セント・ジャイルズ＝ウィズアウト＝クリップルゲート

セント・ジャイルズ＝ウィズアウト＝クリップルゲート教会

セント・ジャイルズ＝ウィズアウト＝クリップルゲート教会は、イギリスの首都ロンドンの金融街、シティ・オブ・ロンドンに位置する由緒あるイギリス国教会の教会です。現在のバービカン・エステート地区、フォア・ストリートに面しており、一般的にはセント・ジャイルズ・チャーチ、あるいはセント・ジャイルズ・クリップルゲートの名で親しまれています。「ウィズアウト」という名は、かつてシティを囲んでいたロンドン・ウォールの外側、クリップルゲートの近くに建てられたことに由来します。教会は、乞食や障がい者の守護聖人であるセント・ジャイルズに献堂されています。

この教会は、1666年のロンドン大火で奇跡的に焼失を免れた数少ない中世の教会建築として、シティ・オブ・ロンドンに現存する貴重な遺産の一つです。しかし、歴史を通して幾度も大きな困難に直面し、その度に復興を遂げてきました。

教会の歴史

現在の教会がある場所には、11世紀以前からサクソン時代に建てられた教会が存在していました。1090年頃、ノルマン人によって新たな教会がこの地に建てられました。現在の壮麗なゴシック様式の建物は、1394年に再建されたものです。石造りの堅固な塔は、その後の1682年に加えられました。

教会は、以下のような度重なる大火や戦火により甚大な被害を受けています。

1545年
1897年
1940年8月24日（第二次世界大戦中のロンドン大空襲）

特に1940年の空襲では、ドイツ軍の爆撃により教会は完全に破壊されてしまいました。しかし、教会は諦められることなく、1545年の再建時に用いられた平面図を基に、1966年までに見事に修復されました。このように、この教会は破壊と再生の歴史を歩んできたのです。

教会の鐘楼には12個の鐘があり、これらの「リング・オブ・ベルズ」は1954年にミアーズ・アンド・ステインバンク社によって鋳造されました。その後、2006年にはホワイトチャペル・ベル・ファウンドリー社により補強が行われています。教会の歴史的・建築的価値は高く評価されており、1950年1月4日にはイギリスの指定建造物1級に登録されています。

教会にゆかりのある著名な人物

セント・ジャイルズ＝ウィズアウト＝クリップルゲート教会は、長い歴史の中で数多くの著名な人物と関わりを持ってきました。彼らの多くがこの地に埋葬されたり、洗礼を受けたり、結婚式を挙げたりしています。

ジョン・フィールド: 1570年頃に副牧師を務めました。
ジョン・フォクシー: 『殉教者列伝』で知られる作家で、1587年にこの地に埋葬されました。
ロバート・クロウリー: プロテスタントの教区牧師で、1588年に埋葬されました。
トーマス・デロニー: イギリスの作家で、1586年に彼の息子がここで洗礼を受けています。
ロジャー・タウンゼント: 1590年に埋葬されています。
ランセロット・アンドリュース: ロバート・クロウリーの後任として教区牧師を務めました。
マーティン・フロビッシャー: スペインのアルマダ艦隊撃退に貢献した海軍軍人で、1594年に埋葬されました。
ナザニエル・イートン: ハーバード大学の初代校長で、1610年に洗礼を受けました。
オリバー・クロムウェル: イングランド共和国時代の護国卿で、1620年にこの教会で結婚式を挙げています。
ニコラス・トーレイ: イギリス・ルネサンス演劇期の俳優で、1623年6月23日に埋葬されました。
ジョン・スピード: 地図製作者であり、『グレート・ブリテン帝国劇場』の著者として知られ、1629年に埋葬されました。
ジョン・ミルトン: 叙事詩『失楽園』の作者で、1674年にここに埋葬されています。
ジョン・バニヤン: 『天路歴程』の作者として知られ、この教会と関連があります。
ダニエル・デフォー: 『ロビンソン・クルーソー』の作者で、1731年にこの教区内で生涯を終えました。
リック・ウェイクマン: プログレッシブ・ロックのキーボード奏者で、彼のアルバム『ヘンリー八世の六人の妻』や『危機』の一部のレコーディングがこの教会で行われました。
* ジャック・ニッチェ: アメリカの作曲家で、1972年にロンドン交響楽団とのアルバムを「セント・ジャイルズ・クリップルゲート」として制作しています。

これらの人物の存在は、教会が文学、政治、軍事、芸術といった様々な分野で歴史的に重要な役割を果たしてきたことを物語っています。

教会内の特徴

教会内部には、その豊かな歴史と多くのゆかりある人物を偲ばせる見どころが数多くあります。ジョン・ミルトンの墓は特に有名で、教会を訪れる多くの人が足を止めます。東の窓は、ニコルソン・スタジオによって中世の原型に基づき設計・再建された壮大なステンドグラスです。

聖歌隊席のエリアには、ミサ中に聖職者が座るための石造りの椅子であるセディリアや、儀式で使用した聖器を洗うためのピシーナといった、中世教会建築様式の特徴的な設備が残されています。また、かつて存在したセント・ルーク教会から移設されてきた祭壇やオルガン、洗礼盤なども教会内に配置されており、異なる歴史を持つ要素が共存しています。

教会には、クリップルゲート地区の歴史的な秘蔵品を収めた展示棚が設けられており、地域の歴史に触れることができます。ゆかりのある著名人を記念した様々な記念碑や胸像も多く見られます。ジョン・フォクシーやマーティン・フロビッシャーの銘板、ジョン・スピード、ダニエル・デフォー、オリバー・クロムウェル、ジョン・バニヤンの胸像、そしてジョン・ミルトンの像などがその一部です。西側の窓には、カンタベリー大主教、ロンドン主教、ジョン・ミルトン、オリバー・クロムウェル、マーティン・フロビッシャーといった歴史上の重要人物の紋章が飾られ、見る者を惹きつけます。さらに、クリップルゲート財団の設立100周年を記念して制作された美しいステンドグラス、「クリップルゲート・ウィンドウ」も見逃せません。ロンドン市長を務めたウィリアム・ステインズの胸像も安置されています。これらの多様な要素が組み合わさることで、セント・ジャイルズ＝ウィズアウト＝クリップルゲート教会は、単なる礼拝の場を超え、ロンドンの歴史と文化が凝縮された博物館のような空間となっています。

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