ジェームズ・コンロン

ジェームズ・コンロン（James Conlon, 1950年3月18日 - ）は、アメリカ合衆国出身の著名な指揮者です。現在はヨーロッパを拠点に活動しており、管弦楽曲とオペラの両分野でその才能を発揮しています。特に、ポスト・マーラー世代と称される「音楽版ユーゲントシュティール」の作曲家たちの再評価に熱心に取り組んでいることで知られています。

生い立ちとキャリア初期

ニューヨークのマンハッタンで生まれたコンロンは、カトリック信者の家庭で育ちました。父親はアイルランド系、母親はドイツ人とイタリア人の血を引いています。裕福とは言えない環境でしたが、両親は教育に熱心で、息子の知的好奇心と音楽への情熱を強く支持しました。フィオレロ＝ラガーディア音楽学校を卒業後、ジュリアード音楽院で指揮を学びました。

1971年、スポレート音楽祭でムソルグスキーのオペラ《ボリス・ゴドゥノフ》を指揮し、プロとしてのキャリアをスタートさせました。翌年には、マリア・カラスの推薦により《ラ・ボエーム》を指揮し、ニューヨークデビューを果たしました。

1974年には、ピエール・ブーレーズに招かれ、ニューヨーク・フィルハーモニックと初共演を果たしました。その後は、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、ピッツバーグ交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ミネソタ管弦楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニック、ワシントン・ナショナル交響楽団など、北米およびヨーロッパの主要なオーケストラに客演しました。

オペラ界での活躍

1976年、メトロポリタン歌劇場にデビューし、同歌劇場との長期的な協力関係を築きました。200回以上も出演し、イタリア、ドイツ、フランス、ロシア、チェコのオペラ作品を指揮しています。その後も、スカラ座、ロイヤル・オペラ・ハウス、シカゴ・リリック・オペラなど、著名な歌劇場で指揮を執りました。

主要なポストと音楽祭での活動

1983年から1991年まで、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務めました。1989年から2002年までは、ケルン市の総合音楽監督として、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団とケルン歌劇場の音楽監督を兼任しました。1995年から2004年まではパリ国立オペラの音楽監督も務め、350回の公演で32作品を指揮しました。この期間中には、パスカル・デュサパンの《Perelá, l'Homme de Fumèe》の世界初演や、ツェムリンスキーの《小人 Der Zwerg》のフランス初演、ドヴォルザークの《ルサルカ》のパリ初演、ムソルグスキーの《ホヴァーンシチナ》のパリ国立オペラにおける初演などを手がけました。

ヨーロッパ各地では、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、シュターツカペレ・ドレスデン、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、バーミンガム市交響楽団、パリ管弦楽団、フランス国立管弦楽団、ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団、マリインスキー劇場管弦楽団など、数多くの名門オーケストラを指揮しました。また、合唱指揮者としては、1979年から「シンシナティ5月祭」の音楽監督を務めています。2005年にはラヴィニア音楽祭の音楽監督に、2006年からはロサンゼルス・オペラの音楽監督にも就任しました。

ナチス犠牲作曲家の再評価

コンロンは、ナチス・ドイツの犠牲となった作曲家たちの作品の再評価に力を注いでいます。これらの作曲家の作品を、欧米のオーケストラと共に積極的に取り上げてきました。特に、ツェムリンスキー、シュレーカー、ヴィクトル・ウルマン、パヴェル・ハース、ボフスラフ・マルティヌー、コルンゴルト、カール・アマデウス・ハルトマン、エルヴィン・シュルホフといった作曲家たちの作品に対する卓越した解釈は、高く評価されています。

メディア出演と受賞歴

2002年から2003年にかけて、PBSの特別番組「協奏曲」で6時間のメイン司会者を務めるなど、同局の音楽番組にも頻繁に出演しています。

1999年には、ツェムリンスキー作品の国際的な普及に貢献したとして、ツェムリンスキー賞の最初の受賞者となりました。1996年にはフランス政府から勲章を授与され、2002年9月には当時の大統領ジャック・シラクからレジオンドヌール勲章を授与されています。

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