ジャン＝ルー・ダバディ

ジャン＝ルー・ダバディ：多才なフランスの芸術家

ジャン＝ルー・ダバディ（Jean-Loup Dabadie、1938年9月27日 - 2020年5月24日）は、フランスを代表する小説家、劇作家、ジャーナリスト、脚本家、そして作詞家として、その名を広く知られています。彼は、ミシェル・ポルナレフ、セルジュ・レジアニ、ジュリアン・クレール、ミシェル・サルドゥーなど、数多くのシャンソン歌手に約350曲もの歌詞を提供し、また、ギイ・ブドスやミュリエル・ロバンといったユーモリストのために約200編の寸劇を執筆しました。映画界においても、クロード・ソーテ監督の『すぎ去りし日の…』、『夕なぎ』、『ギャルソン』、クロード・ピノトー監督の『平手打ち』、フランソワ・トリュフォー監督の『私のように美しい娘』、ジャン・ベッケル監督の『再会の夏』など、数々の名作の脚本を手がけました。2008年には、大衆文化の分野から初めてアカデミー・フランセーズの会員に選出されるという栄誉に輝きました。

生涯

幼少期と教育

ジャン＝ルー・ダバディは1938年、パリで生まれました。父親のマルセル・ダバディもまた作詞家・劇作家であり、モーリス・シュヴァリエやジャック兄弟などのために歌詞や台詞を書いていました。第二次世界大戦中、父親が出征し捕虜となったため、ダバディは母親とともにグルノーブル近郊で祖父母に育てられました。戦後、両親はパリで生活を再開しましたが、ダバディは祖父母のもとで育ち、特に音楽好きの祖父から大きな影響を受けました。

1950年、パリに戻りリセ・ジャンソン＝ド＝サイイに入学。幼い頃から文学に親しみ、14歳でバカロレアを取得し、リセ・ルイ＝ル＝グランのグランゼコール準備級に進学しました。ソルボンヌ大学では文学の学士号を取得しています。18歳の時には、ジャン・ヴィラールが主宰するアヴィニョン演劇祭の国立民衆劇場（TNP）で研修生として演劇の世界に触れました。

小説家・ジャーナリストとしての活動

リセ時代から小説を書き始め、19歳で最初の小説『乾いた眼』を出版。翌年には第二作『家庭の神々』を発表しました。これらの作品が雑誌『アール・ゼ・スペクタクル』の編集部の目に留まり、同誌に寄稿を開始。その後、ピエール・ラザレフに才能を見出され、『ヌーヴォー・カンディッド』や『テル・ケル』といった雑誌にルポルタージュや美術評論を寄稿し、ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。

劇作家としての才能開花

1963年、兵役中にアルジェリア出身のユーモリスト、ギイ・ブドスの演技に感銘を受け、彼のために寸劇を執筆。これがブドスの代表作となり、ダバディは以後、生涯にわたってブドスのために作品を書き続けました。また、ミュリエル・ロバンやシルヴィー・ジョリーなど、多くのコメディアンのために約200編の寸劇を執筆しています。テレビ番組の制作にも携わり、映画の台詞も手掛けるなど、多岐にわたる活躍を見せました。

1967年、28歳の時に最初の戯曲『深紅の家族』が上演されたことを機に、本格的に「スペクタクル」のための作品を創作することを決意しました。

脚本家としての成功

クロード・ソーテ監督との出会いは、ダバディの映画界における地位を確固たるものにしました。『すぎ去りし日の…』を皮切りに、『はめる / 狙われた獲物』、『夕なぎ』、『ギャルソン』など、数々の名作で脚本を手がけました。また、クロード・ピノトー監督の『平手打ち』や、フランソワ・トリュフォー監督の『私のように美しい娘』などの脚本も担当しています。

作詞家としての輝かしい足跡

作詞家としても、数多くのヒット曲を生み出しました。セルジュ・レジアニの「マリー・シュヌヴァンス」、ミシェル・ポルナレフの「渚の想い出」、「愛の休日」、「天国への道」、「フランスへの手紙」など、彼の作詞した楽曲は世界中で愛されています。その他、イヴ・モンタン、レジーヌ、ジョニー・アリディ、ミシェル・サルドゥー、ジュリアン・クレールなど、多くの有名歌手に歌詞を提供しました。

アカデミー・フランセーズ会員としての栄誉

2008年、ダバディは大衆文化の分野から初めてアカデミー・フランセーズの会員に選出されました。これは、彼の多岐にわたる才能と、フランス文化への貢献が認められた結果と言えるでしょう。

死去

2020年5月24日、パリで逝去。81歳でした。彼の遺作となったジョルジュ・シムノンの小説『緑の鎧戸』の脚色は、ジェラール・ドパルデューの出演で映画化される予定でした。故郷であるイル・ド・レで家族葬が執り行われ、同地に埋葬されました。

受賞と栄誉

アカデミー・フランセーズのジャン・ル・デュック賞（1972年、1974年、1983年）
アカデミー・フランセーズの映画大賞（1983年）
SACEM大賞（ユーモア部門、1984年、フランス・シャンソン大賞、2000年）
脚色家のモリエール（1987年）
フランス語レーモン・ドゥヴォス賞（2004年）
劇作家・作曲家協会のアンリ・ジャンソン賞（2004年）
ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジーク名誉賞（2009年）
レジオンドヌール勲章コマンドゥール
国家功労勲章オフィシエ
芸術文化勲章コマンドゥール

ジャン＝ルー・ダバディは、その卓越した才能と幅広い活動によって、フランス文化に多大な貢献を果たした、まさに多才な芸術家でした。

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