ジョルジュ・バルビエ

ジョルジュ・バルビエ（George Barbier、1882年10月16日 - 1932年3月16日）は、20世紀初頭のフランスを代表するイラストレーターの一人です。彼は、アール・デコ様式を基調とした洗練されたイラストレーションで知られ、その作品は、当時の流行であったジャポニスム（日本趣味）やシノワズリ（中国趣味）の影響を受けつつも、独自の優美な世界観を確立しました。

バルビエは、フランスのナントで裕福なブルジョワの家庭に生まれました。ナントは、大陸貿易で栄えた歴史ある都市であり、木版画家のオーギュスト・ルペールやその弟子のジャン・エミール・ラブルールといった芸術家を輩出しています。

1908年、バルビエはパリに移り、エコール・デ・ボザール（国立美術学校）で美術を学びました。1909年には、セルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュス（ロシア・バレエ団）の公演を鑑賞し、その革新的な舞台芸術に大きな影響を受けました。特に、アンナ・パヴロワやヴァーツラフ・ニジンスキーといった才能あふれるダンサーや、レオン・バクスト、アレクサンドル・ブノワが手掛けた舞台装置に強く惹かれました。

1911年、パリで個展を開催し、その才能を世に知らしめました。その後、1913年には『ニジンスキー』、1914年には『タマル・カルサヴィナ』といった作品集を発表し、バレエの世界を題材にしたイラストレーションで高い評価を得ました。

同時期、バルビエは、ギリシア趣味やロシア・バレエに加え、ファッションモードにも深い関心を寄せていました。彼は、1912年創刊のファッション雑誌『ジュルナール・デ・ダーム・エ・デ・モード』や『ガゼット・デュ・ポン・トン』に定期的にイラストレーションを掲載し、ファッションイラストレーターとしてもその名を広めていきました。

1914年には、高級ファッション雑誌『モード・エ・マニエール・ドージュルデュイ』でイラストレーションの連載を開始し、アール・デコ様式のファッションイラストを確立しました。彼の描く、洗練された女性像は、当時の人々の憧憬の的となりました。

1920年代には、エルテとともに舞台や映画の衣装、舞台装置のデザインにも進出し、その多才ぶりを発揮しました。1929年には、フランスの雑誌『イリュストラシオン』で連載を担当するなど、キャリアの頂点を迎えます。しかし、その活動は、ジャンルが限定的であったため、美術史においては長く軽視されてきたという見方もあります。

1932年、バルビエは49歳という若さでこの世を去りました。彼の作品は、現在ではアール・デコを代表するイラストレーションとして再評価され、その洗練された美意識は、現代のアーティストにも影響を与え続けています。バルビエは、ナントのミゼリコルド墓地に埋葬されています。

関連書籍
『バルビエ・コレクション』全3巻 鹿島茂編・解説、リブロポート、1992-1994年
『ジョルジュ・バルビエ画集　永遠のエレガンスを求めて』 鹿島茂解説、六耀社、2008年

関連項目
アール・デコ
アール・ヌーヴォー
栗林誠一郎 - Barbierとして活動した人物で、彼にインスパイアされた歌手という形式で設定。

外部リンク
Art Deco Prints and Posters
Artophile
ジョルジュ・バルビエ「ニジンスキー」 - ウェイバックマシン
* ジョルジュ・バルビエ George BarbierーLittleDream vintage and romantic images

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