ジャン＝ピエール・ポネル

ジャン＝ピエール・ポネル（1932年2月19日 - 1988年8月11日）は、フランスを代表するオペラ演出家であり、その革新的な演出で20世紀後半の舞台芸術に大きな影響を与えました。

生涯とキャリアの初期

パリで生まれたポネルは、哲学、芸術、歴史を学び、舞台美術家としてキャリアをスタートさせました。1952年、ドイツでハンス・ヴェルナー・ヘンツェの『孤独大通り』の舞台美術を手掛けたのがその始まりです。演出家、舞台美術家、衣装デザイナーとして多才な才能を発揮したジョルジュ・ヴァケヴィッチから大きな影響を受けました。

演出家としての成功

ポネルが初めて演出を手掛けたのは、1962年にデュッセルドルフで行われたリヒャルト・ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』でした。1981年のバイロイト音楽祭で同作品を演出し、その美しさは賞賛を浴びました。

彼はメトロポリタン歌劇場やサンフランシスコ歌劇場など、世界中の歌劇場で数々の作品を手掛けました。ミレッラ・フレーニと若き日のプラシド・ドミンゴが出演した1974年のテレビ用映像『蝶々夫人』、カール・ベームが指揮したオペラ映画『フィガロの結婚』は、彼の代表作として知られています。また、1969年にケルンでモーツァルトの『皇帝ティートの慈悲』を演出し、この作品が上演レパートリーとして再評価されるきっかけを作りました。ザルツブルク音楽祭にも頻繁に登場し、その才能を発揮しました。

賛否両論を呼んだ演出

ポネルの演出は、しばしば論争の的となりました。コヴェント・ガーデンでの『ドン・パスクワーレ』の演出は成功を収めたものの、1986年の『アイーダ』では、バレエダンサーの代わりに少年たちを登場させたことでブーイングを浴び、再演されることはありませんでした。彼の作品解釈に対する評価は分かれることがありました。

突然の死

1988年、ズービン・メータが指揮するイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団との『カルメン』のリハーサル中にオーケストラピットへ転落するという事故に見舞われました。その後、肺血栓塞栓症を発症し、ミュンヘンで亡くなりました。遺体はパリのペール・ラシェーズ墓地に埋葬されています。

家族と親族

ポネルの息子は指揮者のピエール＝ドミニク・ポネル、甥はフランスのギタリストで音楽プロデューサーのジャン＝ピエール・ダネルです。

映像作品

ポネルは数多くのオペラ作品を映像化しており、その一部はDVDで鑑賞することができます。

ヒンデミット：『カルディヤック』
マスネ：『マノン』
モンテヴェルディ：『オルフェオ』
モンテヴェルディ：『ウリッセの帰還』
モンテヴェルディ：『ポッペーアの戴冠』
モーツァルト：『ポントの王ミトリダーテ』
モーツァルト：『イドメネオ』
モーツァルト：『フィガロの結婚』
モーツァルト：『コジ・ファン・トゥッテ』
モーツァルト：『魔笛』
モーツァルト：『皇帝ティートの慈悲』
プッチーニ：『蝶々夫人』
ロッシーニ：『アルジェのイタリア女』
ロッシーニ：『セビリアの理髪師』
ロッシーニ：『チェネレントラ』
ヴェルディ：『リゴレット』
* ワーグナー：『トリスタンとイゾルデ』

これらの映像作品は、ポネルの演出の魅力を今に伝える貴重な記録となっています。

ジャン＝ピエール・ポネルは、常に新しい表現を追求し、オペラの可能性を広げた演出家でした。彼の作品は、今もなお世界中の観客を魅了し続けています。

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