ジャカピル

ジャカピル（Jakapil）

ジャカピル（学名: Jakapil kaniukura）は、アルゼンチンのカンデレロス層で発見された装盾類の恐竜の一属です。属名はテウェルチェ語で「盾を持つ者」を意味する"Ja-Kapïl"に由来し、これはThyreophora（装盾類）という名前と同様の意味を持っています。

発見と命名

2012年、マリルアン家の所有地でホロタイプ標本（MPCA-PV-630）が発見されました。この標本は、いくつかの皮骨と完全な下顎を含む部分骨格で構成されており、2014年から2020年にかけて発掘されました。プレパレーションはL. PazoとJ. Kaluzaによって行われました。
種小名の"kaniu"（とさか）と"kura"（石）は、マプチェ語に由来し、下顎下部の腹側への峰状の突出にちなんで名付けられました。

形態

ジャカピルは、他の装盾類には見られない特徴をいくつか持っています。例えば、

前歯骨の存在（他の基盤的な装盾類には存在しないか軟骨状）
低く平らな円盤状の皮骨
* スクテロサウルスに似た二足歩行の姿勢

などが挙げられます。

全長は1.5メートル未満、体重は4.5～7キログラムと推定されています。ホロタイプの化石は幼体ではありませんが、完全に成長しきっておらず、性的にも成熟していなかった可能性が高いです。

分類

ジャカピルの系統的位置は、研究者によって見解が分かれています。当初は、基部系統の鳥盤類、装盾類、曲竜類に見られる特徴の組み合わせから、装盾類とされていました。Riguettiらは、ジャカピルがこれまで知られていなかった装盾類の分岐群に属するとし、この分岐群はジュラ紀前期に他の装盾類から分岐した可能性があると示唆しました。後期白亜紀に発見されたことは、長いゴーストリネージの存在を示唆しています。

しかし、一部の研究者はジャカピルが装盾類に属することに異論を唱えています。彼らは、ジャカピルの皮骨は他の装盾類に見られない特徴を示しており、前上顎骨に歯がないことも装盾類としては珍しいと指摘しています。歯骨の形状と深さは基盤的な新角竜類に似ており、歯の形態も他のどの鳥盤類とも異なっていることから、ジャカピルは装甲を持つ周飾頭類、あるいは未知の非装盾類の分岐群に属する可能性が高いと結論付けています。

2024年、Fonsecaらはこれまでの系統解析とステゴウロスとの解剖学的比較に基づき、装盾様類であるジャカピルを曲竜類に分類し、具体的にはEuankylosauriaとパラアンキロサウルス類の姉妹群に位置づけました。Fonsecaらは、ジャカピルは16段階の追加の工程が必要だったため、角竜類や周飾頭類である可能性は低いと主張しています。

古生物学

Riguettiらは、ジャカピルのまっすぐで狭い鼻先から、葉を剪断するのではなく、咀嚼によって硬い植物を処理していた可能性が高いと示唆しています。

古環境

ジャカピルの化石が発見されたカンデレロス層は、ココルコム砂漠と呼ばれる古代の砂漠に存在していたオアシスと考えられています。この地層からは、ムカシトカゲ目のTikaとプリオフェノドン、ヘビのナジャシュ、哺乳類のCronopio dentiacutusen、獣脚類のアルナシェトゥリ、ブイトレラプトル、エクリクシナトサウルス、ギガノトサウルス、竜脚類のアンデサウルス、リメイサウルスなど、様々な生物の化石が発見されています。これらの化石は、ゴンドワナ大陸西部の白亜紀の生態系を解明する上で重要な情報源となっています。

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