ジョージ・スペンサー (第2代スペンサー伯爵)

第2代スペンサー伯爵ジョージ・ジョン・スペンサー：イギリス政治と海軍史に名を刻んだ貴族

ジョージ・ジョン・スペンサー、第2代スペンサー伯爵は、1758年9月1日、イングランドのサリー州ウィンブルドンに生まれました。初代スペンサー伯爵ジョン・スペンサーの唯一の男子として、特権階級の生活を歩み始めます。名門ハーロー校を経てケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで学び、1778年には修士号を取得。その後はグランドツアーでヨーロッパを巡り、教養を深めました。

政治家としてのキャリアは、1780年にノーサンプトンシャー州選挙区からホイッグ党の庶民院議員として始まりました。その後、サリー州選挙区選出の議員も経験します。1782年にはノース卿内閣の打倒に尽力し、続くロッキンガム侯爵の政権では大蔵卿委員に任命されました。1783年には父の死によりスペンサー伯爵を継承し、貴族院議員となります。

フランス革命の勃発は、スペンサーの政治的立場に大きな影響を与えました。エドマンド・バークのフランス革命批判に共鳴し、ウィリアム・ピット（小ピット）率いる政府を支持するようになりました。1794年には小ピット内閣で王璽尚書に任命されますが、間もなく神聖ローマ帝国大使としてウィーンへ赴任。帰国後、海軍卿として再び政界の中枢に復帰しました。

スペンサーが海軍卿を務めた6年間は、イギリス海軍の黄金時代と評されるほど輝かしいものでした。サン・ビセンテ岬の海戦、キャンパーダウンの海戦といった勝利を収め、スピットヘッドとノアの反乱といった海軍内部の危機も鎮圧しました。さらに、ホレーショ・ネルソンを地中海艦隊司令官に任命し、ナイルの海戦での大勝利へと導いたことは、彼の功績として特に有名です。ネルソンとはその後も密に連絡を取り合い、ネルソンの健康を案じるなど、個人的な関係も築いていました。

1801年にピット内閣が倒れると、スペンサーも大臣職を辞任。しかし、1806年にはグレンヴィル内閣において内務大臣として再び政界に復帰します。1807年に政界から引退した後も、スペンサーの活動は多岐に渡りました。ノーサンプトンシャー州の領地経営に力を注ぐ傍ら、王立研究所の理事長、大英博物館の理事などを務め、文学や自然科学にも造詣を深めました。また、Roxburghe Clubの創設にも関わり、初代会長も務めました。

晩年は、曽祖父が収集した膨大な蔵書を基に、ヨーロッパ屈指の図書館であるオルソープ図書館を再興したことで知られます。その規模と質は、トマス・フログナル・ディブディンといった著名な書誌学者によって記録・称賛され、現在もそのコレクションの一部はジョン・ライランズ図書館で閲覧することができます。

数々の功績により、スペンサーは1780年に王立協会フェロー、1794年に枢密顧問官、1799年にはガーター勲章を受勲しました。ガーター勲章に関しては、一度辞退した後に受勲したという逸話も残っています。1834年11月10日、ノーサンプトンシャー州オルソープで死去。その生涯は、イギリスの政治・海軍・文化に大きな足跡を残しました。

家族

1781年、スペンサーは初代ルーカン伯爵チャールズ・ビンガムの長女であるレディ・ラヴィニア・ビンガムと結婚。ラヴィニア夫人は美貌と知性で知られ、ロンドンの社交界で著名な女性でした。二人は6人の息子と3人の娘をもうけました。その中には、後に第3代、第4代スペンサー伯爵を継承する者も含まれます。ラヴィニア夫人は1831年に死去しました。

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