SENIT

SENIT：フランス海軍の戦術情報処理システム

SENIT（Système d'Exploitation Navale des Informations Tactiques）は、フランス海軍が運用する戦術情報処理システムです。1963年の開発開始以来、幾世代にもわたる進化を遂げ、フランス海軍の戦力近代化に大きく貢献してきました。本稿では、SENITの各世代における特徴や技術的な進化について詳細に解説します。

第一世代

初期のSENIT開発は、アメリカの海軍戦術情報システム（NTDS）を参考に、1963年から開始されました。米UNIVAC社の協力を得て、フランス海軍プログラム業務隊（CPM）によって開発が進められ、NTDSの影響を色濃く受け継いでいます。ただし、SENITは武器管制機能を統合している点がNTDSと異なり、日本のOYQシリーズやイギリスのADAWSにも類似性が見られます。

SENIT 1: 最初のSENITシリーズで、AN/USQ-20を使用。シュフラン級駆逐艦に搭載され、1967年7月より運用開始されました。
SENIT 2: NTDSと同様にCP-642コンピュータとUYA-4コンソールを使用し、西ドイツとの共同開発が行われました。シュルクーフ級駆逐艦への搭載後、防空強化改装型（ケルサン級）ではコンピュータ3基化やデジタル式射撃指揮装置への転換などが行われました。クレマンソー級航空母艦にも搭載され、その後、デュプレ級駆逐艦、シュフラン級にも搭載されました。シュフラン級への搭載システムは、10基のコンソールと128目標処理能力を備えています。
SENIT 3: UNIVAC-1230コンピュータを採用した改良型で、トゥールヴィル級駆逐艦に搭載されました。10基の戦術コンソールとPLAD自動作図台を搭載し、128目標を処理可能でした。

第二世代

第二世代では、フランス国産ハードウェアへの転換が図られました。

SENIT 4: フランス製IRIS 55M (P2MS) コンピュータと16インチCRTディスプレイを採用。ジョルジュ・レイグ級駆逐艦に搭載されました。7基のコンソール、各130目標表示能力、2基のE8000自動作図台を備えています。
SENIT 5: 6000トンから2000トン級フリゲート向けに開発されましたが、開発は中止となり、後に輸出用のTAVITACシリーズへと発展しました。
SENIT 6: カサール級駆逐艦に搭載。複数コンピュータによるネットワーク化システムで、6基の15M/125X小型コンピュータが1メガビット毎秒のネットワークで接続されています。1基の予備とリンク16対応のための追加1基を含め、合計7基のコンピュータが使用されています。目標情報の管理、センサー情報処理、目標脅威度評価、広域防空、電子戦、リンク11など、各コンピュータがそれぞれの役割を担っています。400目標の処理能力、11基の1人用コンソール、1基の2人用コンソール、2基のE8000自動作図台を搭載。アトランティック2対潜哨戒機にも派生型が搭載されました。
SENIT 7: TAVITAC 2000のフランス海軍呼称で、ラファイエット級フリゲートに搭載されました。

第三世代

第三世代では、オープンアーキテクチャ化が実現しました。

SENIT 8: オープンアーキテクチャを採用し、原子力空母「シャルル・ド・ゴール」とフォルバン級駆逐艦に搭載されました。「シャルル・ド・ゴール」搭載システムは、ヒューレット・パッカード社製PA-RISCコンピュータ8基をメインコンピュータとし、冗長性を確保したイーサネット接続で構成されています。指揮統制、センサー管理、武器管理、戦術データ・リンクといった機能を分担し、AdaとC++で記述されたソフトウェアが稼働しています。24基のCSEE-ディフェンス・カリスト・ワークステーションと10基のコンソールを搭載し、アメリカAN/UYQ-70に匹敵する性能を有しています。
* SENIT 9: ミストラル級強襲揚陸艦に搭載されたシステムです。

まとめ

SENITは、フランス海軍の戦術情報処理能力の中核を担うシステムであり、長年にわたる技術革新と進化を遂げてきました。今後も、フランス海軍の運用環境の変化や技術革新に対応した更なる発展が期待されます。

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