スカイラブ4号

スカイラブ4号：最後の有人ミッション

スカイラブ4号（SL-4またはSLM-3とも呼ばれる）は、アメリカ初の宇宙ステーションであるスカイラブにおける3番目にして最後の有人宇宙飛行です。1973年11月16日、3名の宇宙飛行士を乗せたサターンIB型ロケットがフロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられ、84日1時間16分間のミッションを完了しました。総活動時間は6,051時間に及び、その間、飛行士たちは医療、太陽観測、地球資源探査、コホーテク彗星の観測など、多岐にわたる科学実験を行いました。

ミッションの概要

スカイラブの有人飛行は公式にはスカイラブ2、3、4号と命名されていましたが、上層部の連絡ミスにより、記章にはスカイラブI、II、IIIと記されることになりました。スカイラブ4号の飛行士は、全員が宇宙に行くのはこれが初めてでした。同様の事例はNASAの歴史で過去に5回あり、4号はそのうちの4番目です。他にはジェミニ4号、ジェミニ7号、ジェミニ8号、スペースシャトルSTS-2があります。

搭乗員

本搭乗員は以下の3名です。
ジェラルド・カー (Gerald P. Carr)
エドワード・ギブソン (Edward G. Gibson)
ウィリアム・ポーグ (William R. Pogue)

予備搭乗員は以下の方々です。
ロバート・クリッペン (Robert L. Crippen)
ヘンリー・ハーツフィールド (Henry W. Hartsfield, Jr)
ブルース・マッカンドレス2世 (Bruce McCandless II)
ストーリー・マスグレイヴ (F. Story Musgrave)
ラッセル・シュウェイカート (Russell L. Schweickart)
ウィリアム・ソーントン (William E. Thornton)
リチャード・トゥルーリー (Richard H. Truly)

ミッション詳細

スカイラブ4号は、スカイラブにおける最後の飛行でした。ステーションに到着すると、飛行士たちは船内に先客がいることに気づきました。それは、前回のミッションであるスカイラブ3号の飛行士たちが残していった、宇宙服を着た3体の人形でした。これらの人形は計画の記章や名札まで身に着けていました。

全員が初めての宇宙飛行だったため、飛行士たちはステーションの起動作業に苦労しました。特に、ポーグの宇宙酔いの症状を医師に隠そうとしたことが、管制官との間に溝を生む原因となりました。ステーションの起動作業は、数千もの機材の積み下ろしや収納など、膨大な作業量を伴いました。また、長時間にわたる作業スケジュールは、飛行士たちの疲労を増大させました。その結果、飛行士たちは作業ペースの遅れと過酷な労働条件に不満を感じ始め、地上の管制官との間で対立が生じました。この対立は無線会議中に頂点に達し、飛行士たちが怒りを爆発させる事態となりました。しかし、この出来事を経て、作業スケジュールは修正され、最終的には当初の予定を上回る成果を上げることができました。この経験は、その後の有人宇宙飛行における作業スケジュール設定に重要な教訓をもたらしました。

感謝祭の日には、ギブソンとポーグが6時間半に及ぶ船外活動を実施し、太陽観測装置のフィルム交換や故障したアンテナの修理を行いました。食事に関しては、飛行士たちは味が薄いと感じ、調味料の増量を希望しましたが、塩分の摂取量は医学的な理由から制限されていました。

飛行7日目には、姿勢制御装置のジャイロスコープに異常が発生し、ミッションが早期に終了する危機に見舞われました。スカイラブには3基のジャイロスコープが搭載されており、機体の制御には2基の正常なジャイロスコープが必要でした。故障は潤滑油の不足が原因でしたが、温度管理と負荷軽減により、2番目のジャイロスコープは機能を維持しました。

科学観測

飛行士たちは、地球の調査研究に多くの時間を費やしました。カーとポーグは交代で観測装置を操作し、地球表面の特徴を計測、撮影しました。また、太陽観測では、X線、遠紫外線、可視光線などで約7万5000枚の太陽写真を撮影しました。

ギブソンはミッション終了間際にも太陽表面の観測を続けました。1974年1月21日には、太陽フレアの発生を宇宙から初めて記録することに成功しました。

12月13日、飛行士たちはコホーテク彗星の観測を開始し、彗星が太陽に接近するまで撮影を続け、遠紫外線カメラでスペクトルを収集しました。

また、飛行士たちは、指示に反して（おそらく偶然に）エリア51を撮影してしまいました。この秘密施設の写真公開については議論がありましたが、最終的には他のスカイラブの記録写真と共に公開されました。

ミッションの成果とその後

スカイラブ4号の飛行士たちは地球を1,214周し、4回の船外活動の総時間は22時間13分に達しました。84日1時間16分で、5,550万キロメートルを飛行しました。

3人の飛行士は1960年代半ばにアポロ計画の飛行士としてNASAに採用されましたが、ポーグとカーはアポロ19号の乗員候補だったものの、飛行中止となりました。彼らはアポロ・ソユーズテスト計画やスペースシャトル計画には選ばれず、後にNASAを退官しました。ギブソンは宇宙空間物理学のデータを解析するため、1974年12月にNASAを退官し、エアロスペース社で研究員として活動しました。

その他の情報

スカイラブ4号の司令船は、現在、ワシントンD.C.の国立航空宇宙博物館に展示されています。

ミッションの記章は、大きな数字の「3」と、3つの分野の研究を囲む虹を特徴としています。虹は、技術と自然を調和させるという、人類の重要な役割を象徴しています。また、一部の記章には、コホーテク彗星の研究を表す彗星が描かれています。

諸元

質量: 20,847キログラム
最大高度: 440キロメートル
飛行距離: 55,500,000キロメートル
発射機: サターンIB型ロケット
近地点: 422キロメートル
遠地点: 437キロメートル
軌道傾斜角: 50.04度
地球周回時間: 93.11分

ドッキング

ドッキング開始: 1973年11月16日 – 21:55:00 UTC
ドッキング終了: 1974年2月8日 – 02:33:12 UTC
ドッキング期間: 83日4時間38分12秒

船外活動

ギブソンおよびポーグ – EVA1
開始: 1973年11月22日 17:42 UTC
終了: 11月23日 00:15 UTC
時間: 6時間33分
カーおよびポーグ – EVA2
開始: 1973年12月25日 16:00 UTC
終了: 12月25日 23:01 UTC
時間: 1時間01分
カーおよびギブソン – EVA3
開始: 1973年12月29日 17:00 UTC
終了: 12月29日 20:29 UTC
時間: 3時間29分
カーおよびギブソン – EVA4
開始: 1974年2月3日 15:19 UTC
終了: 2月3日 20:38 UTC
時間: 5時間19分

参考資料

Gilles Clement, Fundamentals of Space Medicine, Microcosm Press, 2003.
Lattimer, Dick (1985). All We Did was Fly to the Moon. Whispering Eagle Press. ISBN 0-9611228-0-3.

外部リンク

Skylab: Command service module systems handbook (PDF)
Skylab Saturn 1B flight manual (PDF)
NASA Skylab Chronology
Marshall Space Flight Center Skylab Summary
Skylab 4 Characteristics SP-4012 NASA HISTORICAL DATA BOOK
Astronauts and Area 51: the Skylab Incident
Skylab, "The Third Manned Period", NASA History
* Voices of Oklahoma interview with William Pogue. First person interview conducted with William Pogue on August 8, 2012.

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