年に亡くなるまで君主の座にありました。彼の治世は、モンゴルの歴史において重要な時期であり、その影響は現代にも及んでいます。

第9世

ジャブザンダムバ9世は、1932年にカムのリタンで誕生し、4歳の時にチベット摂政政府によって活仏と認定されました。この認定は、ジャブザンダムバの転生が、チベット仏教の伝統と密接に結びついていることを示しています。

第10世

2023年3月20日、インドのダラムサラで、ダライ・ラマ14世によってジャブザンダムバ10世が発表されました。彼はアメリカ生まれの少年であり、ジャブザンダムバの転生がグローバルな広がりを持つことを象徴しています。

歴代のジャブザンダムバ

歴代のジャブザンダムバは、モンゴルの歴史と宗教において重要な役割を果たしてきました。彼らは、仏教の教えを広め、モンゴルの人々の精神的な支えとなり、時には政治的なリーダーシップを発揮しました。その存在は、モンゴル文化の重要な一部であり、今日でも深く尊敬されています。

脚注

ジャブザンダムバは、モンゴルにおける仏教の発展と、チベットとの密接な関係を物語る重要な存在です。彼らの活動は、モンゴルの歴史、文化、宗教を理解する上で不可欠な要素となっています。

関連項目

モンゴルの大統領：初代大統領としてボグド・ハーン（ジャブザンダムバ・ホトクト8世）が数えられることがあります。
チンギス統原理：初代ジャブザンダムバがハーンの息子であり、チンギス・ハーンの血統を受けているとされています。

外部リンク

Khalkha Jetsun Dampa Rinpoche公式ウェブサイト - ウェイバックマシン （2011年9月28日アーカイブ分） （英語）
Zanabazarオンラインバイオグラフィ - ウェイバックマシン （2006年1月2日アーカイブ分） （英語）

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