ジョン・ハワード (初代ノーフォーク公)

初代ノーフォーク公ジョン・ハワード：薔薇戦争を駆け抜けた貴族の生涯

ジョン・ハワード(1425年頃-1485年8月22日)は、イングランドの貴族にして、薔薇戦争という激動の時代を生き抜いた重要な人物です。彼は初代ノーフォーク公として歴史に名を残し、ハワード家という名門貴族の祖でもあります。その生涯は、政治的駆け引き、軍事行動、そして時代の波に翻弄されるドラマに満ち溢れていました。

若き日のハワードとノーフォークでの対立

1420年から1430年頃、サー・ロバート・ハワードとその妻マーガレット（初代ノーフォーク公トマス・モウブレーの娘）の間に生まれたジョン・ハワード。正確な生年は諸説ありますが、1420年代前半と推定されています。彼は若き日に百年戦争最後の戦いであるカスティヨンの戦いに参加するなど、既に軍事経験を積んでいました。

1455年にはノーフォーク選出の庶民院議員となりますが、この選出は地元住民からの反発を買います。1461年にはノーフォークの保安官に任命された際にも、住民との衝突が勃発し、激しい対立が表面化しました。この事件は当時のイングランド社会における地方貴族と住民との複雑な力関係を象徴的に示しています。地方豪族として既に勢力を築いていたパーシー家やド・ラ・ポール家などの存在も、ハワード家の進出を阻む要因となっていたと考えられます。

ヨーク朝への忠誠と華々しい出世

薔薇戦争において、ハワードはヨーク派に属し、エドワード4世を支持。タウトンの戦いなど重要な戦役に参加し、その功績によりエドワード4世から厚い信頼を得ました。ナイトに叙せられ、各地の保安官、城塞の守備官などを歴任し、王室会計長官を務めるなど、急速に出世の階段を駆け上がっていきました。

1470年にはハワード男爵に叙爵。カレーの鎮撫や外交使節としての活動、そしてフランス王ルイ11世からの賄賂受領という記録も残っています。1481年のスコットランド遠征ではイングランド艦隊を率いましたが、陸上との連携不足により、大きな成果を挙げるには至りませんでした。

リチャード3世への接近とノーフォーク公への叙爵

エドワード4世の死後、グロスター公リチャード（後のリチャード3世）に接近し、1483年のエドワード5世の退位劇ではリチャード3世を支持。その功績により、同年6月28日にノーフォーク公に叙せられました。臣民への公爵位授与としては初の事例で、リチャード3世からの絶大な信頼を示しています。

ハワード親子は、ヘイスティングス男爵の逮捕、エリザベス・ウッドヴィル（エドワード4世の未亡人）の拘束、ヨーク公のロンドン塔への監禁など、リチャード3世のクーデターに重要な役割を果たしました。その貢献により、ジョンはノーフォーク公、息子トマスはサリー伯爵に叙爵されました。また、軍務伯、海軍卿といった要職にも就いています。

ノーフォーク公としての活動と最期

ケントの反乱鎮圧にも貢献し、1484年にはモウブレー男爵とセグレイヴ男爵を継承、孫の婚約まで取り付けるなど、勢力を拡大しました。しかし、地元ノーフォークのジェントリとの関係は良好とは言えず、リチャード3世との決戦が迫る中、充分な兵力を集めることが出来ませんでした。

1485年8月22日、ボズワースの戦いにおいて、ハワードは最前列で戦いましたが、リチャード3世と共に戦死しました。彼の死後、ノーフォーク公爵位は剥奪され、息子トマスも投獄されました。しかし、トマスは後に釈放され、1514年にノーフォーク公位を回復することになります。

栄典と家族

ジョン・ハワードは、ハワード男爵、ノーフォーク公爵、モウブレー男爵、セグレイヴ男爵の爵位を保持し、ガーター騎士団にも叙せられました。また、1442年にキャサリン・モリンズと結婚し、1467年にはマーガレット・チェドワースと再婚しています。息子トマスは後の第2代ノーフォーク公となり、ハワード家はイングランドの歴史において重要な役割を担うことになります。

結論

ジョン・ハワードの生涯は、野心、権力闘争、そして時代の激流に翻弄されながらも、自らの地位を築き上げた一人の貴族の物語です。薔薇戦争という激動の時代を生き抜き、その功績と悲劇は、イングランド史に深く刻み込まれています。彼の功績と失敗は、現代においても歴史家の研究対象であり続けています。彼の生涯は、権力と名誉を求める貴族社会の現実を鮮やかに描き出し、中世イングランドの歴史を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。

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