ソビエト連邦作曲家同盟

ソビエト連邦作曲家同盟：音楽統制の歴史

ソビエト連邦作曲家同盟（Союз композиторов СССР）は、ソビエト連邦時代に存在した作曲家たちの専門組織です。この組織は、現在のロシア連邦作曲家同盟へと引き継がれています。ソ連時代の音楽界を語る上で、この同盟の存在は非常に重要です。

思想的背景：社会主義リアリズム

スターリン時代のソ連は、官僚制が社会全体を覆い、音楽を含む芸術分野も社会主義リアリズムというイデオロギーによって厳しく統制されていました。1934年に示された社会主義リアリズムの理念は、「革命の進展を現実的に描写する」ことを芸術に求めました。音楽においては、愛国的な作品、時事的な内容や民俗的な要素を取り入れたものが推奨され、社会主義のイデオロギーに合致し、かつ大衆に受け入れやすい音楽が求められました。その一方で、実験的な音楽や社会主義リアリズムから逸脱した音楽は「形式主義」として批判され、「西側の退廃的な音楽」として排除されたのです。

歴史：設立から解体まで

1932年、共産党の決議「文学と芸術の再建」により、作曲家団体を組織する動きが始まりました。それまで存在した現代音楽協会（ACM）とロシア・プロレタリア音楽家同盟（RAPM）が統合され、ソ連作曲家同盟が誕生したのです。ACMは西洋的なモダニズムを追求し、RAPMは大衆歌を重視していたため、両者の統合はソ連の音楽界に大きな変化をもたらしました。

1939年以降、政府によって同盟の組織化が進められ、同盟は強力な組織力を持つようになりました。オーケストラ、劇場、音楽出版社、文化省、権利団体、音楽学校、レコード店など、音楽業界全体に大きな影響力を持つようになり、共産党幹部と作曲家たちの交渉役も担うようになりました。しかし、党官僚との関係は複雑で、時として芸術表現の抑制につながったのも事実です。

1936年には、ドミートリイ・ショスタコーヴィチのオペラ『ムツェンスク郡のマクベス夫人』が、共産党機関紙『プラウダ』で「音楽の代わりに荒唐無稽」と酷評されました。この批判はスターリン自身が書いたとも言われています。同盟はこの批判を支持し、ショスタコーヴィチは大きな打撃を受けました。

1948年、アンドレイ・ジダーノフによるヴァノ・ムラデリのオペラ『偉大な友情』への批判をきっかけに、多くの作曲家が「形式主義」のレッテルを貼られ、攻撃の対象となりました。ショスタコーヴィチ、セルゲイ・プロコフィエフ、ニコライ・ミャスコフスキー、ヴィッサリオン・シェバリーンといった著名な作曲家たちが批判の対象となり、このジダーノフ批判の最中に開催された第1回総会では、ティホン・フレンニコフが書記長に選出され、1991年のソ連崩壊までその地位を維持しました。この総会で、同盟は党の一部門と化し、音楽界への統制をより強めることになります。

その後も、第2回総会（1957年）、第3回総会（1962年）と総会が開かれ、音楽祭やコンサートが開催されました。これらの総会では、同盟の音楽活動の報告とともに、批判も行われました。1979年の第6回総会では、エレーナ・フィルソヴァら7人の作曲家が「革新的な音楽というより、的外れ、騒音、汚泥」と激しく批判され、まるで第1回総会に戻ったかのような状況となりました。

ソ連崩壊後、ソ連作曲家同盟はロシア作曲家同盟に改組され、ウラディスラフ・カゼーニンが新しい指導者となりました。一方、1990年にはモスクワで現代音楽協会（ACM）が再設立され、エディソン・デニソフが議長に選ばれました。これにより、ソ連時代の音楽統制から解放された新しい音楽の動きが始まりました。

組織：複雑な官僚制

ソ連作曲家同盟は、地域ごとに支部が設けられており、ロシア、アルメニア、アゼルバイジャンなどの連邦構成共和国や、バシキール、ブリヤートなどの自治共和国にも支部が存在しました。また、モスクワやレニングラードなどの大都市にも支部がありました。

組織は複雑な官僚制によって構成され、そのトップには長年フレンニコフが君臨していました。1987年時点では、2506人の作曲家が所属しており、そのうちロシアが1134人、モスクワが586人、レニングラードが158人でした。

同盟の主な活動としては、音楽情報センターの運営、ソ連音楽の宣伝、「作曲家の家」の運営、機関紙『ソビエトの作曲家』や雑誌『ソビエトの音楽』の発行、資料館の運営などがありました。これらの活動を通じて、ソ連の音楽界を統制し、社会主義イデオロギーに合致した音楽を推進していました。

関連文献

Tomoff, Kiril: Creative Union. The Professional Organization of Soviet Composers, 1939–1953 Cloth, 2006 ISBN 0-8014-4411-X

外部リンク

СОЮЗ КОМПОЗИТОРОВ РОССИИ

ソビエト連邦作曲家同盟は、ソ連時代の音楽界における権威組織であり、社会主義リアリズムに基づく音楽統制の象徴でした。その歴史は、ソ連の政治体制と芸術の関係を理解する上で、非常に重要な手がかりとなります。

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