ジェームズ・サマヴィル

サー・ジェームズ・フォウンズ・サマヴィル元帥：イギリス海軍の知略と勇気

サー・ジェームズ・フォウンズ・サマヴィル（1882年7月17日-1949年3月19日）は、イギリス海軍を代表する提督の一人であり、第二次世界大戦においてその卓越した戦略眼と決断力を見せつけました。本稿では、彼の波瀾万丈な生涯と、歴史に刻まれた数々の戦いを振り返ります。

海軍への道と初期の経歴

サマヴィルはイングランドのサリー州ウェイブリッジに生まれました。父はニュージーランドで羊の牧畜に従事した経験を持つ人物でした。1897年、士官候補生としてイギリス海軍に入隊、その後着実に階級を上げ、無線技術の専門家としても頭角を現します。第一次世界大戦ではガリポリの戦いに参加し、殊勲記章（DSO）を受章しました。戦後は海軍本部の信号部長や国防大学の教官を歴任し、着実にキャリアを積んでいきます。スペイン内戦では、マヨルカ島の共和国軍への支援活動にも携わっています。1938年には東インド艦隊司令官に就任しますが、健康上の理由（結核と推測されています）で退役を余儀なくされました。

第二次世界大戦での活躍：メルス・エル・ケビールから東洋艦隊へ

1939年末、サマヴィルは現役へ復帰。第二次世界大戦の勃発を海軍本部で迎えました。ダンケルク撤退作戦では重要な役割を果たし、その後、ジブラルタルを拠点とするH部隊司令官に任命されます。ここで彼を待ち受けていたのは、極めて困難な決断を迫られる任務でした。フランスとの休戦協定締結後、チャーチル首相から、停泊中のフランス艦隊を無力化する、あるいは必要ならば撃滅するという命令を受けたのです。

チャーチルからの痛烈な命令文にもあるように、サマヴィルはかつての同盟国に対する攻撃という、イギリスの提督として前例のない苦渋の決断を迫られました。彼は個人的な躊躇を抱えながらも、メルス・エル・ケビール海戦でフランス艦隊を攻撃、戦艦ブルターニュを撃沈するなど大きな損害を与えました。この作戦は成功裏に終わりましたが、サマヴィルは後に妻への手紙の中で、攻撃に手心を加えたことを明かしています。この作戦の是非は現在でも議論が続いていますが、その複雑な状況下でのサマヴィルの苦悩を想像せずにはいられません。

その後、サマヴィルはH部隊を率いてジェノヴァ砲撃やビスマルク追撃戦に参加し、重要な役割を果たしました。マルタ島やエジプトへの輸送船団の護衛任務でも活躍、1941年には大英帝国勲章KBEを受勲しています。

1942年3月、サマヴィルは東洋艦隊司令長官に就任。シンガポール陥落後、セイロン島を拠点としていましたが、その安全性を危惧し、モルディブのアッドゥ環礁への前進基地建設を命じました。セイロン沖海戦では、日本機動部隊による空襲を受け、軽空母と重巡洋艦を失うという痛手を受けながらも、日本艦隊への反撃を試みました。

1944年以降は増援を得て攻勢に転じ、日本占領下のオランダ領東インドへの空襲作戦を展開。イギリス海軍航空隊の将兵は、この経験を太平洋での作戦に役立てることとなりました。同年8月、東洋艦隊司令長官をブルース・フレーザーに譲り、ワシントンD.C.の英海軍本部代表団代表に就任。アメリカ海軍のアーネスト・キング司令長官と良好な関係を築いたことは特筆に値します。

人物像と晩年

サマヴィルは気性が激しく、周囲に敵を作りやすい面がありました。しかし一方で、人情味あふれる人物でもありました。出撃する艦載機パイロットたちの運命を案じ、アーク・ロイヤル艦載機への同乗を繰り返したエピソードは、彼の深い人間性を示しています。

1945年5月、海軍元帥に任命され、戦後現役を退きました。その後、サマセット州知事を務め、1949年3月19日に死去しました。

サー・ジェームズ・フォウンズ・サマヴィルは、卓越した戦略家であり、勇敢な指導者でした。彼の生涯と功績は、イギリス海軍の歴史に永遠に刻み込まれるでしょう。彼の苦悩と決断は、現代においても我々に多くの示唆を与えてくれることでしょう。

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