ジュノー (小惑星)

ジュノー（3 Juno）は、太陽系の主要な小惑星帯に存在する天体の一つです。1804年 9月1日、ドイツの天文学者カール・ハーディングによって、ニーダーザクセン州のリリエンタールで発見されました。発見された小惑星としては3番目にあたるジュノーは、当初は惑星とみなされていましたが、1850年代に入ると他の多くの発見天体とともに小惑星として再分類されました。

名称と記号

この小惑星の名前は、ローマ神話における主神ユーピテルの妻であり、最大の女神であるユーノーに由来します。名称は国や言語によって異なり、例えばイタリアではGiunone、フランスではJunon、ロシアではYunonaと呼ばれます。また、ギリシア神話では対応する女神がヘーラーであるため、Hera（3 Ήρα）と呼ばれることもあります。中国語圏では、ユーノーが結婚の神であることから「婚神星（hūnshénxīng）」として知られています。かつて惑星記号として⚵という特殊な文字が用いられたこともあり、現在ではあまり一般的ではありませんが、稀に見られることがあります。

特徴

ジュノーは、小惑星帯の中では比較的大きな天体の一つであり、規模としては11番目に位置します。また、S型小惑星という分類の中ではエウノミアに次ぐ大きさです。小惑星帯全体の質量の約1%を占めると推定されていますが、最大の小惑星であるケレスと比較すると、その質量はケレスの約3%程度とかなり小さいことが分かっています。ジュノーは約4.36年かけて太陽の周りを公転しており、小惑星帯の中で共通の軌道特性を持つジュノー族に属するとされています。

ジュノーの注目すべき物理的特徴の一つは、S型小惑星としては異常に高いアルベド（光の反射率）を持つことです。これは、その表面の物質構成や構造が他のS型小惑星とは異なる可能性を示唆しています。この高い反射率のため、たとえ小惑星帯という太陽から比較的離れた位置にあっても、観測時には高い視等級で捉えることができます。最も条件が良い衝の際には視等級が7.5等級に達することもあり、これは海王星やその衛星タイタンよりも明るいため、ジュノーはヒギエアやエウロパ、ダビダ、インテラムニアといった他の大型小惑星よりも早期に発見されました。衝の時期であれば双眼鏡での観測も可能であり、離角が少しあっても、3インチ（約7.6cm）程度の小望遠鏡でその姿を確認することができます。

軌道についても興味深い特徴があります。ジュノーの太陽からの平均距離は、ケレスやパラスよりもわずかに太陽に近い位置にあります。軌道傾斜角は約12度と比較的傾いており、軌道離心率は冥王星と同程度か、わずかにそれを上回る楕円軌道を描いています。この高い離心率のため、太陽に最も近づく近日点ではベスタよりも太陽に近く、最も遠ざかる遠日点ではケレスよりも太陽から遠くなります。ジュノーは、1854年に33 ポリヒムニアが発見されるまで、既知の天体の中で最も軌道離心率が大きい天体でした。現在でも、直径が200kmを超える天体でジュノーより大きな軌道離心率を持つのは、324 バンベルガのみとされています。

自転については、赤道傾斜角が約50度と傾いており、順行（公転と同じ方向）で自転しています。表面温度は、太陽に面している部分で最も高くなり、過去の観測では最高で301K（約28℃）と推定されています。

分光観測の結果からは、ジュノーがカンラン石や輝石といった鉄を含むケイ酸塩を主成分とする石質隕石であるコンドライトの母天体である可能性が示唆されています。また、赤外線による観測画像からは、直径約100kmに及ぶ大きなクレーターが存在することが明らかになっており、これは過去の巨大な衝突痕と考えられています。

観測史

ジュノーは、小惑星としては初めて恒星の掩蔽（えんぺい：手前を通過して星の光を隠す現象）が観測された天体としても知られています。これは1958年2月19日に発生しました。その後も多くの恒星掩蔽が観測されており、特に1979年12月11日の掩蔽では、18名の観測者によって詳細な観測が行われました。近年では、2013年7月29日や翌30日にも恒星掩蔽が観測されています。

ジュノーの質量をより正確に推定するために、火星の軌道や表面を調査する探査機からの無線追跡データを利用し、火星の運動にジュノーが与えるわずかな摂動（重力による影響）を解析する試みも行われています。

1996年には、ウィルソン山天文台のフッカー望遠鏡に補償光学システムを応用して、可視光および近赤外線領域での画像観測が実施されました。この観測により、ジュノーのやや不規則な形状や、表面におけるアルベドのばらつきといった詳細な情報が得られました。

さらに、2014年 10月19日には、アルマ望遠鏡を用いて4時間にわたる電波観測が行われ、連続画像が得られました。この観測でもジュノーの不規則な形状が確認されただけでなく、電波の反射率の変化から、表面を覆うレゴリス（微細な岩石や塵）が一様ではない可能性が指摘されています。

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