スリーカウント

映画『スリーカウント』

『スリーカウント』は、2009年に公開された日本の映画作品です。女子プロレスの世界を題材とし、実際の女子プロレスラーたちが多数出演している点が大きな特徴となっています。物語は、経営の危機に瀕した弱小女子プロレス団体を舞台に、主人公の新人レスラーが団体の再建を目指して奮闘する姿を描いています。

企画と制作の背景

本作の企画は、2008年4月よりテレビ埼玉で深夜に放送されていたバラエティ番組『筋肉美女-Muscle Venus-』（通称：マッスルビーナス）との連動プロジェクトとして動き出しました。制作にあたっては、当時の女子プロレス団体であるNEO女子プロレスとアイスリボンが全面的な協力体制を敷いています。

特にユニークだったのは、出演者を決めるためのオーディションの方式です。このオーディションは「プロレスラーが演じる演技ではなく、プロレスラーではない役者が演じる迫真のプロレスシーンを求めて」というコンセプトのもと実施されました。さらに、合格の条件として「映画のクランクインまでにプロレスラーとして正式にデビューすること」が課せられました。驚くべきことに、オーディションの合否は最終的に参加者自身が判断するという形式が取られ、「自分が諦めない限り、不合格はない」という異例のルールが設けられました。このオーディションの模様は、テレビ番組『マッスルビーナス』内で詳しく紹介されました。

当初100名以上いた応募者は、その過酷な条件の中で次々と脱落していきました。そして、最終的なリミットであった2008年8月23日にアイスリボン新木場1stRINGで開催された大会でプロデビューを果たすことができたのは、わずか8名でした。この8名は、志田光、藤本つかさ、森久ともよ、松本都、真悠いちこ（朝美朱伽）、ひろせ友紀、植田ゆう希、古賀祥子です。

映画公開後の2009年1月の大会にて、このデビュー組のうち志田、松本、藤本の3名を除くメンバーが今後のプロレス活動からの「卒業」を発表しました。それから時を経た2024年現在、この3名、すなわち志田光、藤本つかさ、松本都は、それぞれ異なる形で女子プロレス界の第一線で活躍を続けています。藤本つかさはアイスリボンの中心選手として、松本都はフリーランスとして、そして志田光はアメリカの主要団体であるAEWと所属契約を結び、活躍の場を海外へと移しています。

あらすじ

物語の舞台となる「埼玉ガールズプロレスリング」は、深刻な経営難に陥り、団体存続の危機に直面していました。新人レスラーである千葉まひる（志田光）は、自身が父親を探す上で重要な手がかりとなるこの埼玉ガールズを何とか再興させようと強く決意します。彼女の純粋でひたむきな熱意は、一度はプロレスを離れようとしていた先輩レスラーたちの心を動かします。やがて、彼女の呼びかけに応じた先輩たちが集まり、充分な設備のない中でも、公園を練習場代わりにして共に汗を流し、団体の復活を目指して歩み始めます。

キャスト

本作には、プロレスラー役として前述のオーディション合格者を中心に、多くの現役・元プロレスラーが出演しています。主人公の千葉まひるを演じたのは、オーディションを経てデビューした志田光です。その他、猪狩早苗役に井上京子、寺門ラッシー役に田村欣子、ファンシー三村役にさくらえみといったベテランレスラーたちも登場し、物語に深みを与えています。また、多田麻巳子を松本都、牧村多加子を藤本つかさがそれぞれ演じています。

プロレスラーではない俳優陣も出演しており、佐伯三郎を菅田俊、木佐貫一成を荒井志郎、藤本幸之助を榊英雄、衣笠考一を木下ほうかが演じるなど、物語に絡む重要な役柄を担っています。

スタッフ

監督、脚本、編集を務めたのは窪田将治です。主題歌には、企画の元となった番組名を冠したユニット「マッスルヴィーナス」による「いつかきっと」が使用されました。製作はネオプラスとテレビ埼玉、企画・制作・配給はFAITHentertainmentが担当しています。

公開と評価

映画は2009年に公開され、同年6月のシネマート六本木を皮切りに、大阪（シネ・ヌーボー）、名古屋（シネマスコーレ）など全国で順次上映されました。また、第26回古湯映画祭ではオープニング映画として上映されています。落語家の快楽亭ブラック氏が選ぶ2009年日本映画ベスト10では9位にランクインするなど、一部で評価を得ました。

本作は、プロレスを愛する人々はもちろんのこと、夢に向かって困難に立ち向かう若者たちの姿を描いた青春ドラマとしても楽しめる作品と言えるでしょう。実際のプロレスラーが演じるリアリティと、オーディションから生まれた新たな才能たちの熱演が見どころです。

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