セオボールド・パーム

セオボールド・エイドリアン・パームの生涯

セオボールド・エイドリアン・パーム（Theobald Adrian Palm、1848年1月22日 - 1929年1月11日）は、19世紀後半の日本において、医療宣教師として重要な役割を果たした人物です。エディンバラ医療宣教会の宣教師として来日し、医療活動を通じてキリスト教の普及に貢献しました。また、当時の日本で深刻な問題であった脚気やくる病に関する研究を行い、日本の医学発展にも寄与しました。

生い立ちと教育

パームは1848年、イギリス領セイロン（現在のスリランカ）のコロンボで、オランダ系のスコットランド人宣教師であるジョン・パームとルイザ・パームの間に生まれました。父の影響を受け、自身も宣教師を志すようになります。1870年からは、父がオランダのロッテルダムにあるスコットランド人教会の牧師となりますが、パームはエディンバラ医療宣教会の寮に寄宿し、宣教師としての訓練を受けました。1873年にはエディンバラ大学医学部を卒業し、医学士と外科医学修士の資格を取得しました。

日本への渡航と初期の活動

1873年7月、パームはスコットランド一致長老派教会の宣教師ロバート・デイヴィッドスン、医療宣教師ヘンリー・フォールズと共に日本へ派遣されることになり、壮行会に出席しました。翌1874年2月にはメアリと結婚し、同年3月に日本へ向けて出発、5月15日に横浜に到着しました。到着後、パームは宣教師のヘボンを訪ね、相談の結果、築地に滞在して日本語を学ぶことになりました。日本語教師として陶山昶を雇い、水谷宗五郎、哲子というコックを雇い生活を始めました。

1874年10月、クリストファー・カロザースが築地大学校を設立すると、パームは同校の教師に就任し、医学の知識を教えました。しかし、1875年1月、長女が誕生したわずか3日後に妻メアリが亡くなり、さらにその6日後には長女も亡くなるという悲劇に見舞われました。

新潟での医療伝道

深い悲しみを乗り越え、パームは1875年4月から新潟で医療伝道を開始しました。陶山と水谷夫妻、聖公会のイギリス人ジョン・パイパーと共に新潟へ向かい、4月21日に到着。湊町三丁目に家を借り、一部を説教所として利用し、昼は医療活動、夜は伝道活動に励みました。アメリカオランダ改革派宣教師マーティン・ワイコフの教え子である雨森信成を紹介され、雨森が説教の通訳を担当しましたが、雨森は体調を崩し、3ヶ月でブラウン塾に戻ることになりました。その後、日本基督公会の青年長老である押川方義が代役として志願し、1875年12月に新潟に到着しました。この年の末までに、新潟で日曜礼拝が行われるようになり、1876年までに5人がパームから洗礼を受けました。

1876年には住居を町の中心部に移し、二軒隣の家を病院兼神学生養成所としました。1877年からは、佐渡、亀田、水原、葛塚、中条、新発田、沼垂、長岡など、新潟県各地に伝道と医療の働きを拡大しました。定期的に巡回する伝道出張所の数は10箇所に及びました。1879年には中条に家を購入して説教所としました。4月には新しい夫人のイザベル・メアリ・コラスと共に中条を巡回しました。

1880年までに88名がパームから洗礼を受けました。1881年には会員73人で新潟教会（現在の日本基督教団新潟教会）を組織しました。

1880年8月6日に新潟大火が発生し、診療所が焼失しましたが、エディンバラ医療宣教会からの援助により、南浜通二番町に移転し、病院を建設、「パーム病院」と改称しました。この大火をきっかけに、押川方義と吉田亀太郎が宮城県伝道のために仙台へ移動しました。

1883年4月、大阪で開催された第二回在日プロテスタント宣教師協議会で、パームは「医療伝道の位置」というテーマで講演しました。同年10月30日、パームは休暇のためイギリスに帰国しました。

晩年

帰国後、パームはスコットランド各地で医療活動に従事し、1929年1月11日、ケント州エイレスフォードで生涯を閉じました。彼の日本における医療伝道活動は、日本の医療とキリスト教の発展に大きな影響を与えました。

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